文字サイズ

ホーム > 資料

PLEND記事

片倉和人さん(愛知大学・准教授):農業経済論、協同組合論、ワークショップ演習等を担当

片倉先生は、地域政策学部で教鞭をとりながら、キャンパス内で小さな畑を学生たちと一緒に耕し、また地元・長野県岡谷市ではNPO法人「農と人とくらし研究センター」を主宰しています。そんなユニークな片倉先生からお話をうかがいました。

(1)学生地域貢献事業への評価について

いい意味で驚きました。私が担当している「ローカルボイス」は、新たな商品開発やプチブランド戦略などを通して、農家と消費者をつなげる活動を行っています。商品だけではなく情報もセットにしなければ、ブランドにはなりえません。しかし、その情報を商品に付加することは農家の人にはできないことなのです。地域貢献事業は、その役目を行っています。現代では、実際に体を使って身に着けるリアリティが欠けていますが、地域貢献団体にはこのリアリティがあり、そこを高く評価しています。

(2)今後の学生地域貢献事業への期待について

学生にとって、本で学ぶことはとても重要です。それと同じくらい重要なことは、体験することです。本で学ぶことは、言葉で知るということであり、地域貢献事業は知識を体で知るという重要な活動です。そこでは成功だけではなく、失敗もたくさんするでしょう。たくさん失敗することも、重要な学びです。大学を出て社会人になったら、失敗を許されないことが増えていきます。大学は、最後の失敗が許される場所です。学生には、地域貢献事業でたくさん失敗をしてほしいです。

(3)地域連携・地域貢献に対する思いや考え

基本的に、地域貢献の活動は自身のためにやるものです。
若い時は、ボランティアに限らず、自らが行ったいろいろな経験を溜め込むことが、最終的に自分の経験値となります。ですから、今の学生の時期に、さまざまなことにチャレンジする姿勢は大切です。
実際に社会に貢献する、社会に尽くせる人間というのは、自分のことがちゃんとできるようになった人、つまり一人前になって一人で立てる人のことです。そうでないと、人を助けることはできません。地域貢献の活動とは、そうなるために、自分自身が成長していくためにやっていることだと思います。
たとえば、農業に関係したことで言えば、若者がこうした活動で外からコミュニティに入ってくると、中の人たち、農業の場合はお年寄りの方々が元気になるということがあります。つまり、学生という存在自体に意味があるということです。外に出て実際に活動を行うことが、気付かない間に周りに良い影響を与えているのです。したがって、学生には地域貢献事業に積極的に取り組んでほしいと思います。

(4)ご自身の研究・教育と地域連携、地域貢献との関わり

地元である長野県の岡谷でいろいろな活動を行っています。10年前に筑波にある研究所をやめて、地元の岡谷に帰って地域づくりに関わっています。具体的には、荒廃農地を開墾して作物を作ること、ヤギを飼うこと、棚田づくり、小さな直売所を立ち上げること、加工品製造(例えば桑の実ジャム)とその販売などを行っています。他にも子どもたちと田んぼを耕す活動を行ったり、障がい者の方への福祉活動も行ったりと、こうした活動を行うNPOの代表理事を10年続けています。
自分のことは自分では研究できません。活動は、研究するためでなくて地域の生活改善が目的です。以前は自分自身で活動しながら研究もできると思っていましたが、実際活動している最中は活動がメインになってしまいました。何十年かたって振り返ってみたら客観的に物事を捉えられるかもしれません。
また、かつて3年間フィリピンでも活動を行いました。実際には水道を敷設したり、共同トイレをつくったり、人工的な漁礁をつくったり、マングローブを植える漁業協同組合をつくったり、農村の生活改善活動を行いました。村の人たちに計画を作成してもらい、ワークショップを行うことを通して、コミュニケーションの手段を学びました。自己表現は言葉だけではありません。「ワークショップ演習」ではそんなことも教えています。
私にとっては、大学の教員が自分の全てではなく一部です。

〔文責:四林奈緒(地域政策学部3年)〕

ページ
トップ