柳開 Liu Kai (五代~北宋)
  
 
柳開(りゅうかい)(946~1000)、字は仲塗(ちゅうと)。号は東郊野夫(とうこうやふ)補亡先生(ほぼうせんせい)。大名(河北省)の人。唐の韓愈(かんゆ)柳宗元(りゅうそうげん)の古文を極力提唱し、宋代における古文復興運動の先駆者となった。『河東先生集』がある。

  塞上  塞上(さいじょう)         

鳴骹直上一千尺  
鳴骹(めいこう) (ただ)ちに(のぼ)る 一千尺
天静無風声更乾  
天 静かに 風 無く 声 (さら)(かわ)
碧眼胡児三百騎  
碧眼(へきがん)胡児(こじ) 三百騎
尽提金勒向雲看  
(ことごと)金勒(きんろく)を提し 雲に向かいて()

〔詩形〕七言絶句  〔韻字〕乾、看(上平声・寒韻)


○塞上 「塞上の曲」とするテキストもある。 
○鳴骹 音をたてて飛ぶ矢。かぶら矢。 
○一千尺 大変高いことの形容。「幾千尺」とするテキストもある。 
○更 さらに。より一層。
○碧眼 青い目。
○胡児 当時の中国の西北に生息する少数民族に対する呼称。日本語では、えびす。
○騎 騎兵。騎馬武者。
○提 手で引きしめる。
○金勒 金属製の馬のくつわ。

 《辺境のとりでの近くで》

かぶら矢がどこまでもまっすぐに、一千尺の高さにまで上ってゆく。
空は静かで風もなく、その音は一層かわいて聞こえる。
青い目をしたえびすの若武者が三百騎、
誰もがみな金属製の馬のくつわを引きしめ、雲の彼方を眺めやる。


 まるで時代映画の1シーンのような作品。大空の彼方へと、うなり声をあげながら飛んで行く1本のかぶら矢。それを見あげる大勢の騎馬武者たち。辺境の情景が、生き生きとうたわれています。