駒木ゼミ卒業論文要旨

2016年度提出分 (5名・50音順)

太田皓也:豊橋市におけるマンションの立地動向

 2002年に居住機能や医療・福祉・商業,公共交通等のさまざまな都市機能を誘導する都市再生特別措置法が公布され,商業地,行政サービス,生活上必要な機能を一定範囲に集め,効率的な生活・行政を目指すコンパクトシティ政策が全国的に注目されるようになった。都市機能が中心市街地に回帰すれば人口の増加が予想され,そうした需要の高まりをみこして中心市街地にマンションが建設され始めた。しかし,多くの中核都市では,歩行者通行量の増加は見られるものの,中心市街地の賑わいは取り戻されておらず,シャッター通りも増加していく一方だった。それにもかかわらず,依然として中心市街地には多くのマンション建設が行われている。そこで本研究では中核都市に立地したマンションを対象とし,建設前とその後の地価や人口に与える影響がどの程度あるのか,主に中心市街地を対象として分析を行った。
 第I章では,中核都市における人口動態に関する問題提起を行った。第II章では,愛知県の豊橋市,岡崎市,豊田市,一宮市を対象にして人口分布を検討した。分析にあたってはGISを用い,500mメッシュ人口と人口集中地区 に注目した。第III章では,豊橋市を事例とし,中心市街地の人口動態,マンションが立地することによって周囲に与えた影響を地価と人口の両面から分析した。第IV章では,マンションの立地場所特性を周辺土地利用から算出した。そして,その結果をクラスター分析することによってグループ分けを行い,各グループのマンションの立地特性と路線価への影響を分析した。第V章は,第II章と第III章の結果をまとめ,マンション建設から見た中心市街地における人口,地価への影響を考察し,第IV章の結果を踏まえ,今後,マンションの立地から中核都市の再生を成功に導くためのプロセスを考察した。
 愛知県の豊橋市,岡崎市,豊田市,一宮市の人口分布と人口集中地域の分析を行った。結果,人口分布はどの市も中心市街地だけでなく郊外にも増加しており,人口集中地区の人口密度は低下していた。多様な世代やライフスタイルに応じた住宅供給が図られているが,15歳から64歳の人口流出により全体での人口増加には至っていないことがわかった。次に,豊橋市を対象地域として,中心市街地の校区別人口を検討した結果,15歳から64歳の人口が減少していることが分かった。さらに,豊橋市の6階立て以上のマンションに焦点を当てて周辺の土地利用と路線価を分析した結果,周辺の土地利用において建物用地が卓越する場所に建設されており,路線価,建設前後でそれほど変化がなかった。以上のことから中心市街地に多くのマンションが建設されているが,路線価への影響はみられないことがわかった。


杉村亜紀:テーマパーク閉園後の跡地利用に関する研究

 国内のレジャー施設需要は少子高齢化や消費者レジャー需要の多様化により従来型のテーマパークの運営は厳しくなっており,集客力がないために閉鎖せざるを得ない一部のテーマパークは今後も増加していくと予想される。テーマパーク跡地が利用されず廃墟として放置されると,治安や景観が悪化する原因になりえる。そのため,閉鎖後のテーマパークの有効活用を考える必要がある。テーマパークは「テーマ」というその特性から,遊園地と比べて消費志向が反映されやすく,閉鎖のリスクが大きいと考えられる。そこで本研究では,テーマパークを対象に,立地条件から閉鎖後の跡地利用について分析し,課題抽出を行った。
 研究方法および手順は,以下のとおりである。第I章では,論文目的と問題の所在を示し,先行研究を提示するとともに本研究の位置づけを行った。第II章では,テーマパークの定義,歴史的背景,経営の現状からテーマパークの概要を説明した。第III章では,閉鎖原因(経営方針,立地条件,不祥事,その他)によってテーマパークを分類し,GISによる立地環境分析の結果をもとに,閉鎖原因と跡地利用との関連性を明らかにした。第IV章では,跡地利用の成功例と失敗例として個別事例をそれぞれ取り上げ,跡地利用の成功に必要な条件を明らかにした。第V章では,以上の結果を踏まえて跡地利用の条件および課題抽出を行い,第Y章では本稿のまとめを行った。
 分析結果より,跡地利用されやすい立地は,周辺人口が多い場所や交通アクセスが良い場所であることであった。そして,行政からの支援が閉園後から跡地利用へスムーズにつなげるための重要な役割を果たすが,その開発意欲は立地によって左右されることが明らかとなった。さらに,地権者によってはテーマパーク以外の跡地利用を選択しづらく,廃墟となってしまうケースも見られた。このことから,跡地利用には,行政からの支援,地権者の意志判断,立地条件の3つが重要な要素であると言える。そして跡地利用は,資金援助や周辺の整備等を経営者,地権者,行政それぞれが補い合うことで跡地利用に踏み出しやすくなり,その選択肢も増え,より理想的な跡地利用が行われていくと考えられる。今後の課題として,経営者,地権者,行政が協力しやすい体制を整える必要が挙げられる。本研究の限界として,「閉鎖原因」は多岐にわたり,その分析は本稿の範疇から外れていることが挙げられる。そのため,「跡地利用」分析に加えて「閉鎖原因」の分析に焦点を当てることが今後の課題である。


須田采奈:成長する地方銀行と顧客サービスの検討―大垣共立銀行を事例として

 本稿は大垣共立銀行を事例として,現在の地方銀行に求められていることと成長できる地方銀行の顧客サービスに注目し,検討していく。分析では大垣共立銀行の国内の全店舗を対象とし,顧客サービスの整理とともに,地理情報システムにより実施している店舗サービスと立地特性との関係について分析していく。これらの分析結果を通じて今後の地方銀行の課題をについて考察を行った。
 第I章では,地方銀行の現状について触れ,地方銀行と指定金融機関の関係性について述べるとともに,本研究の目的・方法を示した。第II章では,本稿で題材とする大垣共立銀行の概要を示し,実施しているサービスを分類ごとに整理した。また,十六銀行を比較しながら大垣共立銀行の業績について述べた。第III章では,大垣共立銀行の国内全店舗の地理的特徴を地理情報システムにより分析した。大垣共立銀行の実施サービスに基づき,店舗の立地特性を分析した。また,店舗から最も近い駅までの距離と商圏人口の平均を基準とし,分類し,その立地特徴を分析した。第IV章では,第I章〜第III章で述べたことを踏まえ大垣共立銀行が成長できた要因と,今後の地方銀行の課題について考察した。第V章では本研究の課題を提示した。
 以上から,大垣共立銀行は人口も多くアクセスが良い都市ほど充実したサービスを提供しており,人口が少なくアクセスが悪い地方には都市よりは少ないサービスを提供しているこという立地戦略が明らかになった。すなわち,店舗の立地によりサービス内容を変えることで,無駄なコストを抑え効率よく店舗を運営していると考えられる。つまり,大垣共立銀行は新規性のあるサービスメニューの実施により話題性を出し,立地特性に基づいてサービスの提供を支えており,この2つの両輪で経営することが成長する銀行の強みなのである。金融業は,他の業種と異なり他行との差別化が図りづらい。顧客満足度はサービスにより決まるため,その内容でオリジナリティを出しながら業界内での優位性を出していく必要がある。これらのことから,成長できる地方銀行には「銀行業+α」が重要になると考えられる。そのため,いかにまだどこの銀行も着手していない新しく魅力的なサービスを提供できるかが,成長するために重要であることが指摘できた。


吉田匠吾:大垣駅前の行政・民間による再開発事業―駅北駅南はどう変わるか

 今や,再開発事業は日本全国各地で行われており,市町村がより活発化し,生活が便利になることは喜ばしいことだが,その陰になっている既存の店舗があること忘れてはならない。昔からその土地の経済を支え,まちとともに時間を過ごしてきた重要な店も多い。そうしたなかで大垣駅周辺も盛んに再開発が行われているが,既存の駅前商店街はどうなっていくのか,今後大垣駅周辺はどう変わっていくのか。大垣市の中心といっても過言ではない駅前の変化・状況を研究することでこれからの大垣市のあり方が見えてくるであろう。そこで,駅周辺を調査地域として,駅北と駅南の開発の違いや,つながりなどを考察し,北と南の共存の仕方について検討していくことを目的とする。
 I章では,研究の背景・目的・概要を説明し,II章では,大垣駅周辺の再開発の状況を整理した。III章では,現在開発が終わっている部分の中で既存の商店街などに来客数や売り上げの影響があったのかを分析した。IV章では,再開発の規模や期間をなどの概要を説明し,今後大垣駅周辺がどのようになっていくかを考え,V章では,これまで研究してきたことをもとに,大垣駅の駅北と駅南がともに発展していくことができるのかを結論づけた。調査をするにあたっては商店街の方への聞き取りや,大垣市役所に訪問しての聞き取りも行った。
 その結果,駅北の再開発は南の開発に比べて規模が全く違うが,それは駅北だけを都心化させようとしているのではなく,北の活性化を通じて古くからある駅の南も一体となって活性化していけばいいのではないかと結論づけた。まちの一部だけが潤うのではなく,まち全体が一体となって栄えていくことが既存の商店街を守るためにも必要なことである。それによって,商店街の衰退を抑えることが出来るかは難しい面もあるが,奥の細道でも有名な大垣市が文化の面でも経済の面でもほかの岐阜県の市町村,あるいは全国の市町村にも負けないような都市づくりができることを期待したい。