第5章 日中貿易摩擦とセーフガード
00E2358 小林真知子
はじめに
近年中国経済の発展と共に日中間の貿易量も飛躍的に増加し、両国の貿易関係は親密なものになっている。しかし、日中の貿易関係は全てが順調というわけではなく、いくつかの問題を抱えており日中貿易摩擦は深刻なものになりつつある。良質で安価な中国からの輸入品は日本の消費者にとって有益なものである反面、生産者はこれらの輸入品との激しい競争の嵐に直面することとなり、中国製品の存在は脅威となっている。こうした中で、日本国内ではセーフガード発動など輸入制限を求める動きが活発化している。日本は95、96年に繊維セーフガードで調査を計2件実施し(発動せず)、97年には豚肉に特別セーフガードを発動したのみで、一般セーフガードを発動の事例はなかったが、2001年農産物3品目について一般セーフガードの暫定措置を発動した。このことは日中間に大きな波紋を起こした。なぜこのような事態になったのだろうか?私は日中貿易摩擦にはどのような背景があったのかなど詳しく調べていこうと思う。
第1節 貿易大国として登場する中国
「改革開放が進むにつれて、中国が世界経済に組み込まれつつある一方、世界貿易におけるプレゼンスも高まっている。1978年から2001年にかけて、中国の輸出は97.5億ドルから2662億ドルへ、輸入も108.9億ドルから2436億ドルへと急増している。これを反映して、中国は世界ランキングで32位から6位に上昇しており、この勢いに乗って、数年後には米、日、独に次ぐ貿易大国となろう。貿易の拡大を牽引しているのは外資企業による直接投資である。直接投資の流入額(実行ベース)は92年に初めて100億ドル台に乗り、さらに96年以降、400億ドルを超える水準を維持している。直接投資は、貿易の急増を牽引する機関車であり、外資企業の輸出と輸入に占めるシェアは年々上昇しており、2000年にそれぞれ47.9%と52.1%に達している。中国にとって、日本と米国がそれぞれ第1と第2位の貿易相手国である。米国が最も重要な輸出先であるのに対して、日本は最大の輸入元となっている。このように、NIESやASEAN諸国と同様、日本から資本財や中間財を調達し、製品を米国に輸出するという従来の太平洋貿易トライアングルというパターンは中国にもあてはまる。近年、中国経済と一体化が進んでいる香港と台湾を合わせた中華圏で見ると、こうした傾向が一層明らかである。
日本にとっても、中国が米国に次ぐ重要な貿易相手国となっている。特に日本の輸入総額に占める中国のシェアは、90年の5.1%から2001年には16.6%と急速に高まっている。台湾、香港を含めると、2001年に21.0%を占め、米国シェアを上回っている。国内の不況が長引く中で、輸入の増大に伴う貿易赤字の悪化が問題視されるようになった。確かに、日本の対中赤字は、近年増加傾向にあり、2000年に続き、2001年も年間2割ほど増えている。また、日本の貿易黒字は1998年のピーク時と比べ、2001年には7.4兆円減少しているが、しかし、そのうち中国による寄与は1兆円に止まっているのである。その上、現実の対中貿易には、直接貿易だけでなく、香港や台湾を経由した中継貿易や加工貿易も含まれることを勘案すると、実際の対中貿易の規模を知るためには、この3地域(すなわち、中華圏)を合計した数字で測るべきであろう。それによると、2001年の貿易黒字額6.6兆円に対し、対中赤字額は3.3兆円であったが、香港と台湾に対しては大幅な黒字を計上しているため、3地域の合計では、日本側の6100億円の黒字となっている。(図1)。」1
図1. 日本の地域別貿易収支 |
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第2節 セーフガードとは
日本語では「緊急輸入制限措置」といい、輸入品の急増で国内産業が大きな損害を受けることを回避するため、政府が関税を引き上げたり輸入量を制限したりして、一時的に輸入品の流入を抑える制度である。
1.一般セーフガード
「一般セーフガードは、1994年GATT第19条、セーフガード協定に基づき、輸入急増による国内産業への重大な損害防止のために認められている緊急措置である。我が国においては、関税の引上げについては関税定率法第9条及び緊急関税等に関する政令、輸入数量制限については外為法及び輸入貿易管理令に基づく経済産業省告示をもって規定されている。
@対象品目
農林水産物を含むモノ全般
A 発動要件
・外国における価格の低落その他予想されなかった事情の変化による輸入の増加があるこ
と。
・輸入の増加により国内産業に重大な損害又はそのおそれが生じていること(客観的な証拠に
基づくその因果関係の立証が必要)
・国民経済上緊急に必要があること。
B 措置内容
関税引上げ(関税割当を含む)又は輸入数量制限
(1) 関税引上げの場合、その引上げ後の税額の上限は内外価格差(輸入価格と適正な国内
卸売価格との差額)まで。
(2) 数量制限の場合、その数量は原則として直近の適当と認められる3年間の平均輸入量以
上。(ただし、重大な損害を防止し又は救済し、構造調整を容易にするために必要な限度
内とされている。)
C 発動期間
原則4年以内、延長しても最大8年以内 (暫定期間を含む。)
(ただし、重大な損害を防止し又は救済し、構造調整を容易にするために必要な期間とされて
いる。)
2.暫定措置
@発動要件
調査が開始された場合において、調査完了前にも十分な証拠により輸入増加の事実及びこれが国内産業に与える重大な損害等について推定することができ、国民経済上特に緊急に必要があること。
A措置内容・期限
関税引上げのみ。200日以内。(調査完了前に発動可能。)
(調査により損害が認定されなければ、徴収した税は還付する。措置をとる前にWTOに通報 し、措置がとられた後に直ちに関係国と協議を行う。)」2
第3節 韓国のにんにくセーフガード−中韓にんにく戦争−
日本政府は2000年農産物3品目についてセーフガードを発動したが(第4節で詳しく説明する)、その約1年前、韓国と中国の間でも類似の状況が起こった。それが中韓にんにく戦争である。
1.中韓にんにく戦争の主な内容
韓国政府は99年11月、中国が輸入の99%を占める輸入にんにくに対し、セーフガード暫定措置の発動を決め、現行の関税率30%を315%に引き上げた。さらに翌2000年5月31日には正式発動も決定し、6月1日に実施した。これに対し、中国政府は6月7日、韓国製の携帯・自動車電話とポリエチレン製品の輸入を暫時停止する対抗措置を決定、即日実施した。これは結果として、輸出入比で韓国の措置の約50倍に相当する報復となった。その後、中韓両国政府の協議の結果、7月31日に双方が譲歩したかたちで「にんにくに関する貿易協定」が締結され、決着をみた。中国側は携帯・自動車電話とポリエチレン製品の輸入停止措置を撤回し、韓国側は、にんにくの輸入量2万トンまでは現行の関税率(30%)を適用し、超過分に対しては高関税率(315%)を適用するという「関税割当方式」を採用し、数量の年逓増率5.25%、有効期限3年を決定した。韓国の携帯電話と石油化学業界の損害額は1億ドルを超えると推定されている。
2. にんにく戦争の背景
@ 中国農産物の競争力
「この問題の出発点となった中国産にんにくの競争力が向上していること、さらには、中国の野菜生産、輸出が増加している点は注目される。安価な中国産にんにくは、卸値ベースで韓国産の2分の1〜4分の1と言われ、にんにく輸入急増による供給過剰から国内市況は値崩れを起こし、韓国内のにんにく栽培農家への打撃は深刻なものとなっていた。韓国が輸入した中国産にんにくは、96年の1万トン弱から99年には3.7万トンと3年間で倍増しており、これがにんにく戦争を引き起こした要因となっている。国連統計によれば、99年世界全体のにんにく収穫量は950万トンであるが、そのうち中国が600万トンと3分の2を占めており、韓国、インドの10倍以上の規模となっている。
一方、中国では穀物など土地集約型農産物の競争力が低下しているが、野菜などの労働集約型農産物は競争力を強化しつつある。かつて中国では穀物生産に重点が置かれていたが、改革開放政策により都市住民の所得が増えるようになると野菜など副食の需要が拡大し、野菜の増産に注力するようになった。90年代に、農村と都市の所得格差が顕著になると、その解決策の1つとして、換金性の高い青果物生産が拡大された。こうして、野菜の生産量は95年の2.6億トンから2000年には4.4億トンに達した。これは国民一人あたり約345sに当たり、政府の定めた1人当たり消費量183sの基準を大幅に超過し、中国野菜の輸出圧力が高まる要因ともなっている。また野菜産地はその主要消費地である臨海都市部近郊において発展しているため、輸出も比較的容易である。実際、中国の野菜輸出は93年から2000年にかけての7年間で137万トンから245万トンへと着実に増加している。
A 輸出市場としての重要性
今回のにんにく戦争において、韓国は守勢に立たされ、中国に対して譲歩せざるを得なかったとの印象が拭えない。これは韓国の中国向けの輸出シェアが11%に達し、中国が米国、日本に次ぐ一大輸出市場に育ったことが大きい。すなわち、92年の国交樹立以来、地理的な優位性を生かしながら韓国は中国市場に依存してきたとはいえ、IT関連製品をはじめ、化学品、プラスチック、繊維、鉄鋼などの金属関連などの幅広い商品を取り扱っている。とりわけ韓国の貿易黒字117億ドル(2000年)のうち、約半分は中国との貿易によるものであり、「外貨獲得」という観点からは多大な寄与を受けている。要するに「重大顧客である中国」に対して、強い立場を主張できなかったとも言える。
一方中国にとっての韓国市場の位置付けであるが、2000年のデータから見れば、中国の韓国向け輸出は繊維、機械、金属、エネルギーを中心に伸長しているが、全輸出に占めるシェアは5%足らずである。しかも、対韓貿易赤字は97年の58億ドルから2000年には119億ドルへと拡大している。今回、中国は韓国向けにんにく輸出(1500万ドル)へのセーフガード発動に対し、携帯電話(4000万ドル)とポリエチレン(4.7億ドル)合計約5億ドルの輸入を規制するといった厳しい措置をとることができたが、これは、中国の対韓輸出依存度が相対的に低かったためといった見方もできる。」3
第4節 ネギ等3品目に関わるセーフガード
2000年12月22日、日本は中国からの輸入が急増しているネギ、生しいたけ、畳表の農産物3品目についてWTOの提示する枠組みないでセーフガードを発動するか否かの調査を開始、2001年4月17日の閣僚会議で一般セーフガードを暫定発動することを正式決定した。この決定を受けて4月23日、日本政府はネギ、生しいたけ、畳表の3品目に対し、セーフガードを暫定発動した。
1.具体的措置内容
@ 発動期間
2001年4月23日から11月8日までの200日
A 関税割当
以下の関税割当数量については現行の関税率を維持する。なお割り当は、過去3年間の輸入通関実績等を勘案して行う。
(1)ネ ギ: 5,383トン [年換算 9,823トン]
(2)生しいたけ: 8,003トン [年換算29,684トン]
(3)畳 表: 7,949トン [年換算18,440トン]
B 関税
上記関税割当数量を超える輸入については、品目ごとに現行関税率に加え、次の関税率を課す。
(1)ネ ギ: 225円/s(256%相当) [現行関税率3%]
(2)生しいたけ: 635円/s(266%相当) [現行関税率4.3%]
(3)畳 表: 306円/s(106%相当) [現行関税率6%]
2.暫定セーフガード発動の背景
ネギ、生しいたけ、畳表は1998年から急激に輸入量が増加し、1997年当時には国内シェアはわずか0.4%から最も多い畳表でも25.6%であったものが2000年には最も少ないネギでも8.2%、畳表に至っては59.4%という圧倒的な市場占有率を誇るまでに輸入が拡大した(図2)。
図2.セーフガード対象3品目の輸入量推移とシェア
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1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
ネギ |
輸入量 |
トン |
1,504 |
1,471 |
6,802 |
21,197 |
37,375 |
対前年増加率 |
% |
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△2.2 |
362.4 |
211.6 |
76.3 |
|
国内シェア |
% |
0.4 |
0.4 |
1.7 |
5.0 |
8.2 |
|
生椎茸 |
輸入量 |
トン |
24,394 |
26,028 |
31,396 |
31,628 |
42,057 |
対前年増加率 |
% |
|
6.7 |
20.6 |
0.7 |
33.0 |
|
国内シェア |
% |
24.5 |
25.8 |
29.7 |
31.0 |
38.5 |
|
畳表 |
輸入量 |
千枚 |
11,369 |
8,628 |
10,344 |
13,569 |
20,300 |
対前年増加率 |
% |
|
△24.1 |
19.9 |
31.2 |
49.6 |
|
国内シェア |
% |
29.7 |
25.6 |
32.7 |
46.0 |
59.4 |
(出所)http://www.pref.ibaraki.jp/shanghai/business/repo0105_02.htm より
中国から日本に野菜輸出が急増する最大の理由として、日本と中国の価格差があげられる。ネギ、生しいたけ、畳表の3品目については国内卸売価格が国産品に比べ30%〜70%近くも安い。中国産のネギは、農家から約15円/kgで買い取られ、日本の輸入価格は91円/kg(2001年3月、野菜供給安定基金)、一方、日本で生産されたネギの卸売価格は227円/kg(2001年3月、農林水産省「農林水産統計月報」)である。このように大きな価格差があるため、輸入業者にとっても、野菜を生産する中国の農民にとっても野菜の対日輸出は利益の大きいものとなっている。また、日本の企業は中国の生産者たちに日本の消費者のニーズに合うような商品を日本向けに輸出できるように、中国に技術指導や生産設備を提供する「開発輸入」を盛んに行っており、中国の対日輸出の9割以上が開発輸入によるものである。したがって、日中間の農産物貿易摩擦は同時に日本国内企業間・業界間の利益調整の問題でもあり「日日摩擦」という側面を持っており日中貿易摩擦はより複雑なものになっている。
日本の農業部門においては、高齢化や労働力の激減が進む中で、生産コストが高まり、価格競争力が低下している。さらに、日本国内の農業は流通システムが低効率で複雑なので、コストが高くなってしまうという問題を抱えており、輸入農産物との競争では明らかに劣位に立たされている。したがって、中国からの廉価な農産物の輸入が日本の農産品の生産者たちに大きな打撃を与え、セーフガードを強く求めるようになった。
3. 中国側の対応
中国政府は、2001年6月21日、先に日本政府がセーフガード暫定措置を発動したことを受けて、対抗措置として日本製の空調機器、携帯・自動車電話、自動車の輸入品に対し、100%の特別関税を追加課税することを決定し、6月22日より実施した。これに対して日本政府は「セーフガード暫定措置はWTO協定を踏まえて実施した」と主張。中国の措置は「暫定措置の段階では対抗措置を認めていないWTO協定、さらには最恵国待遇義務を定める日中貿易協定に反する行為」と主張した。一方、中国政府は「日本の措置は一方的、差別的かつ不公平」として、日本の暫定措置の撤回を要求した。また、中国の措置は「中国国内関係法令に基づき実施した」と主張した。2000年度に日本から中国へ輸出された自動車はわずか3万5000台でこれは総輸出台数の1%に過ぎない。特別関税の影響がない空調機器も毎年2万台と、日本の年生産量750万台のうちごく一部である。また携帯電話は、中国がヨーロッパの技術基準を採用していることもあり、中国への輸出量は総輸出量のごく一部であり、対抗措置による影響はそれほど大きくはならないものだった。自動車など日本の工業製品の象徴である3品目を対象とすることで日本に対するシグナル的な意味が強かったものと考えられる。
4. セーフガード本発動回避
2001年12月21日、日中両政府は、農産品3品目のセーフガード本発動の回避に向けた閣僚会議を開き、合意に達した。合意内容は、日本政府は本発動を回避、中国は日本製自動車などに課していた高率関税を撤回するというものであった。両国は農産物3品目の秩序ある貿易に向けて、生産者らが参加する民間の農産品貿易協議会を立ち上げる。協議会は必要に応じて政府関係者も参加し「作付け、生産、貿易の健全な発展を誘導する」ことから、実質的に生産、貿易量を調整する機関になる。中国が2001年12月11日にWTO加盟国になったことで、貿易量の直接的な管理はWTO協定違反になるため、協議会方式という苦肉の策をとらざるを得なかったといえる。日本政府としては、中国向けの今後の成長商品である自動車などを、より配慮せざるを得ず、セーフガードの本発動には踏み切れなかった。しかしたとえ本発動に踏み切ったとしても、国内の産業を守るために輸入に障壁を設けることは、対処療法に過ぎず何の解決にもならない。野菜農家を中心に、生産から流通、消費にわたる構造改革をすすめ、なおかつ外国産と差別化できる高付加価値生製品を生み出す努力が必要である。結局は競争力向上が生き残りのカギとなる。
第5節 鉄鋼セーフガード
1.米国の鉄鋼セーフガード
2002年3月5日、米国政府は倒産企業が続出する国内鉄鋼業界救済のため、鉄鋼製品に対するセーフガードを発表、20日に発動した。
@具体的措置内容
「以下の産品累計14品目に対して、3年間に亘る措置(2年目以降は関税率引下げ等措置を緩和)を実施。
(1)スラブ(鋼板に加工される前の半製品)
関税割当:540万トンの輸入割当(初年度)を越えた場合には30%の関税を賦課。
(2)鋼板類(自動車、産業機器、食用缶等で幅広く使用)
30%の関税引上げ。
(3)条鋼類(主に建設用の鉄筋等に活用される棒鋼等)
30%の関税引上げ(一部13%の関税引上げ)。
(4)鋼管類(一般配管や機械構造用配管等で使用)
15%の関税引上げ。
(5)ステンレス類(さびに強く、棒鋼、ワイヤー等多様な用途で使用)
15%の関税引上げ(一部8%の関税引上げ)。
A 日本の対応
日本は、米国に対し措置の即時撤回を求め、本件をWTO紛争解決手続きに付託し、加えて、補償の提供、除外品目の対象拡大を含めた適切な対応を求めた。しかしながら、5月17日の対抗措置の通報期限までに決着を見なかったところ、権利の保全のため対抗措置の通報を行い、また、6月18日に米国に対する関税譲許の適用(関税率に関する日本のWTO協定上の約束)停止等を内容とする政令を施行した。ただし、話し合いでの解決に全力を挙げるとの観点から、現行の関税率を維持した上で引き続き日米間交渉を続けた。その結果、8月31日、除外の認定等に係る米国の建設的な対応を勘案し、6月18日に適用を停止した関税譲許については、WTO紛争解決手段の結論が出るまでの間、実際の関税引上げを行わないことを決定した。」4
米国は、日本関連の適用除外品目を8月末までに6回にわたり発表した。その結果、自動車鋼板用高品質鋼材等を含む合計約55万トンが除外された。日本の鉄鋼製品の対米輸出は、すでにアンチ・ダンピング措置などの影響で98年700万トン超から2001年は200万トン強まで減少していることや、適用除外を受けてセーフガード対象品目が減ったことから、日本への直接の影響はさほど大きくない。
B 他国への主な影響
世界最大の鉄鋼輸入市場である米国の規制措置は国際的に大きな波紋を呼んだ。
(1)EUは、米国鉄鋼セーフガード措置による外国鉄鋼製品のEUへの流入の可能性を懸念し、3月28日、セーフガード調査を開始するとともに、同29日、鉄鋼輸入製品に係る暫定的セーフガード措置を発動(6ヶ月間)。9月2日、セーフガードの本発動についてWTOに通報した。
(2)中国は、5月21日、暫定的セーフガード措置を発表(6ヶ月間)。
(3)ハンガリーは、6月3日、暫定的セーフガード措置を発表(6ヶ月間)。
ポーランドも、8月14日、暫定的セーフガード措置を発表(200日間)。
チェコ共和国は、8月28日、セーフガード調査を開始。
(4)カナダは、3月25日、加国際貿易裁判所(CITT)が鉄鋼輸入製品に係るセーフガード調査を開始。
(5)チリは、4月12日、セーフガード調査を開始。7月16日、セーフガード措置を本発動。
2.中国の鉄鋼セーフガード
米国が発動した鉄鋼セーフガードを引き金に、自国市場から外国製の鉄鋼製品を締め出そうとする保護主義的な動きが全世界に広がってきた。中国も、米国市場を締め出された第三国の鉄鋼製品が流入するのを避けるため、2002年5月24日にセーフガード暫定措置を発動した。EU、ハンガリーに続いて中国が3番目となった。
@ 具体的な措置内容
「対象品目は、普通鋼厚中板、普通鋼薄板類、電磁鋼板、ステンレス鋼板、線材、棒鋼、普通鋼形鋼、継目無鋼管(シームレスパイプ)、半製品の9品目で品目ごとに設けられた割当量を超えた輸入に対し、7〜26%の特別関税を上乗せする。期間は180日間。
A 日本の対応
セーフガード暫定措置発動後の6月24日、WTO協定に基づく日中両国政府による二国間協議が開催された。中国側からは暫定セーフガード措置の説明があったのに対し、日本側からは同措置がWTO協定との整合上疑義がある旨を指摘し、措置の撤回を求めるとともに、日本の輸出姿勢について改めて説明し、中国で生産できないもの、供給不足のもの、国家プロジェクト向けのもの、合弁企業向けとして安定供給が必要なもの等については適用除外とするよう要請した。そして7月31日には中国政府に対し、日本の希望する除外品目リストの提示と説明が行われた。9月4〜5日、セーフガード調査に関する利害関係者による公聴会が北京で開かれた。公聴会において日本は、中国側の主張する「損害」、輸入との因果関係、暫定セーフガード発動がGATTおよびWTO協定の要件を満たさないこと、中国メーカーは日本からの特定の輸入品を供給できないこと等を指摘し、正式セーフガード措置の発動回避を求め、仮に発動する場合でも特定の製品を除外するよう求めた。」5
B セーフガード本発動
中国政府は2002年11月19日、暫定発動していた鉄鋼製品に対するセーフガード措置を発動することを発表し、20日正式発動に切り替えた。昨年12月のWTO加盟以来、同制限の正式発動は初めてとなる。対象品目は、自動車、家電やブリキの原料などに使われる冷延鋼板と、コンテナなどに使われる熱延鋼板、カラー鋼板、電磁鋼板、ステンレス鋼板で、暫定措置の9品目から5品目に削減された。自動車向けの亜鉛めっき鋼板や石油産業向けの継目無鋼管(シームレスパイプ)は発動対象から外された。経済成長に欠かせない高付加価値品目は輸入に頼らざるを得ないのが、中国鉄鋼業界の現実である。だが用途の広い冷延鋼板などが含まれており、日本の鉄鋼業界にも一定の影響が出そうだ。日本のほか韓国、ロシア、台湾などが影響を受ける。期間は5月の暫定発動時から3年間で、2005年5月23日まで。関税を全輸入品に上乗せする米国とは異なり、輸入割当枠を越えた部分に上乗せ関税を適用する。税率は1年目(2003年5月まで)が10.3〜23.2%。このうち冷延鋼板は22.4%、熱延鋼板は10.3%となった。2年目以降徐々に引下げ、3年目は8.7〜19.6%となる。
将来展望
今後中国経済はより一層市場経済化が進み、日本との貿易関係はさらに複雑になることが予想される。農産物については、にんにく、しょうが、玉ねぎなど中国からの輸入圧力にさらされているセーフガード予備軍は多い。さらに農産物だけでなく、繊維や家電、IT製品などの中国からの輸入増加が必死と見られ、セーフガードの対象はより広範囲になるだろう。特に繊維製品に関しては、中国からの輸入が急増しており、2001年2月26日に日本タオル工業組合連合会がタオルへの繊維セーフガード発動を要請した。この時は発動見送りに終わったが、タオル以上に衣料の輸入品シェアは高く1999年で79.7%と国内需要の約5分の4が輸入品で占められており、今後再びセーフガード発動が求められることも考えられる。2001年に中国がWTOに加盟したことにより、今後中国の繊維輸出はますます増大し、「繊維強国」となっていくことだろう。
かつて日本が欧米を追いかけ米国との貿易摩擦を経験したように、今度は中国が日本を追いかけアメリカの立場に日本が、日本の立場に中国が立って日中貿易摩擦が起きている。この問題はもはや避けられない。米国との摩擦の中で、日本政府や企業は対米戦略を作りあげてきたが、これまで中国に対してそのような視点を持っていなかった。今後は様々な産業で起こると予想される摩擦の中身をしっかりと見極め、それにどのように対応するかを考えていかなくてはならないと思う。セーフガードを発動すれば一時的に自国の産業を守ることができるが、根本的な問題の解決にはならない。しかも、農産物3品目のセーフガードに中国が対抗措置を取ったことで摩擦が泥沼化したように、相手国との関係が崩れ摩擦がより一層複雑になってしまうこともある。セーフガードはWTO協定で認められた権利であるとはいえ安易に頼るべきではない。日本は米国との摩擦の際、自動車やIT機器の現地生産を進展させると同時に、技術分野の共同開発などで「パートナー」の関係を築き上げることで、摩擦の激化を回避してきた。日中間においても両国が競い合うのではなくお互いに足りない部分を補い合い、補完的な関係になることがのぞましい。日中の貿易摩擦はこれからが本番と言える。今後も様々な問題にぶつかると思うが、摩擦を最小限に抑え、お互いに発展していくことができたらいいと思う。
参考文献
服部健治、「日中貿易摩擦の背景と対応」、『東亜』、第413号、2001年11月、p33〜40
http://www.global-eye.co.jp/home/bn/column/0106/c_0608.htm
http://www.pref.ibaraki.jp/shanghai/buisiness/repo0105_02.htm
http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/010813ntyu.htm
http://news.searchina.ne.jp/2001/0621/buisiness_0621_009.shtml
http://www.kobe-np.co.jp/shasetsu/011222ja9700.html
http://www.nca.or.jp/shinbun/20020101/syuchou004.html
http://www.mainichi.co.jp/eye/china/0205/23-2.html
http://mitsui.mgssi.com/briefing/
http://www.mainichi.co.jp/eye/shasetsu/200102/28-1.html
http://www.marubeni.co.jp/research/br_2001-08-03.html
00E2358 小林真知子
私がこのゼミを志望した理由は大学に入って中国語の授業や中国経済の授業を受けているうちに、中国に対する興味が湧いたからです。中国は隣の国であるにもかかわらず、ほとんど中国についての知識がありませんでした。春学期の中国経済論の授業では、中国がWTO加盟を控えていることなど、大きく進歩していることを知りました。そんなパワフルな中国についてゼミでもっと詳しく学んでみたいと思うようになりました。今、日中両国の間には教科書問題などいくつかの問題があり、中国に対する様々な意見や考えなどが飛び交っていますが私は現在の中国の真の姿を学びたいと思います。中国に対する知識は今はまだ少ししかありませんが、ゼミの仲間たちと共に楽しく色々な知識を身につけることができたらいいなと考えています。私の趣味はお菓子作りです。最近はバイトや学校で忙しくゆっくり時間をとることができないのであまり作っていませんが、暇があれば本を片手に様々なものに挑戦します。アップルパイやババロアやシュークリーム、マドレーヌ、タルトなど他にも色々なお菓子を作りました。アップルパイなどは生地を作るのが難しく、失敗することもありますが、焼きたてはサクッとしていてバターの香りとりんごの香りが口いっぱいに広がって最高においしいです。できたてのあのおいしさはお店で買ってきたものでは味わえない特別なおいしさです。高校時代、自分で作ったお菓子を食べ過ぎてかなり太ってしまったこともありました。作っている時も楽しいけれどできあがったものを家族や友達が「おいしい」と言ってうれしそうに食べてくれるのを見ると、次はもっとおいしいものを作ろうと深みにはまっていきます。まだまだ作ったことのないお菓子がたくさんあるのでこれからも色々作ってみたいと思っています。
私の今までの旅行体験の中で一番心に残っているのは友人と飛騨高山へ行ったことです。名古屋から電車に乗って高山へ近づくにつれて、窓の外の景色はだんだんと雪景色になっていきました。渥美半島では冬でもほとんど雪を見ることがないので、3月であるにもかかわらず多くの雪が残っているのに感動しました。旅館は高台にありそこから見下ろす雪景色もすばらしく、今でも鮮明に覚えています。ところが旅館に到着して、旅館のチケットと帰りの電車の切符を入れた袋を駅に忘れたことに気づきました。3人とも慌てふためいていると旅館の方が大変親切でわざわざ車で駅まで送ってくれたのです。人の心の温かさが身にしみました。こんな失敗も今ではいい思い出となっています。隣の県へのちょっとした旅でしたが自分たちの暮らす町とは違う部分がいくつもあって心に残るよい旅だったと思います。