シネ・クラブ ブログ

 

20065、今月のテーマ:寄宿生活。

 

今回は、私たちの「映写室」の完成を祝して、2004年に大変な人気を博したクリストフ・バラティエの『コーラス』でシネ・クラブを始めることにいたします。続いて、この作品の正当な評価を、元の作品である1945年封切りのジャン・ドレヴィル『春の凱歌』との比較により考えたいと思います。最後に、この種の映画の傑作といってよいルイ・マルの『さよなら子供たち』でシリーズを終わりにします。

 

 

512日(金)、1640分、21教室(仏文研究室)

 

『コーラス』 2004) 監督 クリストフ・バラティエ 出演 ジェラール・ジュニョ、フランソワ・ベルレアン、ジャック・ペラン 95分/カラー フランス語版 日本語字幕付。

 

思春期の反抗的な子供たちを合唱団に入れ、彼らを「木の十字架少年合唱団」に変えてしまうというやり方は、ZEP(教育優先地域:教育困難校の集中する地域)の先生たちがたぶん考え付かなかったやり方だ。ところがクリストフ・バラティエにとっては、この方法は奇跡を起こす。『コーラス』は、1945年の作品であるジャン・ドレヴィルの『春の凱歌』の焼き直しだ。1950年、何ヶ月も前から失業中の善良な音楽教師(ジェラール・ジュニョ)は「全寮制の矯正教育校」で舎監の職を引き受けることになる。学校は、残忍で反動的な男(フランソワ・ベルレアン)に率いられている。音楽は人心を多少ともなごめるというわけで、善良な舎監は小さな怪物たちを自分の側につけることに成功する。当然のことながら子供たちの中で一番反抗的な生徒が一番才能に恵まれていることが判明するわけだが、その男が、何年も後になって、恩師の日記を手に入れることになる。この映画のプロデューサーであるジャック・ペランは、この男の声の役で登場し、オフの声で日記の断片を読んでいる。気がつかなかった観客のために言えば、それは最終シーンで、男が目に涙をためて日記を閉じるところだ。

イザベル・レニエ(ル・モンド

 

519日(金)、1640分、21C教室(仏文研究室)

 

『春の凱歌』 1945) 監督 ジャン・ドレヴィル 出演 ノエル・ノエル、ミシュリーヌ・フランセ、ジョルジュ・ビスコ 90分/白黒 フランス語版 字幕なし。

 

内気で失業中の若者クレマン・マチュー(ノエル・ノエル)はルピック街の乳製品商の娘マルチーヌ(ミシュリーヌ・フランセ)に恋をしているが、結婚には反対されている。クレマンは、友達の露天商レモン(ジョルジュ・ビスコ)のおかげで、ラ・デペッシュ新聞社に使い走りの職を見つけ、「ナイチンゲールの籠」と題する未刊の小説を連載することに成功する。小説の中で、クレマンは、オーボンヌ・シュル・ロワールにある孤児、浮浪児、不良少年らの矯正教育施設での舎監の体験を語る。

所長であるラシャン氏(ルネ・ブランカール)は抑圧的なやり方で教育を行っていた。マルチーヌの母親はこの新聞小説を読むことになる。ジャン・ドレヴィルは、1944420日、ノエル・ノエルとルネ・ウィラーのシナリオに基づいて撮影をはじめたが、作品は1945年になって初めて一般に公開された。彼は、信念およびヴィッシー政府の道徳的秩序に基づいて、少年期の問題を真正面から取り上げるということはしないで、やさしさ、理解、思いやりによる矯正教育といった戦前のフランス映画の一主題を再び取り上げた。「回想」による構成のために、クレマンという人物はこの感化院の証言者となっている。そこでは正当性に欠ける、行き過ぎた規律が大きな反発を招いていた。

舎監は初めのうちこそ教室で騒がれるが、歌唱指導がその善良さと結びついて子供たちに普通の生活を取り戻させることになる。ジャン・ドレヴィルはその作品にある種の詩情を与えることに成功した。また、かの有名な「木の十字架少年合唱団」を率いることによって当時の観客に大きな喜びを与えることにも成功した。この芝居は多少ともジェラール・ジュニョ主演クリストフ・バラティエ監督の『コーラス』のモデルをして役立ち、その興行の成功は一つの社会現象にもなった。

ジャック・シクリエ(ル・モンド

 

526日(金)、1640分、21C教室(仏文研究室)

 

『さよなら子供たち』1987)監督 ルイ・マル 出演 フィリップ=モリエ・ジュヌー、ガスパール・マネス、ラファエル・フェジト 103分/カラー フランス語版 日本語字幕付。

 

1943年から1944年にかけての冬、占領下のフランスが舞台である。2学期の初め、パリ近郊の中学で一人の寄宿生が新入生と親交を結ぶ。彼は、その子が身分を偽って潜伏しているユダヤ人の子供であることを発見する。10年以上の歳月をアメリカで過した後、フランスに戻って来たルイ・マルは、遂に、ヴィッシー政権の悲劇、反ユダヤ主義、密告、ドイツ軍の存在といったものと結びついた個人的な思い出を、敢えてスクリーンの上に持ち出したのだ。演出の古典的形式、時代考証の完璧さ、心理的写実主義など、この人間的、感動的、そして善悪二元論を離れた作品は、1974年の『ルシアンの青春』の持つ曖昧さを払拭している。当然のことながら作家の成熟を示す作品となった『さよなら子供たち』は、1987年のヴェネチア映画祭金獅子賞、1987年のルイ・デリュック賞、7つのセザール賞を受賞した。

ジャック・シクリエ(ル・モンド

 

 

入場無料。問い合わせ先:中尾充良(内線7807)。

http://taweb.aichi-u.ac.jp/futubun/