戴復古 Dai Fu gu (南宋)

戴復古(たいふくこ 1167~1248頃 1250?)、字は式之(しきし)。号は石屏(せきへい)。台州黄岩(浙江省黄岩)の人。かつて林景思・陸游の門下に学び、広く閩・越・江・淮に遊び、平民として生涯を終えた。東皐子と号した父戴敏の影響で詩人を志し、徐似道や陸游について詩を学んだ。父と同じく一生仕官せず、各地をめぐって貴顕者に詩を売って暮すかたわら、多くの名士、文人と交遊した。晩年ようやく故郷に帰り、八十歳を過ぎて没した。彼は江湖派の代表的詩人の一人であり、杜甫と賈島を好み、詩の中でしばしば時政を諷刺批判した。一生の間江湖を漂泊した。若い頃、陸游に詩を学び、後に晩唐詩の影響を受けた。風格は自然で清健である。『石屏詩集』がある。

 
淮村兵後  淮村の兵後

小桃無主自開花  小桃 主無きも自ら花を開く
煙草茫茫帯晩鴉  煙草 茫茫として晩鴉を帯ぶ
幾処敗垣囲故井  幾処の敗垣か 故井を囲む
向来一一是人家  向来 一一 是れ人家


〔詩型〕七言絶句  〔韻字〕花、鴉、家(下平声・麻韻)

○淮村 淮南の農村。 
○兵後 戦乱の後。 
○敗垣 残破院堵。 
○故井 原来は井戸だったが、すでに被倒場院堵填没了。
○向来 従来。謂戦前は一直都是。

 淮南の農村 戦乱の後で        

小桃は、主人がいなくても、自ら花を咲かせており、
煙草は茫茫として、晩鴉を帯びている。
一体何ヶ所のこわれた垣根が、故井戸のまわりを囲んでいることだろうか。
以前は、その一つ一つが人家だったのだ。


この詩は、戦争によって破壊された後の淮南の農村の惨状をうたい、詩人の故国と人々への深い思いを表現している。