趙師秀 Zhao Shi xiu (南宋)

 趙師秀(ちょうししゅう)(1170~1219)、字は紫芝(しし)。号は霊秀(れいしゅう)、または天楽(てんらく)。永嘉(浙江省温州)の人。四霊の第四。宋の王族で、太祖趙匡胤(ちょうきょういん)の八世の孫にあたる。紹熙元年(1190)の進士で、江南地方の各地の小官を歴任し、晩年は銭塘(せんとう)(浙江省杭州)に住んだ。永嘉の四霊の中で最も評価が高い。『清苑斎(せいえんさい)集』がある。

  約客  客と約す              

黄梅時節家家雨  黄梅(こうばい)の時節 家家の雨
青草池塘処処蛙  青草(せいそう)池塘(ちとう) 処処(しょしょ)の蛙
有約不来過夜半  約 有るも来たらず 夜半を過ぎ
閑敲棋子落灯花  (ひま)棋子(きし)(たた)けば 灯火 落つ


〔詩形〕七言絶句  〔韻字〕蛙、花(下平声・麻韻)

○約客 友人が客人として家に来ることを約束する。 
○黄梅時節 梅の実が黄色く熟する時節。梅雨の季節をさす。
○家家雨 どの家もどの家も、雨の中に閉ざされている。 
○青草池塘 青々と草のはえた池のつつみ。
○処処蛙 あちらこちらから、カエルの鳴き声が聞こえて来る。
○過夜半 真夜中を過ぎる。
○閑敲棋子 ひまにまかせて碁石を碁盤に打ちつける。「棋子」は、碁石。「碁子」とも書く。
○落灯花 「灯花」は、灯芯の燃えかすが花のような形になったもの。「落灯花」は、それが碁石の振動でポトリと落ちたことをさす。


 《客人との約束》客人と約束する

梅の実が黄色く熟する時節は、どの家もどの家も雨の中に閉ざされ、
青々と草が生い茂る池のつつみのそこかしこから、カエルの鳴き声が聞こえて来る。
約束をしたはずなのに友人は訪ねては来ず、とうとう真夜中を過ぎてしまった。
ひまにまかせて碁石をパチリと打つと、おや、灯花がポトリと落ちた。


 わかりやすく、また情趣に富んだ詩ですね。中国では『千家詩』に収録され、親しまれています。