相談室だより 

 

 

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2026.9.8

『風が吹き抜けるとき』

 

先日、ビーチで催されていたフラダンスのショーにたまたま居合わせました。それはプロの方々というよりは、地方のフラダンス教室から集まったフラ愛好家の方たちによるステージのようでした。10組ほどのグループが参加されていたでしょうか。ある教室の出番になった時、その中心に、踊りだす前からなんだか周囲と違う雰囲気を醸し出しているダンサーの方がいらっしゃいました。曲が始まる前、入場時からどこか違うのです。ハワイのクム・フラ(きっとフラダンスのすごい人)から習っている、と教室紹介のアナウンス。そして曲が始まりそのダンサーが動き出した瞬間、ハワイの風がその場に吹き抜けたのです!・・・と、これだけでは伝わりませんよね。振り付けは、形は、他のダンサーと一緒なのです。では何が違うのか?言葉にすると平凡な表現になってしまうのですが、動きが、とにかくすごく柔らかいのです。彼女が一挙一動するたびに、ハワイの風が吹き抜けます。ダンスを踊っている、というのではなくこの風を届けたくて、そのために身体を媒体にしている、という感じなのです。

 

思えば私はこれまでこの幸運な風を他でも幾度となく体感してきました。まず私が習っている武道の先生。達人を超えて神様の領域に近づいていらっしゃる方です。武道というと力強くて激しいイメージがあるでしょうか?先生は、ものすごく柔らかいのです。柔らかすぎて、触れようとした瞬間になぜかこちらがひっくり返ってしまう。その瞬間、風が吹き抜けます。実は触れる前からなんとも心地よい雰囲気があるので、引き込まれるように触れにいっているのです。それはまるでミツバチが花に引き寄せられるように。ひっくり返った後は、優しい風に抱かれたような感覚が残ります。

 

この風は、身体を使った媒体限定なのでしょうか?いいえ、そうでもないようです。私が長年個人的に指導を受けていた心理学の先生。先生がその深い眼差しで人のこころを見通すとき、その瞬間それまで私にはまったく想定すらしなかった世界の扉がパーッと開け、そこを気持ちの良い風が一気に吹き抜ける、そういう感覚がありました。そして風は心地の良い余韻も残します。

共通しているものはなんだろうと考えます。風は、いつも柔らかさの中から生まれてきていました。形を追うのではなく中心をとらえ続けること、そしてその時の条件(場所や気象、文脈、流れ、相手のコンディションなど)によって、形は瞬間瞬間、変幻自在に変えていること。自らが風を起こそうとするのではなく、そうして必要な条件を整えていたら、あとは自然に風が吹くことになっているのよ、とそういう中からそれはうまれているように感じられます。

 

明鏡止水の境地とでも呼ぶのでしょうか?雑念の多い私には程遠い世界ですが、なんとも憧れますね。

 

名古屋学生相談室 松山

 

 

 

2026.9.3

『崖に見える太古の風景』

 

私は地質学を専門としており、日々崖に見える地層の調査を行っています。一見するとただの崖にしか見えなくても、そこに現れる岩石の色や模様などの組み合わせから、地質学者は実に多くの情報を読み取ることができます。 例えば、崖の岩石が水中で形成された堆積岩であれば、含まれる粒の大きさや形から当時の水深を推定できます。含まれる化石により、形成された時代や、詳細な生息環境が判明し、砂や泥の色からは当時の酸素環境まで読み取ることができます。さらに地層の模様を観察すれば、土砂が海底を流れ下ってきたのか、それとも上から静かに降り積もったのかまで見えてきます。単なる崖の風景ですが、地質学者は太古の川や海、干潟、そして火山噴火など、はるか昔の情景を思い描いています。

 

知識や経験が深まるにつれ、同じ景色を見ても、そこから見えてくる世界は劇的に変化します。 おそらく、文学や美術、歴史に詳しい人が、一通の手紙や街頭のポスター、あるいは古びた建物を目にしたときは、私には見えていない奥深い背景やドラマを感じ取っているのでしょう。だからこそ私は、もっと多くの世界を見るために、これからも学び、経験を重ねていきたいと思っています。みなさんも大学での学びを通して興味を少しずつ広げてみてください。これまでの見慣れた日常の風景が、以前よりも面白く見えてくる感覚をぜひ味わってほしいと思います。

                            

名古屋学生相談室 古川 邦之

 

 

 

2026.09.01

 

『タイミング』

 

自分が誰かに何かを相談して、「よし、頑張ろう!」と前向きになれるのは、「そのままのあなたのペースで大丈夫」と受け止めてもらった時のような気がします。「こんな自分で大丈夫だろうか…」とおそるおそる相談してみて、「そんなんじゃだめだよ、こうしたほうがいいよ!」と言われるときより、「今あなたがそうなっているのは、こういう状況だからだよね。」と言ってもらった方が、よほど力が湧いてくる。なのに、相談されると、心理士のくせに焦って、最短ルートの一般論を説明してしまうこともあり、後から反省しています…。

一般的なルートから見ると、すごく回り道に見えても、何年もして、後から振り返ってみるとこのルートしかなかった、このルートで良かったと思えるような道。その人それぞれに必要な時間があり、必要な出逢いがあり、適切なタイミングがあると思います。その渦中にいるときは、出口が見えなくて、自分だけがダメなように見えて、自暴自棄にもなりますが、意外とみんな躓いているし、悩んでいます。時には完全に休んだり、ささやかな楽しみを見つけたり、そして少し回復したら、誰かに気持ちを吐露しながら、今しか見えない景色や感情を味わって、一歩一歩歩みを進めていければ…きっといつの間にか自分自身が納得できる道にたどりついているのではないでしょうか。でも、そんな果てしない登山は一人ではしてはいけません。誰か信頼できる人を見つけてくださいね。万が一遭難しそうになったら、厚生棟5Fの一番奥の部屋にも立ち寄ってみてくださいね。

 

私事ですが、大先輩の竹内カウンセラーが退職されて、学生相談室を安定して運営していけるかな…と心配もありましたが、他のカウンセラーや職員の方、先生方に助けられ、支えられ、なんとか半期を終えました。グループ活動(お昼の会や季節の行事などをしています)も、竹内さんが盛り上げ上手だったので、懸念材料の一つでしたが、学生さんたちがすごく上手にリードしてくれていて感謝です。お互いの個性を発揮しながら、尊重しあう。それぞれが楽しみながら、思いやる。不安や気になることを打ち明けながら、励まし合う。絶妙なバランスが取れていて、私自身も受け入れてもらえている感じがして、とても居心地が良くてありがたいです。学生さんたちにとっても、安心できる、パワーチャージできる居場所になっていたら嬉しいです。グループ活動は常に新メンバー募集中です!興味のある方は、ぜひカウンセラーにお声がけくださいね♪

 

新学期、ブルーにもなりますが(笑)、ゆっくり焦らず、深呼吸して、できることから一つずつやっていきたいですね。

20268月の福井県の海です)

名古屋学生相談室 五藤

 

 

 

2026.06.12

 

『新しいことを始める〜続かなくてもいいじゃない〜』

 

初めまして。4月から新しく名古屋キャンパス学生相談室の非常勤相談員をしております、石本真澄です。よろしくお願いします。

 

新生活が始まるときなど、不安を感じると私は「できることを増やす」という方法で解消します。簡単に言えば「新年度に新しいことを始める」ということなんですが、これだけ言うとあまりにポジティブな表現でしっくりこないので、個人的には「増やしがち」と言いたくなります。というのも、始めたところであまり続かないからです。

 

2026年の始まりは、坂本龍一のドキュメンタリー映画を見て、人知れず表現をし続けた姿に感動し日記を始めました(ちなみに日記を始めるのは3回目です)。素敵なノートを準備してしばらく書いていたのですが、残念ながら2か月ほどで本棚から動かなくなってしまいました。

 

よく「日記を書くといいよ」と聞きます。実際にフォーカシングの理論から見れば、言葉にならない感情を表現することで「気持ちを整理する場所」として有効ですし、メタ認知(自分を客観視する力)の面から考えても、一度書き出すことで客観的に自分を理解できるかもしれません。SNSで見かける絵や写真付きの日記も、見返すと自分の日々を思い出せて素敵な習慣だと思います。どう考えても「やるといいこと」ですよね。それでもやっぱり、続かないものは続かない。ダイエットとか食事制限とか、世の中には「やった方がいいこと」がたくさんあるのに、なぜかできない・続かない。つくづく人は合理的にできていないなと思います(合理的に動ける人もいますけどね!)。

 

ただこれは、自己否定的な話しではなく案外「続かないなりにあれこれ手を出してみるのも悪くないな」と思っている自分もいます。何事もやり始めること自体にエネルギーを使いますし、一度始めておけば、またやりたくなったときに「前やったやつ」の続きから始められます。だから続かないとしても、めげずにまた新しいことを始めます。

 

皆さんは新年度をどのように過ごされていますか?

 

大学一年生は、何もかもが新しい挑戦かもしれません。サークルや部活、新たな学問に出会い「やり切れるか」と不安になりながらも日々を過ごしているかもしれません。そもそも自分に合っているかどうかすら、始めてみなければわからないものです。ですから、その時々に興味があることは、ぜひ大切にしていただきたいです。

 

私が大学生の時、「大学のうちにしかできないことはやっておいた方がいい」と大人によくアドバイスを受けました。その時は「大学のうちにしかできないことなんてないだ」とひねくれた気持ちになったことを思い出しますが、結局、その時興味があることは大学生でも社会人でも「今、やってみるしかない」のだと思います。

 

私は4月から刺繍を始めました。ずっと裁縫には苦手意識があって手を付けてこなかったのですが、急に思いついてスターターキットを買ってみました。様々な縫い方を調べながらやっているとあっという間に時間が過ぎ、ストレス解消にとてもいいような気がしています。果たして完成するのか? 今回も楽しみです。

 

名古屋学生相談室 石本