ドイツ語の発音
アクセント・メロディ・リズム |
語と文のアクセント |
ドイツ語では、語のアクセントと文のアクセントがあります。 いずれも、ドイツ語のアクセントは、高さだけではなく強さアクセントなのです。 つまり、強勢の音節や語はほかの音節や語より高い声で発音されるだけではなく、 ほかの音節や語より強く発音されるわけです。そういうアクセントはドイツ語にだけではなく、すべての ゲルマン諸語にあります。
語は音節から成り立っています。アクセントに関する重要なのは、強勢がある音節と
強勢がない音節の区別なのです。強勢のある音節をこれから[]で、
強勢のない音節を[]で指します。
ドイツ語のことばのどこにアクセントを置くのかといったら、次のルールを覚えればよいです:
アクセントを語幹に置くこと
例を見てみましょう:
[spreche]は動詞で、1人称単数現在形です。その語尾は最後の[e]で、それが弱い[e]です。一方、
前の[e]は強い[e]です。弱い[e]は、一切強勢の音節に出ません。
ルール1、2、5、が当てはまります。音節[spre]は語幹なので、ルール1によると、 アクセントをもたなければならないことです。ルール2によって、語尾が入っている[che]は アクセントをもてないことです。ルール5によると、後ろから2つめの音節がアクセントを もつことです。
[aufräumen]は分離動詞です。前綴りは[auf]で、副文に出ない 動詞を活用すると、前綴りは動詞そのものから分離します。分離するかしないかを問わず、前綴りは アクセントをもちます。
ルール2、3、6が当てはまります。ルール3によると、分離動詞の前綴りはアクセントをもつ ことです。ルール2によって、語尾[men]はアクセントをもたないことです。アクセントを もつ音節の前後隣の音節はアクセントを持たないというルール6によると、語幹[räu]はアクセント をもてなくなります。
[gesprochen]は動詞[sprechen]から派生した過去分詞です。過去分詞は純粋時称を表す基礎動詞の形です。 [ge]は接頭辞の音節で、[chen]は語尾[-en]が入っている音節です。
ルール1、2、5が当てはまります。ルール1によって、語幹[spro]はアクセントをもつことです。 ルール2によると、接頭辞も語尾も一切アクセントをもたないことで、[ge]は接頭辞で、[chen]は語尾を 含んでいるので、両方アクセントをもてません。ルール5によって、後ろから2つめの音節にアクセントを 置けばよいです。
[diskutiert]は動詞で、3人称単数と2人称複数の現在形、または、過去分詞です。この動詞はラテン 語の動詞から派生しました。そういう語彙はドイツ語に多いです。動詞には、[-ieren]に終わる動詞の分 類があり、その動詞はすべて外来語です。[-ieren]動詞には、覚えるべき2つの特徴があります:アクセ ントはいつも[ier]に置くことと、過去分詞を作るときには、接頭辞[ge-]をつけないことです。
この動詞は外来語から派生したものなので、ゲルマン諸語に関するアクセントのルールに従わない ものです。しかし、ルール6は当てはまります。アクセントは[tiert]にあるので、隣の語[ku]はアク セントをもてません。
[Bildungsproblem]は複合名詞です。複合のことばなら、アクセントを必ず最初の語に置かなければな りません。それは[Bildung]です。[-ung]は生産的な接尾辞で、動詞を名詞に派生させるものです。接尾辞 なので、アクセントをもちません。
ルール2と4が当てはまります。ルール4によると、[pro]も[blem]もアクセントをもてません。 複合単語の最初の成分ではないのです。ルール2によると、接尾辞はアクセントをもたないことなので、 アクセントは[bil]になければなりません。
[Diskussionsthema]も複合名詞です。最初の語は[diskutieren]の名詞です。そのため、[ions]はアク セントをもちます。
この名詞は外来語から派生したものなので、普通のルールに従わないものです。しかし、ルール4と 6が当てはまります。ルール4によると、最初の語はアクセントをもつことなので、[thema]はアクセントを もてません。アクセントは[ions]にあるので、前後隣の音節はアクセントをもてません。
文のアクセントというのは、文中の重要なことばを強調するという現象です。
ある文に出ている語は同様に重要ではありません。ある語はもうすでに会話で出たし、コンテクストや文脈
から理解されます。しかし、ある意味では、人間は言語を通じて意見交換を行い、相手が未だに知らない
というふうに思われている情報を相手に伝えます。相手にとって、未だ知らない情報とは完全に新しい情報
です。話しては自分が相手にとって新しそうな情報を文のアクセントを置きながら、強調し、そうして自分が
話したところのどこが新しいか面白いかを分かりやすく伝えます。同じ文の意味はコンテクストや文脈に
よって、大きく違っていることも少なくありません。
原則として、どの言語でも、古い、または、もうすでに知られている情報は文頭に出がちです。一方、新しい
情報は殆ど文末のほうに出ます。新しい情報は発言の焦点・フォーかスと
言われています。
日本語には、係助詞「〜は」があり、その助詞は焦点を右にずらす機能をもっています。しかし、ドイツ語には、
日本語みたいな係助詞がないので、焦点を声で指します。それは文のアクセントです。
これから簡単なドイツ語の文"Er geht nach Hause"(=彼は家に帰る)を利用して、ドイツ語の文のアクセントを紹介します。
これは普通の文のアクセントと考えられています。アクセントは最後の語に置かれ、焦点が文末にあるの は普通なのです。
新しい情報は[Hause]、つまり「家に」です。
これは普通の文のアクセントと違うアクセントです。文頭にアクセントがあるので、新しい情報を含む 焦点は先となっています。それを対照アクセントと言われます。
この対照のアクセントは[er]とほかの人と対照する印です。例えば、「彼女じゃなくて、彼は家に帰る」 というような意味です。
文頭にも文末にもアクセントがなくて、その間のどこかにあれば、対照アクセントとして理解すべきことが 多いです。
この対照のアクセントは[geht]とほかの動作と対照する印です。例えば、「彼は自転車 に乗って家に帰るではなくて、歩いて帰る」というような意味です。