中国の「三農問題」
04E2278 田中健太郎
まず私たちは、「世界の工場」とも呼ばれる農業大国である中国は人口の3分の2以上が農村で暮らしていることを忘れてはならない。またその中で、中国は近代経済の発展に伴い、農村から都市に移動して工業、商業など非農業セクターで働く人が増え、都市部に住む人口の対全体比を示す都市化率も上昇してきている。こうした人口移動がもたらせる要因として都市農村間の賃金格差または所得格差などが挙げられる。その他にも、戸籍制度の問題や農業税の問題などがある。
これらを踏まえ、朱鎔基首相(当時)は2003年3月の10期全人代・政府活動報告で、「三農、つまり農業、農村、農民の問題はわが国の改革・開放と現代化建設の全局に関わるものであり、いついかなる時においてもそれを疎かにし、手を抜いてはならない」と発言している。中国の今後の更なる発展の背景には、この発言は重要な意味を示していると思う。
中国はWTO加盟後、貿易の開放、特に関税の引下げを享受でき、かつ多くの加盟国の最恵国待遇を無条件に得ることができ、特に発展途上国に対する最恵国待遇は、中国の農業の国際化に有利な環境をもたらすことができた。短期的にみればデメリットであるかもしれないが、長期的にみればデメリットを十分にカバーできるだろう。
また、第11次5ヵ年計画では、「調和の取れた社会」(「和諧社会」)を前面に打ち出すことで「先富」から「共富」への転換を目指している。ここでは、経済発展の果実を広く国民全体に行き渡らせるために、雇用創出、地域格差の是正、三農問題の解決とともに、社会保障制度、医療、失業、労災といったセーフティネットの構築が盛り込まれている。中でも、「新農村」を建設するために、財政投入を増やして、インフラ建設や教育をはじめとする公共サービスの充実化が強調されている。しかし、所得格差の是正は思ったよりも進まなかった。この先の行動はこれからじっくりとみていきたいと思う。最後に中国農業のこれからの展望、むすびとして個人的感想や意見などを述べたいと思う。
目次
はじめに
第1章 農業においての問題
1-1 最優先課題と位置づけられた理由
1-2 農業の低生産性
1-3 不安定な食糧生産
1-3-1 中国の中央政府の政策
1-3-2 レスター・R・ブラウン
1-3-3 EUの環境保全型農業
1-3-4 日本の環境保全型農業
1-3-5 中国の取り組み
1-4 中国農業のWTO加盟による中国農業への影響
第2章 農民においての問題
2-1 所得格差の実態
2-1-1 地域間所得格差
2-1-2 農村労働力流動の拡大(中国沿岸部と内陸部の比較)
2-2 農民紛争
2-3 戸籍制度
2-4 農業税廃止とその意義
第3章 農村においての問題
3-1 農村の荒廃
3-2 新農村
3-3 問題解決に向けて~第11期5ヵ年計画~
3-3-1 「先富」から「共富」へ
第4章 中国農業の将来への展望
4-1 これまでの中国の変革運動より
4-1-1 中国にある様々な格差
4-2 中国政府が打ち出した政策:現代農業
4-3 中国農業の展望
むすび