相談室だより 

 

 

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2025.07.31

 

「ソーセージと木漏れ日」

 

私はドイツ語を学び始めてかれこれ20年になります。ドイツ語を勉強していて楽しいと感じるのは、ドイツ語で人と意思疎通ができるようになった時。ですが、それ以上にもっと楽しいのは、ドイツ語の面白い表現や言葉に出会った時です。ドイツ語に限らず、あらゆる言語に共通することですが、言葉というものは文化の一部であり、むしろ文化そのものであると考えます。

 

例えば、ドイツと言えばソーセージを思い浮かべる人も多いかと思いますが、ドイツにはソーセージ(Wurst)を使った慣用句がたくさんあります。「Das ist mir Wurst」は直訳すると「それは私にとってソーセージだ」ですが、「それは私にとってどうでもよいことだ」という意味で用いられています。「Es geht um die Wurst(それはソーセージに関するものだ)」は、試合などの「とても大事な局面」を意味します。ドイツの食文化にとってソーセージが欠かせないものだったために、こうした慣用句が生れたのですね。単語に関していうと、私のお気に入りのドイツ語は「Zugenbrecher」と「Hexenschussです。「Zugenbrecher」はZunge()+Brecher(クラッシャー)の複合語「舌のクラッシャー」で、「早口言葉」という意味。Hexenschuss」はHexe(魔女)+Schuss(射撃)=「魔女の射撃」で、「ぎっくり腰」という意味です。面白い表現をするな、と笑ってしまいます。一番素敵だと思うのは「Schneewesen」という言葉。Schnee()+Wesen()=「雪ほうき」で、「泡立て器」の意味です。泡立て器でメレンゲを作るときに、それを雪に見立てて生まれた言葉なのだと思います。なんて綺麗な言葉なんだろうとため息をついてしまいました。

 

 ドイツ語を学んでいていると興味深い言葉や表現に出会うのですが、日本語の素敵な表現を発見することもあります。例えば、「木漏れ日」という言葉。木の枝葉から差し込む日の光のことです。「木漏れ日」を一言で表す言語は、日本語の他にはないそうです。こんな自然の美しさに名前を付けた人はなんて繊細な言語感覚を持った素敵な人なのでしょう。

 

 木漏れ日の中で森林浴を楽しみたいところですが、暑すぎて外出できませんね。冷房の効いた部屋に引きこもって、この文章を書いています。毎日暑い日が続きますが、みなさんもどうか体調など崩されませんよう、ご自愛ください。

 

国際コミュニケーション学部 樋口 恵

 

 

 

2025.07.26

 

『相談室だより』

 

 毎朝、大学までの通勤に、私は名古屋市営地下鉄鶴舞線「平針」駅で乗車し、「大須観音」駅で下車し、笹島校舎まで歩いています。

 

十年前からでしょうか、「平針」駅二番出入口までの約一〇分間の歩行中に、一つの現象が続いていることに気が付きました。それは、出入口の約二〇〇メートル前から、ほぼ総ての通勤通学客が歩道の左側を歩いていることです。一つの理由は、目指す出入口が向かって左側に位置しているため、人々は、少しでも早く着こうとしているのでしょう。もう一つの理由は、地下鉄「平針」駅構内が左側通行になっており、地上に出てくる大半の人々がそのまま惰性で歩道の左側を歩いてくるからでしょう。

 

一〇年前には、こうした現象は極めて稀でした。現在では、通勤通学ラッシュ時以外の時間帯でも、左側通行が常態化しています(ちなみに、私の場合、地下鉄出入口までは、歩道の右側を歩いています。そうしますと、前方から左側を歩いてくる人々とは、正面衝突することになります。これを避けるため、空いている方の手を挙げて、合図をし、かつ軽く会釈して、右側通行を続けています)。こうした毎朝の通勤通学時の光景に、現代社会が世知辛くなっているように私は感じています。

 

 近時、教育・社会学研究者の桜井智恵子さん(現在、関西学院大学人間福祉学部教授)へのインタビュー記事「しんどさ増す子ども」(二〇二五年七月一五日付朝日新聞日刊第一一面掲載「オピニオン&フォーラム」欄、聴き手は田中聡子記者)を拝読しました。学力をつけて競争社会を勝ち抜かないと将来「食べていく」ことができないという風潮が家庭レベルにまで浸透した結果、「子どもが壊れ」始めていると、桜井さんは警鐘を鳴らしています。そして、桜井さんは、競争しなくとも、「みんなが食べて」いくことができる社会にすることが必要ではないか、とも指摘しておられます。

 

 大学は、しばしば「象牙の塔」と揶揄されることがあります。しかし、大学も、社会を構成する一組織です。そして、毎年、卒業生を社会へ送り出し、入れ替わりに新入生を迎えています。教員の場合も、定年で退職者が出ると、担当科目次第では、後任者が補充されます。このように人の出入りがある以上、大学内にも現代社会の様々な風潮が入ってきます。

 

 おそらく、この拙文をお読みなっている学生の皆さんは、朝晩の通学ラッシュに辟易し、日頃の大学構内でも息苦しさを感じておられるからではないでしょうか。学生相談室では、専門相談員(臨床心理士・公認心理士)が交代で常駐しています。学業絡みの悩み事であれば、私をも含めた各学部からの専任教員が、対応します(私の場合、四月から相談員となりました。しかし、かなり以前に当相談室の関連部局である学生部委員会という組織で、学生面談の経験があります)。皆さんから相談された内容について、私どもは秘密を厳守します。どうぞ気軽に相談室を訪ねてみて下さい。

 

法学部 大川 四郎

 

 

 

2025.06.10

 

『春と夏の間に梅雨がある』

 

季節の変わり目ですね。寒かった冬はやっと終わり、春が来たと思ったら、夏が見えてくる。

夏が見えたと思ったら、またすこし肌寒い春のような気候に戻り、季節が移り変わっていく。もう夏が来たのかと思えるほど、気温が上がるのが今年の特徴と言えるのではないでしょうか。

近所の子どもが、題名にある通り、春と夏との間には梅雨があるんだよと、あたかも5番目の季節があるかのように話していました。そうとも言えるほど、梅雨の時期は独特の気候がありますね。愛知もそろそろ梅雨になるようです。カラッと晴れ、肌がジリジリくるような夏はまだまだ先ですね。

学生の皆さんにとっては、そろそろ授業に慣れてきたころでしょうか?授業の中間課題が出て、四苦八苦しているかもしれませんね。初めて書くレポートに困っている方もいるかもしれません。

5月、6月は移り変わりやすい気候のせいもありますが、4月からの新生活に向けて、緊張状態だった時期を通り越して、なんとなく慣れてきて緊張感が薄れるときです。人の体は不思議なもので、そういう時に風邪を引くなど、体調を崩すことがあります。なんだかだるい、疲れが取れないと思うのも、新一年生は受験期から含めた長い間の疲れがたまっているせいかもしれません。在学生の皆さんも、2年目以上の学生生活経験があったとしても、春学期は緊張感があるものではないでしょうか。緊張は、すぐ解ける人もいれば、そうでない人もいて、個人差があります。

体調の悪さ、眠れない、起きられない、といった症状がでてくるのも、梅雨が始まるこの時期が多いように思います。

そんな時は、まず休むことが大切だと思っています。しかし、そうできないことも多いですよね。多くの方は時間が過ぎれば体調も戻ってきて、大学での生活も慣れたと思える時が来ると思います。しかし、なんとなく体調が戻らない状態があり、それはなぜかなと思ったときは、誰かに話をしてみてください。他人の考えを聞くと、一緒の悩みを抱えていたことに安心したり、気分転換になるような新しい方法を知ることになったりと、自分だけでは思いつかなかった事が分かる場合もあります。

誰かに話すことは勇気がいると思っている方には、相談室があることをお忘れなく!いつもの関係性の中では話し辛いことも、第三者視点でカウンセラーとは相談ができると思います。一対一の個室での対応となりますので、安心して、相談に来てください。

 

豊橋学生相談室 長坂

 

 

 

2025.05.26

 

『片付けから心を考える』

 

はじめまして。4月から新しく車道キャンパスの学生相談室の非常勤相談員になりました、沢出 友美です。

私は、1年ほど前から“お片付け動画”にはまっています。自分の家を快適に整えたいと思ったことがきっかけですが、今では片付けをきっかけに人が変わっていく様子に惹かれ、人間ドラマとして見ていると言ってもいいかもしれません。

なかでも、断捨離の提唱者やましたひでこさんと、捨てなくてもいいというスタンスの整理収納アドバイザー古堅純子さんの番組や動画をよく見ているのですが、“捨てる派”のやましたさんと“捨てない派”の古堅さんが両極にいるように見えて、依頼者には共通して『今』を大事にしましょうというメッセージを送っているところがとても興味深いなと感じています。

やましたさんは、過去の思い出や未来への不安からたくさんのものを抱え込んでいる依頼者に、それは本当に『今』のあなたに必要なもの?と問いかけます。古堅さんは、部屋の中の景色を良くして、『今』使うものを使いやすい場所に収納していくために、その家に暮らす人が『今』大切にしたいことをヒアリングしながら片づけを進めていきます。

すると、やましたさんの依頼者が今の自分に不要なものを手放していくだけでなく、古堅さんの依頼者も今使わないものにスペースを取られてしまうことをもったいないと感じ、ものを減らす方向へ進んでいくことが少なくありません。

頭や心の中も同じように、過去の出来事にとらわれすぎてしまったり、まだ起きていないことへの心配で押しつぶされてしまったりして、今に目を向けることが難しくなることがあります。そんなとき、過去を振り返って整理し、未来をほどよく考えながら、今の自分はどうしていこうかを見つけていく一つの方法として、学生相談室を利用してもらえたらいいなと思っています。

 

車道学生相談室 沢出