徐璣 Xu Ji  (南宋)

 
徐璣(じょき)(1162~1214) 、字は致中、または文淵。号は霊淵。永嘉四霊の二。原籍は泉州晉江(福建省)で、後に永嘉に居を移した。父の徐定が潮州(福建省)の太守をつとめたことから、その「致仕の恩」によって職を得、建安(福建省建甌)主簿、永州(湖南省零陵)司理、龍溪(福建省漳州)丞、武當(湖北省均縣)令などを歴任し、最後は長泰(福建省)令に任じられたが、赴任する前に世を去った。『二薇亭集』がある。
 

  新涼     徐璣

水満田疇稲葉斉  水 田疇に満ちて 稲葉 斉し
日光穿樹暁煙低  日光 樹を穿ちて 暁煙 低し
黄鶯也愛新涼好  黄鶯も也た愛す 新涼の好しきを
飛過青山影裏啼  飛びて青山を過ぎ 影裏に啼く


〔詩形〕七言絶句。 〔韻字〕斉、低、啼(上平八斉)。

○新涼 夏の後で、はじめて訪れた涼しさ。
○田疇 田んぼ。
○稲葉斉 稲の葉が、きれいに生えそろっている。「斉」は、整っているさま。
○日光穿樹 日光が、樹木の間から差し込んで来ること。
○黄鶯 鳥の名。和名コウライウグイス。

 《初秋の涼しさ》

水は田んぼに満ち、稲の葉はきれいに生えそろっている。
日の光は樹木の間から差し込み、朝もやが低くたれ込めている。
コウライウグイスも、このすばらしい初秋の涼しさを好ましく感じたのだろう。
青々と樹木の茂る山を飛び過ぎて、涼しい木陰で鳴いている。


秋のはじめのさわやかさを、よくとらえて表現しています。この詩は『宋詩選注』に収録されています。