Research

主な研究テーマ

地方都市圏における大型店の立地動向とその地域的影響


 大型店の立地は,現在に至るまで地域に対して様々な社会的・経済的影響を与えてきました。単に既存の小売業から売上を奪うだけでなく,地域の流通構造,消費者の購買行動,商店街の盛衰などの地域小売業構造を根底から変化させています。特に「まちづくり三法」の施行以降,地方都市における商業機能の郊外化,それに伴う中心市街地の衰退などが都市問題として注目されています。
 こうした状況のなか,大型店の立地動向が地域にどのように影響を与えてきたかを時系列的に考察する必要があるでしょう。なぜならば,大型店の立地やその規模,業態,チェーンといった店舗特性は年々変化しています。それに伴い,消費者購買行動や地域商業への影響も変化していくためです。
 以上を背景として,地方都市圏において大型店がどのようなプロセスで立地してきたかを捉えるとともに,地域商業および消費者行動にどのような影響を与えてきたかを研究テーマとしています。研究対象地域には近年郊外に大型ショッピングセンターの進出が相次ぐとともに,明石海峡大橋開通に伴い大阪・神戸方面への消費の流出が著しい徳島都市圏を選びました。研究を行うにあたり,以下の点に着目しています。
(1) 大型店出店に関わる規制の運用とその変遷
 大型店出店に関わる規制として,大店法(1979年5月施行,2000年6月廃止)や大店立地法(2000年6月施行)などが挙げられますが,その運用には地域の特徴が色濃く反映されています。そこで,関係者へのインタビューや地域商業史を紐解くことによって,出店規制がどのような背景のもと運用され,地元商業者が大型店に対してどのように対応してきたかを検討します。
(2) チェーンストアの出店戦略とその変化
 先行研究では,規制運用の強化・緩和により同一チェーン内において出店地域の変化ならびに店舗の大量化・大型化・複合化がそれぞれ進んだことや,規制緩和によりチェーン間の出店戦略の差別化が進んだことなどが指摘されています。そこで,出店規制を時間軸として,チェーン間の競合がどのように変化しているかを規模や業態,チェーンの資本などから明らかにし,地域の変化と関連付けて考察します。
(3) 大型店の立地・閉鎖による中心市街地の変容
  1990年代後半以降,チェーンの規模を問わず中心市街地において大型店の閉鎖が相次ぎました。こうした大型空店舗の出現は中心市街地衰退に拍車をかけるものであり,さまざまな対策が行われていますが,厳しい状況にあります。こうした背景の下,中心市街地における大型店の開店から閉鎖,そして現状に至るまでのプロセスを追うとともに,都市全体にどのような影響を与えているかの解明を試みています。


徳島都市圏における大型店の立地動向(2023年)