2部 政策編

4章 WTO加盟後の中国の諸問題

『知的財産権とアンチダンピング』

 

                       00E2390 小塚 美香

 

はじめに

 中国が200112月、世界貿易機関(WTO)に加盟したことで対中投資は加速。中国経済が国際社会で存在感を強めている。国際社会を生き抜く上で今、重要なポイントであり、さまざまな問題を抱える知的財産権(用語解説1)、アンチダンピング(用語解説2)。これらに対する意識はWTO加盟に伴い高まりつつあるのだろうか。中国のこれらに関する現状、またこれからの動向、対策に目を向けてみた。

 

第1節       中国WTO加盟までの道のり [1]

 

86年

7.1

 

中国が正式にGATT締結国申請を提出。

94年

4.12

 

『世界貿易機関(WTO)設立協議』調印。

95年

6.3

 

中国がWTOのオブザーバーとなる。

96年

3.22

 

WTO中国加盟作業部会第1回正式会議開催。

97年

8.26

 

韓国とソウルで二国間合意。

 

10.26

 

江沢民主席が訪米、クリントン米大統領と共同声明を発表。

 

11.1

 

李鵬首相の訪日。日中両国による二国間談判が基本的に終結。

98年

6.17

 

江沢民主席がWTO加盟の3原則を提出。

 

4.6

 

朱鎔基首相が訪米。『中米農業協力協定』を調印。

 

5.8

 

ユーゴ中国大使館誤爆事件。WTO加盟談判中断。9月から再開。

 

11.15

 

中米の二国間談判が正式に終結。

00年

5.19

 

EUと合意。

01年

9.17

 

中国WTO加盟への議定書などが非公式批准。

 

11.10

 

中国加盟案が承認、12日に調印式。

 

12.11

 

国内批准、中国が正式にWTO加盟国に

 

第2節 WTO加盟の意味

  「WTOの加盟は新しいゲームのルールに加わったことを意味している。開放された経済の中で、貿易と競争は切っても切れない関係をもっている。貿易は資源の十分かつ効果的な利用を目標としているが、競争は市場という主体が同等の競争の機会を享有することを目標としている。WTO加盟後に守らなければならない諸原則、例えば、最恵国待遇の原則、内国民待遇の原則、透明度の原則、アンチダンピング・反補助の原則、知的財産権の保護など、いずれも競争の精神を具現したものである。中国のWTO加盟後、世界共通の市場ルールは一歩一歩と中国市場におけるゲームのルールとなりつつある。そういうことで、中国の競争法制も厳しい挑戦に直面するようになった。中国は経済体制の軌道転換の段階にあり、制度の変化によって、競争秩序は市場と行政という二重の妨害と影響を受けることになる。行政面の独占のほかに、価格協議行為や市場分割行為、ぐるになって入札をおこなう行為、強制的取引行為、業種協会が競争を制限する行為など、経済面の独占も明らかになる。また、市場開放の下で、強大な外国企業が次々と押し寄せてきて、これによる競争法制の問題も非常に目立つようになり、現状から見ると、中国の競争法の分野はまだブランク状態にあり、そのため中国の現行競争法律は、まだ遅れている状況にある。[2]

 

3節 知的財産権の侵害

WTO加盟後、中国が国際社会で行きぬくうえで、大きな問題の1つとなっているのが、知的財産権である。計画経済時代の、国が購入した技術は国全体のものという意識から、さまざまな外国技術が事実上共有財産のようになっている中国にとって、この問題は容易なものではない。

WTO加盟残後の中国政府の知的財産権面での意識向上はめざましい。商標法、特許法、著作権法等、主要な法律はすでに存在し、WTO協定との整合性を保つための改正も行われている。知的財産権に関する規範を強化するため、200010月には「全国偽造品取締協調小組」が国家質量技術監督局に設置され、大々的な反模倣品キャンペーンを繰り返し行うなど、取り締まりも強化されている。

 しかし、中央政府の意気込みを末端まで反映させられないのも、中国の実態である。末端の地方行政、司法、警察機関に根を張る地方保護主義が、法制度、政策の執行を阻んでいる。また企業に知的財産権問題を重要視させないビジネス環境が中国にはあり、WTO加盟後も模造品被害は拡大している。」[3]

 

1.DVD CD 問題

 「日本貿易振興会の調査などによると中国の模造品生産による日本企業の被害総額は推計で一千億円を上回る。だが知的財産権の侵害を嘆いているだけでは何も始まらない。

特許の塊とされるDVD(デジタル多用途ディスク)プレーヤーは、中国の100社以上の家電メーカーが特許料を払わないまま年間一千万台以上を生産。うち八百万台が米国市場などへ格安で輸出されてきた。」[4]「北米では中国製DVDのシェアが首位となっている。」[5]

 

1−1.中国DVDメーカーがソニーなどへ特許料

DVD関連の特許を持つソニー、パイオニア、オランダ・フィリップスの3社は中国のDVDメーカーが3社に対し、特許料を支払うことで合意した。約100社に上る中国DVDメーカーのうち、大手を中心に半数余りが特許料を支払うライセンス契約の締結に応じるとみられる。」[6]「中国メーカーが米国などに輸出した製品が対象。6月までの輸出分は1台当たり5ドル、7月以降の輸出分は35ドルをソニーなどが受け取る。すべてのメーカーが応じれば特許料は総額約20億円に上る見通し。中国国内に出荷した製品は年末まで特許料支払いを免除する。DVD関連特許は3グループに分かれて管理。」[7]「中国メーカーが特許料相当分を小売価格に上乗せすれば、製品価格が10%近く上がり、輸出には一定の歯止めがかかる。しかし、北米市場では中国製DVDは日本製より20%程度安く売られているため、シェアの変動は小さいと見られる。」[8]

1−2.東芝など日米7社特許を一括供与

DVD関連の特許では、日欧3社とは別の特許を持つ日立製作所、東芝など日米7社のグループも中国メーカー58社とのライセンス契約を」結んでいる。今回の同意によりDVD関連特許を持つ日米欧の大手メーカーはすべて主要中国メーカーから特許料を得られることになる。」[9]

「この日欧7社は、各社が持つ記録型DVD特許のライセンス一括供与を20031月上旬に始めると発表した。これまでDVDプレーヤーやDVDROMドライブなどの生産に必要な再生専用DVDの特許を共同管理しており、記録型でも一括管理する。

各社は、2002年春、「中国メーカーが必要な特許料を払わずDVDプレーヤーを低コスト生産していると」主張し特許の利用契約を結ぶように中国企業と交渉。国内販売分の特許料の一部免除など優遇条件も提示して契約にこぎつけた。DVDレコーダーでも特許料の未払い問題が起きる可能性はあるため、7社が協力して世界各国の企業に対する交渉力を高める。」[10]

 【東芝など日米7社のDVD特許の主な利用料】[11]

再生専用ハードウエア

DVDレコーダー、DVD-ROMドライブなど)

販売価格の4%または

1台当たり最低4ドル

記録型ハードウエア

DVDレコーダー、DVD記録ドラブなど)

販売価格の4%または

1台当たり最低6ドル

再生専用メディア

DVDROMディスクとDVDVideoディスクは1枚当たり6.5セント、DVDAudio7.5セント

DVD特許問題をめぐる主な動き】[12]

1997年 4月 ソニー、パイオニア、フィリップスのグループがDVD特許のライセンス供与開始

      10月 日立製作所や東芝など6社グループがライセンス供与を始める

1999年 11月 6社とCAIA(中国電子音響工業協会)が特許問題解決に向けた交渉開始

2002年 1月 6社が3月末に期限を設定し、中国電気メーカー約100社に特許契約を要求

      3月 ソニーが中国製DVDプレーヤーを輸入販売している米国企業を相手取り、米国で輸入販売の差し止めを提訴

      4月 ソニーなど3社が中国製DVDプレーヤー販売企業の親会社と特許利用契約を締結・6社がCAIAと特許問題の解決に向けた協力で合意

 

1−3.海賊版ソフト、摘発キャンペーン-----2750万枚廃棄、正規流通網整備

 「中国当局が、CDDVDなど音響・映像ソフトの違法コピーに対し、取り締まりを強化し、過去最大規模の摘発に乗り出す一方、合法ソフトの流通網の整備に着手。裁判所も知的財産権保護の姿勢を鮮明にしつつある。

 中国政府が始めた海賊版摘発キャンペーン初日の813日(2002)、メーン会場となった江蘇省南京市の音楽公会堂の前には、10万枚を超す海賊版ソフトが積み上げられた。中国で人気のある日本人歌手のCDや、子供向けテレビ番組、ドラマのDVDやビデオなど日本のソフトの海賊版も数多く含まれていた。この日は南京だけでなく北京や上海など全国50都市で、合計約2750万枚の海賊版ソフトを一斉に廃棄した。2001年に約1億枚の海賊版を押収した中国政府は、2002年摘発姿勢を一段と強化した。6月に延べ20万人を動員して約12万のCDショップなどを検査。1万以上の無免許店を摘発し、4300万枚超の海賊版や密輸品ソフトを押収した。

 このキャンペーンは、これまでの成果を踏まえた摘発強化を内外に印象付ける狙いがあり、14日には、2001年に改定した著作権法の細則を定めた条例を発表した。

 政府が海賊版追放に躍起になっている背景には、WTO加盟に伴い知的財産権保護の強化を国際的に約束したことがある。これまでの取り組みの効果が、いっこうに出ていないとの批判が世界各国で高まっているからである。中国の音楽ソフトの9割強が違法コピーで、海賊版の市場規模は4億ドルに達したという。

 中国で海賊版がはびこる原因の一つは流通にある。公式に音楽ソフトの輸入割当制度はないが、外国のCDを配給する代理店を厳しく管理する制度があり、海外から合法的に売ろうとしてもできない仕組みがある。このため文化省は、正規品を売るCDショップチェーンなどと協力、正規品の流通網の整備に着手した。司法面でも海賊版追放の姿勢は高まっている。」[13]

 【中国の主な著作権侵害、海賊版対策】[14]

1989

中国で初めて海賊版摘発に乗り出す

1991

中華人民共和国著作権法を施行

1994

国会が著作権侵害に関する刑罰を設ける・録音と録画製品の管理条例を発布

1995

知的所有権の税関保護条例を発布

1996

海賊版ソフトを上映していた5000余りの映画館を閉鎖

1996年−97

会遺族版1000万枚を押収し、海賊版ソフト販売店12000社を閉鎖

1997

刑法を改正し、知的所有権の侵害罪の条項を追加

1998

海賊版1400万枚あまりを押収

2001

海賊版約1億万枚を押収・WTO加盟に伴い著作権法を改正

 

2.コピー二輪車問題

 「日本自動車工業会(自工会)によると、中国では2001年、約1230万台の二輪車が製造されたが、このうち9割近くが商標や意匠を盗用したコピー二輪車と考えられるという。国内二輪車メーカーや自工会は、中国当局に摘発強化を訴える一方で、知的所有権紛争を調停する民間機関の設置を中国側に提案している。」[15]

2−1.ヤマハのバイク

2−1−1.台州ヤマハ事件_

 「中国の深刻な知的財産権侵害の現状を一躍有名にしたのは、オートバイ産業における<台州ヤマハ事件>である。

 2000年、浙江省台州市にある有名地場企業が石川県に「日本雅馬哈株式会社」というペーパーカンパニーを設立したうえで、その会社と自社の間で「日本YAMAHA株式会社」という商号を使用する許諾契約を締結した。そして浙江省の自社工場で作ったヤマハのデッドコピー(模倣)車にその商号をつけて堂々と発売したのである。

 ヤマハは商標法違反としてこの地場企業を提訴したが、当初は地元警察に調査を妨害されるなど、浙江省矢台州市の強い地方保護主義によりうやむやにされかかった。ヤマハはそれに対抗するため広く内外のメディアに訴え、同時に在北京日本国大使館等の協力を得て中国政府へのロビー活動を展開し、20013月に侵害工場を摘発することに成功した。」[16]

2−1−2. 賠償訴訟に勝訴

 「中国市場で日本メーカーのコピー二輪車が横行しているなかで、ヤマハ発動機が自社の商標を無許可で使用していた中国天津市のメーカーに勝訴した。賠償額は90万元(1400万円)で、日本メーカーの商標権侵害にかかわる訴訟では過去最高額。

 ヤマハが訴えていたのは、天津港田集団とその子会社4社。「YAMAHA」の商標を付けたバイクを許可なく製造、販売したとして、3000万元の損害賠償を求めて天津市高級人民法院に20015月、提訴していた。」[17]

 「判決では、賠償支払いのほか下記のことを港田集団に命じた。

(1) ヤマハ発の商標を違法使用している製品の生産・販売の停止

(2) 政府に届け出た製品目録のから「YAMAHA製」の記載を削除

(3) 謝罪広告の掲載」[18]

2−2.ホンダ、意匠権訴訟で敗訴

 「ホンダが中国で発売したスクーターのデザインが、先に意匠権を登録していた台湾メーカーのバイクと似ているかどうかをめぐって争われていた行政訴訟で、北京市第一中級人民法院(地裁に相当)は、ホンダの意匠権は認められないとする判決を下した。意匠権の出願時期が明暗を分けた。判決はホンダのデザインが先願意匠権を持つ台湾製に「類似」していると判断した。ホンダはライトやハンドルなど細部のデザインの違いが多数ある点を強調。しかし判決は、一般の消費者には見分けがつきにくいとしてホンダの請求を却下した。

 比較の対象となった台湾メーカーはかつてホンダが技術供与していた提携先の二輪車メーカーで9211月に中国で意匠権を出願。ホンダが出願したのは935月だった。

 中国では意匠権の類似を「一般の消費者が全体を観察した印象」で判断する。このため外観のデザインをそっくりまねて、ランプなど細部の形状を変えただけの模造品は「類似」と判断されることが多い。今回の判決でも、ホンダが主張する細部の違いは全体の印象に影響を与えないと判断したものとみられる。今後は、日本企業が中国の模造品を意匠権侵害で訴えやすくなるとの見方がある。」[19] 「年間に生産される二輪車の約9割が日本のコピー車といわれるが、ホンダのデザイン権が認められなかったことで、今後、逆にホンダの製品が模造品と訴えられる可能性もある。」[20]「しかし、デザインに独創性があれば知識産権局が意匠権の権利無効審判を乱発する可能性は少ない。今回はかつての技術提携先がホンダより先に意匠権を出願していたため、ホンダが苦しい立場に追い込まれた。」[21]

2−3.ヤマハは毅然、ホンダは柔軟

 「商標まで騙ったフェイクバイクはヤマハ事件以降急速に姿を消しているといわれているが、意匠権や特許権侵害の可能性の強いバイク自体がなくなったわけではない。摘発を逃れるために出荷方法を工夫するなど、年々巧妙になっている。ヤマハは、中国コピー問題対策で年間9000万円ほど使って対策を講じており、今後は認定が難しいとされる意匠権侵害について毅然とした姿勢で対応していくとしている。一方、コピーメーカーと手を組んで低コスト生産を進める動きも出ている。ホンダは2001年秋、点津市に新大洲本田摩托を設立したが、合併相手は海南新大洲摩托車。ホンダのコピーバイクで力をつけたとされる二輪車メーカーだ。「われわれは、中国で失敗した。」とホンダ二輪車事業担当者が振り返るよう、ホンダは安価なコピーバイクに押され、中国市場で思うように販売台数を増やすことができなかった。逆転の発想として生まれたのが、有力コピーメーカーの“取り込み”。この提携で、低コストで高品質のバイクをつくることに成功した。その成果のひとつが、20028月から日本で発売している50ccスクーター「トゥデイ」。10万円を切る価格ながら、「“ホンダ製”だから問題ない」という品質を実現。コピーメーカーに毅然とした態度でのぞむ一方、技術力を利用するという、したたかな戦略をみせつけている。」[22]

3.日本の知財戦略

 「日本は米国にならって、特許や意匠権などの知的財産権を取得した側を手厚く保護する「プロパテント政策(用語解説3)」の徹底を小泉内閣の目玉として取り組んでいる。だが、日本の意匠権の類似判断は、後発者の権利を過度に封じ込めないことを重視する「アンチパテント政策」を、今なお色濃く残しているのが実情だ。」[23]

「政府は200273日、企業秘密保護など具体的な政策を盛り込んだ知的財産戦略大綱をまとめた。知財戦略が求められるのは、モノ作りを軸にした日本経済の神話が崩れたため。安

価な労働力とハイテク武装した中国などアジア諸国の追い上げが原因。」[24]

 【知的財産戦略大綱の概要】[25]

1)遅くとも2003年の通常国会までに知的財産基本法案を提出

2)基本法案の内容

・知的財産の創造、保護、活用の循環拡大を国家目標に

・知財戦略本部を設置

・知財戦略計画を策定

(3) 財立国に向けた重点政策

・「世界特許」への取り組み強化

・「特許裁判所」機能を実質的に整備

・海賊版政策を強化

・企業秘密の保護を強化

・大学の「象牙の塔」からの脱皮

・知的財産の専門人材を育成

 

4.知的財産保護制度 構築へ

 「中国の模造品問題は、知的財産権意識の未発達という要因のほかに、経済体制の移行期の政府関与、技術進歩の停滞、膨大な生産能力と苛烈な競争、消費者の支持等の複雑なビジネス環境がもたらしたものである。知的財産権侵害に対する非難を政府にぶつけるだけでは問題解決の速度は速まらないだろう。

 オートバイ問題に対しては、業界団体である日本自動車工業会は、日本の型式認証制度や知的所有権侵害の判定例を紹介するなど、業界の健全な発展を促す制度づくりに友好的に関与しようと姿勢を見せている。このような協力的な取り組みを、長期的に続けることも必要だろう。」[26]

「中国政府に模造品の取り締まり強化を求めるのは当然だが、並行して日本政府も旧態依然とした特許政策の見直しを迫られている。」[27]

 

第4節        ダンピング問題

 WTO加盟に伴い外国企業の中国への進出も目覚しいものがある。中国国内の企業との競争も激しいものとなるであろう。発展の不充分な自由経済を保護するために、中国はWTOの基本原則に違反することなく、アンチダンピングなどの競争法制の仕事を推し進めなければなければならない。

1.中国、ダンピング調査----相互理解の契機に

 「中国が日本からの輸入化学品が不当に安く売られているとして、相次いでダンピング(不当廉売)調査を始めている。日本メーカーは国内需要を大きく上回る生産設備を抱え、輸出で工場の操業度を維持しているのが現状。供給不足で化学品の多くを海外からの輸入に頼る中国とは「共存共栄」の関係と考えていただけに、ダンピングの被害があったと判断されれば、国内市況にも弱材料となる。

 中国がダンピング調査中の品目は20023月末時点で石化や紙、鋼材の12品目。WTO加盟前後から急にふえている。うち日本製が対象とっているのは5品目で、このうち化学品は4品目を占め狙い打ちにされている。3月に塩ビ樹脂、5月にウレタン原料のトリレンジイソシアネート(TDI)が対象となった。

 中国の政府関係者は「企業からの申請を受け、WTOルールに沿って手続きをしている」と正当性を訴えたという。ただ日本の各社は「多くの化学製品では日本からの輸入なしに加工産業が立ち行かないはずだ」と首をかしげている。

 塩ビ樹脂の中国内需は年間約500万トンで、このうち200万トンが輸入だ。日本メーカーの輸出は50万〜60万トンだが、日系の樹脂加工メーカー向けに特定のグレード(品種)を供給しているところが多い。TDIにおいても中国は消費量の9割を日本などから輸入している。しかも樹脂は工業製品や雑貨に加工され、大半が米国などに輸出される。外貨獲得、雇用創出に役立っており、こうした状況から、化学業界では「中国はWTO加盟に伴う輸入攻勢から国内企業を守り、軟着陸させようとしているだけ。あまり神経質に考える必要はない。」との見方も出ている。

 中国側は各製品の調査開始から1年以内にダンピングの事実があったかどうかを認定する。「たとえクロとなっても、中国は加工貿易にかかわる樹脂に効率の関税をかけない」とみる人もいる。経産省の化学課長は「双方の溝が深いことが改めて浮き彫りになった」と総括。化学品で交流が皆無だった両国にとって、こうした事実がわかっただけでも大きな前進。相互理解を深めていく以外に、摩擦を回避する方法はないだろう。」[28]

 【日本の化学製品を対象とした中国のダンピング調査】[29]

対象製品

調査開始年月日

結果

日本からの年間輸出額(億円)

アクリル酸エステル

9912

クロ

ほぼゼロ

ポリスチレン樹脂

012

シロ

100

カプロラクタム

0112

調査中

80前後

無水フタル酸

023

調査中

20前後

スチレン・ブタジエン・ゴム

023

調査中

60前後

塩化ビニール樹脂

023

調査中

400500

トリレンジイソシアネート

025

調査中

200前後

200274日現在)

 

2.アンチダンピング調査件数、第1

 「WTOによると、世界各国・地域が2002年上半期にダンピング輸出の疑いで調査を始めたり、ダンピング課税を発動したりした対象国・地域は中国が首位だった。低い労働コストを武器に輸出攻勢をかける中国に各国は警戒感を強めている。

 ダンピング輸出の疑いで実施した調査は世界全体で104件。2001年下半期より82件減った。調査を受けた国・地域は39件。中国が16件で2001年下半期に続き首位だった。WTO未加盟のロシア、インド、インドネシアが各5件で続いた。

中国は米国から4件、インドから3件、欧州連合(EU)から2件の調査を受けた。調査の結果、不当な安値輸出で相手国の国内産業に損害を与えたと認定され、実際に関税引き上げなどアンチダンピング措置の発動を受けた件数でも、中国は、上半期全体の110件のうち19件で首位だった。」[30]アンチダンピング調査は米国をはじめとする先進国が多く発動している印象が強いが、実際は約6割に当たる63件が途上国による調査だった。 WTOは新多角的貿易交渉(新ラウンド)で、反ダンピング措置の乱発に歯止めをかけることを目的とした交渉を続けている。[31]

3.米国の対応

 「米政府に見直し勧告がなされたにもかかわらず、実施が遅れているため、WTO敗訴案件での米国の対応の鈍さは際立っている。米国はアンチダンピング措置などを中心に自国法がWTO違反と裁定を受ける案件が相次いでいる。米会議では法律が国際機関の一方的な判断で見直しを強要されるのはおかしいとの反発が強まっている。」[32]

 

*  「アンチダンピング措置の乱用は貿易を制限するとして、わが国はアンチダンピング協定の規律強化を求めてきた。中国においても新しい情勢に適応するため反独占、アンチダンピングに関する法律を早く作り上げることが要求されている。」[33]

 

最後に

 WTO加盟に伴い、急速に変化を遂げる中国経済。国際組織や外国企業の参入などグローバル化、また知的経済の到来といったさまざまな可能性が作り出されている。中国市場に訪れているチャンスは計り知れないものであるが、国際的ルールの中で多くのリスクが高まっているのも確かだ。今回取り上げた、知的財産権、アンチダンピングについてもまだまだ解決していかなければならない問題も多い。しかし、今進められつつあるこれらの問題への対策、対応を今後どのように発展させ、国際社会を生き抜くのか。抱える問題は容易なものではないが、このことをしっかり自覚し、今後もさまざまな問題に立ち向かっていくこととなるであろう。そしてより一層の発展を遂げるであろう中国に今後も注目したい。

 

 

用語解説

(用語解説1) 知的財産権

一般に、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4種の工業所有権に、さらに著作権、トレードシークレット、ノウハウなどを加えたものの総称。これらの権利の対象である発明、商標、著作物などは人間の知的生産物であり、物理的に支配できないという特徴を持っている。たとえば、発明のようなアイデア自体は物理的に支配できないので、知的財産権については各法律で特別の保護規定などが設けられている。知的所有権、無体財産権とも呼ばれる。特許技術、デザイン、映画、ゲームソフトなどの権利。 

(用語解説2) アンチダンピング

ダンピングとは、正常な価額(normal value)よりも低い価額での輸出、と規定されている。「正常な価額」は、輸出企業の本国での価格や生産費などから計算される。

(用語解説3) プロパテント政策

新たな「創造」、「権利設定」、「権利活用」からなる知的財産権に関する「知的創造サイクル」を強化・加速化することで、技術開発に要した投資の迅速かつ十分な回収を可能とし、知的財産権取引の活性化、創造型技術開発の促進、新規産業の創出、ひいては科学技術創造立国の実現を目指す政策。

 

 

参考

http://www.china.org.cn/japanese/  http://news.braina.com/2002/1009/enter_20021009_001_.html

http://www.sakei.co.jp/wm/html/202/08/0829_01.html

http://www.sankei.co.jp/news/020925/0925kei127.htm

WTO新ラウンド交渉メールマガジン第7号

大原盛樹『エコノミスト』「なぜ中国で知的財産侵害がなくならないのか」

日中経済協会『知財ニュース』北京事務所 2002

チャイナネット『北京大学法学院の劉剣文教授にインタビュー』2002/2/10

日本経済新聞

日経産業新聞

日本関税協会 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

00E2390 小塚 美香

 

 今後、日本経済においても多大な影響をあたえるであろう中国経済。1990年代に入ってから、目覚しい高度成長を遂げてきている中国経済が、これからどのような形で、国際的枠組みの中、どのように発展していくのかということをテーマにしているこのゼミで、中国のことを学びたいと思い志望しました。

 また、私は入門ゼミで李先生のゼミだったのですが、そのときの運営方針などからも、自主性を尊重し、自ら積極的に参加することで充実感を感じられると思ったことも志望した1つの理由です。

 そして、常に最新の動向などにも目を向けテーマにも組み込んでいくようなので、自然と興味や関心がもて、楽しんで取り組んでいけると思ったからです。

 私の趣味はスポーツをすることです。といっても最近は思うように体を動かすことが出来ていないのですが、高校生のころはずっと、バスケットボールをしていました。バスケットボールはチームプレーなので、もちろん自分自身がゴールを決めた時はうれしいのですが、上手くパスがまわったりして、決まったゴールは最高です。

 また、冬は、スキーに行くのが楽しみです。でも今は、まだ1度しかやったことがないのですが、スノーボードの方に興味があります。スポーツ以外には、ピアノを弾いたり、映画を見るのも好きです。

 次に旅行体験ですが、今年の夏休みには友達と2人で北海道旅行に行きました。道南地区をまわったのですが、まず初日から函館の夜景を見に行きました。9月のはじめに行ったのですが、夜はすでに少し肌寒かったです。そしてガイドさんの話ではその日は1週間ぶりくらいに晴れたらしく、そんな中で見た夜景は本当に星屑をちりばめたように綺麗でした。

 その他には海鮮市場で新鮮な魚貝類の買いの物を楽しんだり、昭和新山や富良野のフラワーパークにも行きました。ラベンダーで有名な地ですが、少し時期が遅かったので一面のラベンダー畑を見ることは見ることは出来ませんでしたが、それに代わる色とりどりの花々が咲き誇っていました。小樽では運河や有名なガラス細工やオルゴールなどを見ました。ガラス細工はとても繊細で、彩りも美しく、眺めているだけでもとても楽しい気分になりました。

 この北海道旅行は、自然を感じながら、たくさんの所を回り、北海道の色々な面に触れることが出来、本当に楽しかったです。まだ海外には行ったことがないのですが、今度の春休みに旅行ではないのですが、大学の海外セミナーに参加することになっています。他の国の生活や風習、文化に触れ、視野を広げ、自分自身にとって、プラスの体験となるように、何事にも積極的にチャレンジして、がんばりたいと思っています。



[1] 日中経済協会『知財ニュース』北京事務所 2002より

[2] http://www.china.org.cn/japanese/

チャイナネット『北京大学法学院の劉剣文教授にインタビュー』2002/2/10 参考

[3] 大原盛樹『エコノミスト』「なぜ中国で知的財産侵害がなくならないのか」p.34 

2002 参考

[4] 日本経済新聞 朝刊 2002/6/28 「日本企業100社調査」 参考

[5] http://news.braina.com/2002/1009/enter_20021009_001_.html 引用

[6] http://news.braina.com/2002/1009/enter_20021009_001_.html 参考

[7] 日本経済新聞 朝刊 2002/10/9 DVDプレーヤー、ソニーなど3社も中国企業から特許料」引用

[8] http://news.braina.com/2002/1009/enter_20021009_001_.html  参考

[9] http://news.braina.com/2002/1009/enter_20021009_001_.html  引用

[10] 日本経済新聞 2002/11/20 「東芝など日米7社、記録型DVD、特許を一括供与」 引用

[11] 日本経済新聞 2002/11/20 「東芝など日米7社、記録型DVD、特許を一括供与」 参考

[12] 日本経済新聞 2002/5/2 「中国製DVDの特許未払い問題交渉へ」 参考

[13] 日本経済新聞 2002/8/15 「海賊版ソフトを絶て、当局、摘発キャンペーン」参考

[14] 日本経済新聞 2002/8/15 「海賊版ソフトを絶て、当局、摘発キャンペーン」参考

[15] http://www.sakei.co.jp/wm/html/202/08/0829_01.html 参考

[16] 大原盛樹『エコノミスト』「なぜ中国で知的財産侵害がなくならないのか」p.34 

2002 引用 

[17] http://www.sakei.co.jp/wm/html/202/08/0829_01.html 参考

[18] 日本経済新聞 朝刊 2002/8/14 「模造二輪車、商標権訴訟、ヤマハ発が勝訴」 参考

[19] 日経産業新聞 2002/9/27 「中国の二輪車意匠権訴訟、ホンダの請求却下」 引用

[20] http://www.sankei.co.jp/news/020925/0925kei127.htm参考

[21] 日経産業新聞 2002/9/27 「中国の二輪車意匠権訴訟、ホンダの請求却下」 引用

[22] http://www.sakei.co.jp/wm/html/202/08/0829_01.html 参考

[23] 日本経済新聞 朝刊 2002/9/30 「日中ビジネス新潮流国交正常化30年(2)」 引用

[24] 日本経済新聞 朝刊 2002/7/7 「知的財産は成長の柱」 参考

[25] 日本経済新聞 朝刊 2002/6/17 「知的財産戦略会議が初の大綱」参考

[26] 大原盛樹『エコノミスト』「なぜ中国で知的財産侵害がなくならないのか」p.35 

2002 参考

[27] 日本経済新聞 朝刊 2002/9/30 「日中ビジネス新潮流国交正常化30年(2)」 引用

[28] 日本経済新聞 朝刊 2002/4/26 「中国がダンピング調査」

 日経産業新聞 2002/7/4 「中国、化学品でダンピング調査」 参考

[29] 日経産業新聞 2002/7/4 「中国、化学品でダンピング調査」 参考

[30] 日本経済新聞 朝刊 2002/10/26 WTOまとめ、中国の輸出に警戒感」参考

[31] http://www3.nikkei.co.jp/kensaku/kekka.cfm?id=2002102401778

[32] 日本経済新聞 夕刊 2002/11/12 「標的にされる日本企業、中国でLP訴訟続発」 参考

[33] チャイナネット『北京大学法学院の劉剣文教授にインタビュー』2002/2/10

  日本関税協会 WTO新ラウンド交渉メールマガジン第7号        参考