趙師秀 Zhao Shi xiu (南宋)
約客 客と約す
黄梅時節家家雨
青草池塘処処蛙
有約不来過夜半 約 有るも来たらず 夜半を過ぎ
閑敲棋子落灯花
〔詩形〕七言絶句 〔韻字〕蛙、花(下平声・麻韻)
○約客 友人が客人として家に来ることを約束する。
○黄梅時節 梅の実が黄色く熟する時節。梅雨の季節をさす。
○家家雨 どの家もどの家も、雨の中に閉ざされている。
○青草池塘 青々と草のはえた池のつつみ。
○処処蛙 あちらこちらから、カエルの鳴き声が聞こえて来る。
○過夜半 真夜中を過ぎる。
○閑敲棋子 ひまにまかせて碁石を碁盤に打ちつける。「棋子」は、碁石。「碁子」とも書く。
○落灯花 「灯花」は、灯芯の燃えかすが花のような形になったもの。「落灯花」は、それが碁石の振動でポトリと落ちたことをさす。
《客人との約束》客人と約束する
梅の実が黄色く熟する時節は、どの家もどの家も雨の中に閉ざされ、
青々と草が生い茂る池のつつみのそこかしこから、カエルの鳴き声が聞こえて来る。
約束をしたはずなのに友人は訪ねては来ず、とうとう真夜中を過ぎてしまった。
ひまにまかせて碁石をパチリと打つと、おや、灯花がポトリと落ちた。
わかりやすく、また情趣に富んだ詩ですね。中国では『千家詩』に収録され、親しまれています。