徐俯 Xu Fu (北宋~南宋)

 徐俯(1075~1141)、字は師川。みずから東湖居士と号する。分寧(江西省修水)の人。父の蔭補によって通直郎を授けられる。張邦昌が帝位を僭称すると、彼は退職して官職を求めようとしなかった。紹興二年(1132)、進士出身の資格を賜り、侍読を兼ね、累遷して参知政事を兼ねる。信州の知州として終わった。若い頃の詩は舅の黄庭堅の影響を強く受けているが、晩年はみずから一家をなそうとして、詩風は平易自然に向かった。『東湖居士詩集』がある。

 
春日遊湖上  春日 湖上に遊ぶ
    
双飛燕子幾時回  双飛の燕子 幾時か回る
夾岸桃花蘸水開  岸を夾む桃花 水に蘸して開く
春雨断橋人不度  春雨 橋を断ちて 人 度らず
小舟撑出柳陰来  小舟 柳陰を撑出して来たる


〔詩形〕七言絶句 〔脚韻〕回・開・来(上平声・灰韻)
  
○詩題は、一に「春游湖」に作る。 
○湖 杭州の西湖をさす。 
○「双飛」句……
○幾時 いつ。 
○夾岸 両岸。 
○蘸……
○「夾岸」句……
○「春雨」句……
○「小舟」句……
○撑 〓で船を前進させる。

 春の日に、西湖の湖上で舟遊びをする

つがいで飛ぶツバメは、いつ戻って来たのだろうか。
両岸の桃の花は、枝を水にひたして咲いている。
春の雨は橋の行き来を止め、人は渡ることができない。
そこへ、小舟が柳の陰から棹さして出て来た。


この詩は、詩人の平易自然な詩風の代表作である。詩人は春雨の後の水が西湖に満ちている特有の景色を把握し、それを軽快活発・瀟洒自然に書き、他の大勢とは異なって独自の特色を有している。彼は着想に巧みで、剪裁がうまく、しかも「移歩換形」の手法によって「燕子双飛」「桃花蘸水」「春雨断橋」「柳陰撑出」という西湖の美景を一つ一つ展現し、詩人の大自然への愛着を表現している。