曽鞏 Zeng Gong (北宋)
西楼 海浪如雲去却回 北風吹起数声雷 朱楼四面鈎疏箔 臥看千山急雨来 〔詩形〕七言絶句 〔脚韻〕回、雷、来(上平声・灰韻) |
○海浪 海の波。
○如雲 海の波が、まるで雲のように大きく盛りあがることをたとえる。
○去却回 行っては戻る。海の波が寄せてはかえすさま。「去」は、去って行く。「却」は、方向を変える。「回」は、戻って来る。
○朱楼 朱塗りの楼閣。ここでいう西楼をさす。
○四面 東西南北の4つの方向。
○鈎 すだれを高くかかげ、留め金にかける。
○疏箔 目のあらいすだれ。
○臥看 寝ころがってながめる。
○千山 数知れずある山々。「千」は、数の多いたとえ。
○急雨 にわか雨。
《西の高楼で》
海の波はまるで雲のようにわき起こり、向こうへと引き返しては、またこちらへと押し寄せて来る。
北風が吹き起こり、雷の音がたびたび聞こえる。
朱塗りの高殿の四方の窓のすだれをかかげ、
ごろりと寝ころがって、数知れずある山々に降り出したにわか雨をながめやる。
雲のようにわき起こり、寄せては返す海の波。吹きすさぶ北風。とどろく雷鳴。詩の前半は、嵐の前ぶれのただならぬ情景をうたっています。にもかかわらず、詩人は大胆にも建物の四方の窓を開けはなち、すだれを巻き上げて、周囲をとりまく山々に降るにわか雨を平然とながめています。豪放磊落というべきか、常人の理解を絶する境地というべきか。不思議な感動の残る作品です。