曽幾 Zeng Ji (北宋~南宋)
三衢道中 梅子黄時日日晴 小渓泛尽却山行 緑陰不減来時路 添得黄鸝四五声 添え得たり 〔詩形〕七言絶句 〔韻字〕晴、行、声(下平声・庚韻) ○三衢 山名。 ○梅子黄時 梅の実が黄色く色づく時期。春の終わりから夏の初めにかけての梅雨期をさす。この時期江南地方はうっとうしい天気が続き、さわやかに晴れることはめったにない。 ○小渓 小さな谷川。 ○泛尽 川に舟をうかべて終点まで行く。 ○却 また。再び。 ○山行 山道を歩いて行く。 ○緑陰 緑の小蔭。 ○黄鸝 鳥の名。コウライウグイス。 ○四五声 鳥の鳴き声があちこちから聞こえることをいう。 |
《三衢山の道中》
梅の実が黄色に色づく梅雨の頃だというのに、毎日毎日晴天が続き、
小さな谷川に舟を浮かべて終点まで来ると、今度は山道を歩いて行く。
緑の木蔭は来た時の道そのままに生い茂っており、
今ではそこかしこから聞こえるコウライウグイスの鳴き声が、新しく興趣を添えている。
この軽快な旅の詩は、中国では『千家詩』にも収録され、親しまれています。