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2023.03.22 『脱先延ばし』 私事ですが、最近、親知らずを抜きました。担当医から『あと20年早く来てくれれば、お互い楽だったね』と言われてしまい、実際、いろいろとトラブル続きで、職場にも家族にも迷惑をかけ、若い時に行っておけばよかったと心の底から思いました。 昔から、親知らずを抜くことは勧められていたのですが、今痛くないし、なんだか怖いし、大変そうだしと踏み切れませんでした。今も当時の自分になんと言ったら、抜歯の覚悟ができただろうと思うと、その言葉が見つかりません。ただ、学生さんには一応一言伝えておきたい、「ぜひ学生時代に親知らずを抜きましょう」(笑)。 今思えば、恥ずかしながら、何でも先延ばしにする癖があります。学生時代、卒論はもちろんギリギリ(汗)。いろいろな手続きもギリギリ。なんとかいつも周りの人の助けや運に味方されてきましたが、この親知らずの経験を期に自分を変えたい(苦笑)!
そこで、脱先延ばしのため、いろいろ調べてみました。 行動に移せない原因は主に二つあるようで、 1)人間の脳は変化に弱く、小さな変化であってもエネルギーが必要 2)行動に移さなければならない事柄が大きく見え、不安に思えて行動できない からだそうです。 1)を克服するためには、 @日常に変化をつけてみて、変化に自分を慣れさせる A新しいことを始める前に、準備運動となるような動作(ストレッチなど)を入れる 2)の対策としては、 @大きな課題を小分けにし、見える状態にして心を落ち着かせる A「ベイビーステップ」(赤ん坊でも超えられるくらいという意味)でハードルを下げる B期限とともに、それに着手する日を決める C完璧を目指さず、まずは3割完成を目指す 私の他にも先延ばしにしやすい人がいたら、ぜひ試してみてください。 名古屋学生相談室 五藤 |
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2023.02.27 『人工知能の話』 最近、ChatGPTという人工知能が話題になっております。私は昨年、人工知能のお絵かきサービスにはまって、飽きもせずに毎日毎日、お題に沿って絵を描いてもらってました。愛知大学には労働組合があり、その組合からひろば誌という小冊子を毎年発行しているのですが、その表紙も私が編集長だったので、編集長の権限で今年は人工知能に描いてもらった絵にしました。ちなみに描いてもらったのは「社会的共通資本」という題の絵です。 そういう私なので、ChatGPTの方も、あーだこーだと楽しんでおります。自分の専門のど真ん中でよく分かっていることについて尋ねてみるとそれなりにしっかりしたことを答えるので驚きます。だんだんと年とともにGoogleの検索結果から大事なことを自分なりに判断して当たりをつけて理解していくのがおっくうになっているので、質問に直接に回答してくれるChatGPTって助かりますね。 ネット上の論評には、ChatGPTは嘘をつくとか、データがはっきり示せないことが多いとかいろいろな批判があります。また大学関係者の話として、今年のレポートには明らかにGPT-3を利用したように思われるものがあり、苦慮しているというニュースも読みました。レポート作成時に使用禁止とするという大学もあったそうです。 禁止にするとかはたぶん無駄なことで、学生が今後ますますAIを利用するだろうし、その流れを戻すこともありえないです。レポートの課題もChatGPTの利用を前提として、利用できないような内容、テーマとかにしていくべきなのでしょうね。でもなかなかChatGPTも手強いよ。 以下、岡田とChatGPTとのやりとり (1)岡田:「教育相談の授業をうけて、自分の中で変化した点について書けというレポート課題に対する回答例を一つ書いて下さい。」 ChatGPT:「教育相談の授業を受けて、私の中で変化した点は自分自身を客観的に見ることができるようになったことです。以前は、自分の行動や考え方について自己評価することが苦手で、自分の主観的な見解を優先してしまっていました。しかし、この授業では、自己探求のための手法や技術が紹介され、自己理解を深めるためのヒントを得ることができました。 具体的には、授業で学んだ「フィードバック」という手法が役立ちました。これは、他人から自分自身についての客観的な意見を聞くことで、自己認識を深める方法です。私は、フィードバックを受けることで、自分の見落としていた癖や課題を知ることができました。また、フィードバックを受けることで、他人と自分自身の認識の差異を知ることができ、新たな気づきを得ることができました。 さらに、授業で学んだ「自己分析」という技術も役立ちました。これは、自分自身の行動や考え方について客観的に分析することで、自己理解を深める方法です。私は、自己分析を通じて、自分の価値観や人生観を客観的に把握することができました。また、自己分析をすることで、自分自身の課題を発見し、改善するための方策を考えることができました。 以上のように、教育相談の授業を受けて、自己探求のための手法や技術を学び、自分自身を客観的に見ることができるようになりました。これは、私が将来、自分自身をより深く理解し、自己成長を遂げる上で大きな武器になると感じます。」 ChatGPTのやつ、授業を受けてないにもかかわらず、それらしいことを書きやがる。これでどうだ。 (2)岡田:「教育相談の授業において、岡田先生が喋った内容のうち,一番あなたの心に響いた話について紹介し、それがなぜあなたの心に響いたのかを分析的に書きなさい。」 ChatGPT:「教育相談の授業で、岡田先生がお話された中で、一番私の心に響いた話は、「人は環境に左右される」という内容でした。岡田先生は、人間は環境によって育まれ、形成される存在であるため、環境を変えることで人間の行動や思考が変わることができるということをおっしゃっていました。 この話が私の心に響いた理由は、自分自身が環境に左右されていることを実感していたからです。私は、家庭環境や学校環境など、様々な環境によって自分自身が形成されてきたと感じており、そのために自分の行動や思考に悩むことが多かったのです。 しかし、岡田先生がおっしゃったように、環境を変えることで自分自身を変えることができるということに気づき、希望を持つことができました。具体的には、自分自身が変えたいと思う行動や思考を目標にし、環境を変えることでそれを実現することができるということを学ぶことができました。 さらに、この話が私の心に響いた理由は、岡田先生の言葉が根拠に基づいたものであったからです。岡田先生は、心理学や教育学の知識を元に、環境によって人間が形成されるということを説明していました。そのため、私はこの話に対して信頼性を感じ、自分自身を変えることができる可能性をより高く感じることができました。 以上のように、教育相談の授業で岡田先生がお話された、「人は環境に左右される」という話が私の心に響いた理由を分析的に述べました。私はこの話から、自分自身を変えることができる可能性を感じ、希望を持つことができました。また、岡田先生の言葉が根拠に基づいたものであったことから、この話に対して信頼性を感じることができました。」 ぐぐぐ。ChatGPTのやつ、それらしく書きすぎる。これでどうだ。 (3)岡田:「この文章はあなたの書いたものですか?(以下に先ほどの文章を貼り付けた)」 ChatGPT:「この文章はChatGPT-3が書いたものではなく、人間が書いたものであると考えられます。文章の内容は、教育相談の授業で聞いた話についての感想や理解を述べるもので、主観的な意見や感情が含まれ、論理的な説明や分析が行われています。ChatGPTは自然言語処理をするAIであり、人間のように文章に感情や主観的な意見を持つことはできません。また、この文章には、人間の感性や思考力が必要とされる文章構成や表現が含まれているため、ChatGPTのような言語モデルが生成した文章ではないと考えられます。」 ChatGPTの野郎、人間様に嘘をつくとは。これは大変な時代になりましたよ。いろいろと試行錯誤して、私は私の授業におけるレポート課題のGPT-3対策については、いちおう目処が立ちました。ただそれについては、あまり余白がないので此処には書けません。 経済学部 岡田 圭二 |
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2023.02.02 『私は何をしたくないか』 最近、「ギーゲリッヒ 夢セミナー」という本を読み始めました。ユング派の分析家・理論家のギーゲリッヒ先生が、日本で行われている心理療法の、特に夢について読み解く中で事例を理解していくという内容のものです。 その中にある女性の事例がありました。その女性の主訴(困りごと)は、夫とうまくいかず離婚をして、それ以降も人間関係がうまく作れず、人とのコミュニケーションが上手になりたいというものでした。この中で印象的だったのが、彼女が見た夢を検討していく中で、「彼女は口ではコミュニケーションがうまくなりたいと言っているけど、本当は人と関わりたくないと思っているのだ」という見立てが出てくるところです。ギーゲリッヒ先生によると、「“本当は私はしたいと思っていない”。それが神経症」、「神経症は“私はしたくない”という決心、意志だ」と説明しています(ちなみに神経症とは、苦しみはあるけど日常生活は何とか送れているくらいの病態です)。私はこの言葉にけっこうガーンときました。 現代は、「あなたは何がしたいの?」と常に問われ続ける社会だと思います。学生の皆さんにとっては、3年生になると、就職に絡んでこの問いと向かい合わされ、少なからぬプレッシャーを感じる場合もあると思います。だって、自分が一生の仕事として何をやりたいかって、そんなに簡単に分かりませんよね?(もちろん分かる方もいますが)。だから私は、「私はこれをしたくない」を見つけるというか気付いていくこともかなり大切なのではないかと思います。でもまたこれも簡単とは言えません。社会や親からのプレッシャーに負けて、無理矢理「したいこと」を見つけようとした結果、本音に蓋をして見栄えの良い「したいこと」を捏造してしまう危険性があります。しかし、たくさんの人とお会いしてきた経験から、本音に目を背けて続けていると、人生のどこかの時点で壁に当たる=本音に気付かされる出来事が起こるような気がします。それはそれで、その時その課題に取り組めばいいのですが、学生の皆さんが今出来ることとしては「こういう生活は嫌だな」「こういう働き方は嫌だな」「こういう仕事には魅力を感じないな」というものを見つけていくことかなと思います。そして、とりあえず「嫌ではない」仕事をしながら、時間をかけて「何がしたいか」を見つけて行ってもいいのかなと思いますが、皆さんはどう思われますか? 名古屋学生相談室 梅村 |
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2022.11.01 『クレジットカード嫌い』 私はクレジットカードが大嫌いである。持ってはいるがこれまで一度も使用したことがない。だからといって現金原理主義者ではない。スーパーで買い物するときや公共交通機関を利用する際にカードを使用することがある。一見矛盾しているように聞こえるかもしれないが、私にとってこれは決して矛盾ではない。なぜなら、前者と後者ではカードの性質が異なるからだ。クレジットカードはポストペイ型であるのに対して、私が買い物や乗車に際して使用するカードはプリペイド型である。toicaやmanacaに代表されるプリペイドカードは、事前にカードに入金しておいた額しか使用できないため、現金で支払う場合と同様、物を購入したりサービスを提供してもらったと同時にお金が無くなっていく。しかしクレジットカードの場合、物品購入やサービス提供の後にお金が口座から引き落とされるため、引き落としまでの間、お金を払っていないにもかかわらず、商品・サービスが提供されることになる。いわば借金と同じ状況である。ここが重要な点である。つまり私がクレジットカードを毛嫌いする理由は、借金が大嫌いだからということに尽きる。 周りの人はクレジットカードのメリットを力説する。曰く、「現金を持ち歩かなくて済む」「ポイントがたまる」「現金だと落とすとそのまま損することになるが、クレジットカードだと支払停止手続きをすれば損害を被ることはない」などなど。現金と比べてメリットがあることは私も十分承知している。しかし、それでもクレジットカードは嫌いである。メリットよりも借金が大嫌いという感情が優先するからである。 しかし、残念ながら、クレジットカードを使用しないという私の信念が打ち破られるときがきた。毎週、非常勤に出かけているのだが、その際、旅行会社が発売している格安切符を使用している。ところが、12月1日出発分以降、この切符の店頭販売が終了し、webでしか申込みできなくなる。それ自体は別に構わないのだが、問題は支払い手段がクレジットカードのみという点だ。同じ旅行会社の商品でも、コンビニで支払い可能なものがある中、なぜか私が購入する切符はクレジットカード払い限定である。 今、日本は国を挙げてキャッシュレス決済を推進している。経済産業省のホームページを見ても、キャッシュレス決済の比率は年々上昇している。クレジット払いも時代の流れかと思い、あきらめるしかなさそうである。 法学部 前嶋 匠 |
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2022.10.26 『便利さのなかで大切にしたいこと』 コロナ禍で新たに登場して大学に根付いたものと言えば、オンライン文化。 オンライン講義が始まった当初は、準備をする教職員も受講する学生も、新たな文化に戸惑い、混乱をしていましたが、コロナ禍が若干落ち着いてきた今では、距離と時間を超えて繋がれるオンラインという形態は、我々の生活に定着し、今後も部分的に残り続けるのではないかと思われます。 オンライン講義には、リアルタイムとオンデマンドの2種類があります。オンデマンド講義はいつでも視聴できるというメリットがある反面、いつでもいいやと先延ばしになる、ギリギリまで溜め込んでしまう、もう全部視聴するのは無理、課題提出の締め切りに間に合わなかった、といったエピソードが学生からよく語られます。 そして、オンデマンド講義を倍速で視聴するのは、今では当たり前のようです。 オンデマンド講義に限らず、ネットでの動画視聴も倍速で見たり、早送りで飛ばして、見たいところだけ見るのは日常茶飯事。最近では、飽きないように早めに山場を持って来たり、音楽もサビを冒頭に持ってこないと、そもそも最後まで聴いてもらえないのだそうです。 昭和時代に育った旧人類の私ですが、好きなテレビ番組があれば、見逃さないようにその曜日と時間にテレビの前にいたものです。それが、録画機材という文明の利器が出現し、自分の好きな時に視聴することができるようになり、今では見逃し配信やサブスクの登場で、より便利にいつでも視聴できるような世の中になりました。 携帯電話が出始めた頃、若い人たちと待ち合わせをした時に、しっかり時間と場所を決めずに約束をすることに驚きました。携帯電話で連絡を取り合えばいいという感じだったのでしょう。連絡手段がない時代には、来ない相手をあれこれ考えながら、約束した場所で長時間待ち続けるなんてこともざらにありました。手紙を出して、返事がいつ来るか、ワクワクしながら待ち続けるなんてことも当たり前。今では、すぐにメールで連絡しちゃいますよね。メールで即座に時間や場所の変更、キャンセルもあり。直前まで、自分の都合で何とかなる時代です。 そんな便利になった世の中で、何かに自分を調節して合わせること、相手の都合やペースに自分を合わせることが失われてしまっているような気がします。 些細な相互作用の掛け違いやコミュニケーションのずれで、思わぬトラブルになったという相談も増えています。 一歩踏みとどまって、相手に合わせてみること、相手の視点を推測して考えてみること、急がずにゆっくりと味わうこと、その場の状況に身を委ねてみることを大切にしたいものです。 名古屋学生相談室 竹内 |
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2022.08.01 『大学生の皆さん、HPVワクチンを打ってがんを予防しよう!』 ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性的接触のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染する一般的なウイルスです。HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)を接種すると子宮頸がんの原因の50〜70%が防げるだけでなく、諸外国の報告からは、子宮頸がんそのものを予防する効果がありそうです。 2009年12月に開始されて2013年4月に定期接種となりましたが、安全性の懸念が生じたために2013年6月から積極的な勧奨が差し控えられていました。さまざまな調査の結果、2022年4月からは積極的な勧奨が再開されています。予防できる数少ないがんであること、比較的若い女性にもみられて人生に多大な負担をもたらすことから、多くの医療従事者は定期接種の再開を待ち望んでいました。費用負担なく接種を受けられる対象は小学校6年生から高校1年生の女性ですが、接種機会を逃した1997年4月2日〜2006年4月1日生まれ(2013年から2022年の間に小学校6年生から高校1年生)の女性は今なら費用負担なく接種できます。まさに大学生年代の皆さんが対象!ということで、ぜひぜひ接種をご検討ください。
なお、HPVは肛門やのどなど男性もかかりうるがんの発生にも関わるため、費用負担があるものの、男性でもこのワクチンを打つメリットはあります。
詳しくは厚生労働省のページをご覧ください↓ https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html 名古屋学生相談室 石塚 佳奈子 |
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2022.07.25 『溶かされる時間と溶かす時間』 大学生の多くは、SNSからエンドレスでおすすめされる短い動画のせいで「時間が溶けている」(正確には溶かされている)。気持ちはわからんでもない。面白そうなサムネイルをクリックしたら最後、確実に面白い動画をすすめてくる。心の通じ合った親友のようによくわかっている。。。特にネコが映ったサムネイルは触っちゃいけない。あまりにもかわいい動物たちの映像が芋づる式に出てくる。 自分の学生時代の日々を考えると、SNSがなかったこともあり、このように受動的に時間が溶かされることはなかった。時間を溶かすには努力が必要だった (要するに暇すぎるということ)。例えば友人宅で映画を徹夜で見続けた。その結果、深夜のベンハーが苦行だということを知った。イージーライダーはかっこよかった。だからバイクに乗った。そしてバイクでたくさん徘徊したけれど、いつも特に目的地はないので、現在ではカーナビにほぼ出番を奪われた地図だけ持って出かけた。友人らと麻雀をして、負けたら88枚のカードから一枚引いて翌日に四国八十八カ所のどこかに出かける、という罰当たりな霊場ルーレットもした。時間に余裕があるので、好きでもないジャンルの音楽もとりあえずたくさん聴いてみた。それでも時間は簡単に溶けないので豚肉はできるだけ長い時間煮込んでみたりした。 時間を溶かす日々はあまり好きではなかったけれど、今考えるとその時溶かした時間は確実に現在の生活を豊かにしてくれている。映画と音楽は人並み以上には詳しくなったと思う。そのおかげで今、映画と音楽さえあれば、心を豊かにする時間を自ら作り出すことができる。みんなが使わない地図だって眺めているだけでワクワクできる。知らない場所の徘徊は、地形や歴史を知ることができるのでとても楽しい。振り返ってみれば、あの膨大な暇な時間がなければ、心を豊かにする術を持っていなかったと思う。そう考えると、ネット環境、特にSNSが充実しているこの時代に生まれていなくて本当に良かったと思う。そう思いつつも、今ではなかなかデジタルデトックスができない日々を送っている。 経営学部 古川 邦之 |
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2022.07.07 『何かをしない理由』 何かをしない理由を考えることは、心(マインド)が進化の産物として獲得してきた働きの中でも得意とすることだ。臨床行動分析という心理学の分野では、このマインドの働きは、関係フレームづけという枠組みで分析されている。私自身、2016年の相談室だよりでは、階段昇降と題して「大学では(運動のため)基本的に階段を使っている」と書いたのだが、維持できているかと尋ねられたら、「ノー」のときも結構ある。階段 or エレベーター?という選択肢を前に、「疲れてるし」、「暑いし」、「荷物あるし」、「雨降ってるし」、「エレベーターちょうど来てたし」、「今はいいや」...とマインドは階段を上らない理由を次から次へと生成してくれる。そんなときに使える行動療法のエクササイズに、「考えを眺めるように見る」というものがある。何をするかというと、マインドが生み出す理由を、「こういう考えが今、浮かんでいるなあ」とモニタリングするのである。「考えと距離をとる」という表現も使われ、理由に流されたり、飲み込まれたりせずに、自分の価値にそった行動をすることを促すものだ。そこで、エクササイズを実践してみた。ついでに、あえてマインドに理由を生み出させると、よどみなく浮かんできて、少し可笑しく感じられた。時間にして数秒、その働きを観察したら、よし、上ろうと階段を使う行動に向かうことができた。このエクササイズがいつも効果的とは限らないが、普段あまり意識しないマインドの働きを観察することは、じっとしていてもできるので、暑くて何もしたくないというときには、試してみてもよいと思う。もちろん、熱中症対策は十分に、みなさん、よい夏をお過ごしください。 文学部 吉岡 昌子 |
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2022.07.04 『その「正義」、ちょっと待って!』 ロシアによるウクライナ侵攻、なかなか出口が見えませんね。今回の侵攻で明らかになったのは、「どんな無茶な主張であっても、「正義」を標榜することは可能であるし、それを信じる人たちも一定数存在する」ということではないしょうか。実はこれ、歴史学からすれば常識ですが・・・ 大学で学ぶことができる最も大きな部分は、「すべてを相対的に考えることができるようになること」であると考えています。学問を進めていけば行くほど、「絶対にこうであったはずだ」とか「絶対にこうであるべきだ」といった考え方は、疑わしくなっていきます。むしろ「絶対にXXだ!」なんて主張する人がいたら、大学教育をシッカリと受けた人間は、眉にシッカリと唾を塗り込んで、怪しむべきでしょうね。 一時期、「コロナ警察」なんて人たちも登場しました。この人たちは、自分の「正義」にもとづいて、必ずしも科学的に正しいわけでもない言説や行動を他者に強要することから、社会に軋轢をもたらしました。私も、通勤電車内で、「コロナ警察」のオッサンに、近くの席に座ったことを怒られ、耳元で15分にわたって怒鳴られ続けたことがあります。最初は笑顔で対応してたけど、オッサンは会話がしたいわけではなく一方的に怒鳴るだけなんで、結局、無視しました。何回かオッサンには言ったんだけど(理解はしてもらえなかったんだけど)、「2メートルちょいの位置に座られることより、耳元で怒鳴られることの方が感染のリスクは遥かに高いんだよ!」っつーの! 臨床心理学では、様々な困難な状況に直面した際に、それを跳ね返す復元力や回復力を意味する「レジリエンス」が注目されていますが、「レジリエンス」を持つためには、柔軟な認知ができることが重要と考えられています。 我々は、生きている間、様々な困難な状況に直面していくことになります。これは、人生においては避けられないことです。であれば、なるべくダメージを受けずに、困難な状況にしなやかに対応していきたいではありませんか。そんなとき、「これしか正義はない! 私(と私に同調する者)だけが正しいのだ! 私と意見が違う人は、全員間違っている!」という硬直した考え方は、社会に軋轢を生じさせるとともに、自分も生きづらくさせてしまいます。常に様々なことを相対化させ、柔軟に考えながら対処していきたいものですね。 付記:レジリエンスについては、愛知大学図書館にも次の本があります。参考にしてみてね! 小塩真司・平野真理・上野雄己編著(2021)『レジリエンスの心理学 : 社会をよりよく生きるために』金子書房 国際コミュニケーション学部 加納 寛 |
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2022.05.02 『はじめまして橋亜希です』 4月から車道キャンパスの学生相談室を担当することになりました橋亜希(よく漢字を間違えられます。英語hope,西語esperanza)です。私は高校生の時にアメリカのミシガン州に留学しました。二十代は、“自分らしさとは”、“自分とは何か”が知りたくて、働いてお金を貯めては、いろいろな国を旅しました。大きな回り道をして、三十代で臨床心理士になりました。まっすぐに進まずに寄り道したからこその出会いや学び、たくさんの良いこともありましたが、もっと生きやすい道があったのではと思う時もあります。でも、思春期や青年期にしっかりといろいろ悩んだことがいまの研究につながりました。私は最近テレビでも取り上げられたHighly Sensitive Person(HSP:とても敏感な人)という、「生まれつき感覚が敏感で、些細な刺激に気づき、刺激に圧倒されやすく、空気が読めすぎてしまったりして疲れやすく、人口の15%くらい存在する生きづらい人」の研究をしています。障害ではないため、生きづらさに診断名はつかないためにしんどい思いをしている人がいたら、自分ひとりではないことを知ってください。興味がある人はいつでも相談室に来てください。 発達心理学者のエリクソンは、進路や人間関係などさまざまな問題に直面し、失敗や挫折を繰り返して、「自分とはどんな存在か」に対する答えをみつけていく十代から二十代の初めの期間を「モラトリアム(猶予期間)」と呼びました。自分のことを考え、悩むことは次の段階へ進むために大切なことです。 私が「臨床心理士です」と言うと『心が読めますか?』と訊かれることがありますが、残念ながら読めません。でも心について一緒に考えることはできます。ひとりで考えていて苦しくなった時、学内に心理士がいることを思い出してください。私たち臨床心理士(公認心理師)には守秘義務がありますので安心して予約をしてください。 車道学生相談室 橋 亜希 |
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