駒木ゼミ卒業論文要旨

2015年度提出分 (12名・50音順)

青山将也:地域の"崩壊"とは何か―因子比較から見える地域崩壊の脅威性の抽出―

 平成19年度国土交通省調査と日本創成会議の人口推計に拠り,2040年に自治体の約半数が消滅する可能性があると公表された。然し,地域崩壊因子が都市部への人口流出のみであるとは限らない。そこで本研究では,地域崩壊因子の脅威性について改めて検討するため,地域崩壊の因子各種に対応した事例を基に,その地域に与える影響力の差異を明らかにすると共に,特に避けなければならない因子は何かを明瞭化する事を目的とした。特に災害について採り上げ,その中でも比較対象として四つの災害について採り上げた。又,地域崩壊因子への対策の必要性について明示する事も目的とした。
 本稿の研究手順は以下の通りである。序章では,地域崩壊因子の定義と研究の目的・手順について解説した。第II章では,地域崩壊因子の種類とその随伴事象について採り上げ,各因子の特徴について解説した。1節では,地域崩壊因子の系統分類を行い,地域崩壊因子それぞれの概要を解説した。2節では,地域崩壊因子の代表例である災害の中で,地震・津波災害,原発事故,火山災害,豪雨災害の特徴について解説した。第III章では,第II章2節にて紹介された四つの災害について採り上げ,それぞれの事例の人口動態に基づいて分析した。1節では,地震・津波災害の事例として東日本大震災の東北地方太平洋沖地震について採り上げた。2節では,原発事故の事例として福島第一原子力発電所事故について採り上げた。3節では,火山災害の事例として雲仙普賢岳噴火について採り上げた。4節では,豪雨災害の事例として東海豪雨について採り上げた。第IV章では,第III章の四つの災害の人口動態の分析結果に基づいて比較を行い,共通点と相違点を整理した。第V章では,第II章から第IV章から得られた知見に基づいて,地域崩壊因子への対策の必要性について結論を述べた。
 四つの災害の人口動態を総合的に比較した結果,影響力に差異は見られたものの,転入者数の減少と転出者数の増加は明確に各々から散見された。その中でも,原発事故の影響力が一際大きく,近年に起こった災害の中で特に避けなければいけない地域崩壊因子は,原発事故であった。このような結果になった要因として,原発事故が人為災害である且つ対策が難しい有害物質が災害の主体であったためであろう。人口動態の変化は,災害の内容に拠って左右されると言える。地域崩壊因子は,今日でも世界各地で発生し,人間社会と常に隣り合わせに存在するため,地域崩壊因子への対策意識を常に持続させる必要がある。そのためには,日頃の避難訓練等は勿論であるが,過去の教訓を学び,後世に語り継いでいく事も重要であると言える。


石原宏亮:音楽のイベントが及ぼす飲食店への影響―愛知県のジャズのイベントを事例として―

 近年,地域の活性化を目的とした様々なイベントが行われている。中には,音楽で地域の活性化を図るイベントも存在する。様々なジャンルの音楽がある中,特にジャズのイベントに注目したい。ジャズは他のジャンルと異なり,曲自体を知らなくても曲の雰囲気や演奏者の感情を伝達しやすいという利点がある。また,学校の行事やラジオ,テレビ番組のBGMとして使用されているため,幅広い年齢層が楽しめるジャンルであることも利点である。本来,イベントを行うにはスポンサーや多くのスタッフの支援が必要とされる。しかし,中にはスポンサーを付けず,その土地及び近辺に住んでいる人々だけで行うイベントも存在する。そのひとつに,愛知県豊橋市で行われている豊橋ジャズ祭というイベントがある。スポンサーやスタッフの無い中,どのような経緯で実現に至り,どのような方法で運営しているのか。そこで,本研究は豊橋ジャズ祭を他のイベントと比較しながら分析・考察し,このイベントが行われることによって,地域をはじめ,参加者や演奏の舞台となる飲食店にどういった影響を及ぼしているかを明らかにすることを目的とした。
 研究手順は以下のとおりである。第I章では,豊橋ジャズ祭が及ぼす地域や人,飲食店への影響を分析するため,豊橋ジャズ祭とその他のイベントを比較し,本研究の意義を述べた。第II章では,豊橋ジャズ祭の概要や実現までの経緯,飲食店が演奏の舞台となる条件を,主催者の1人へのヒヤリング調査の結果をもとに掲示した。第III章では,豊橋ジャズ祭の舞台となる飲食店が,普段どのような経営を行っているか,また,豊橋ジャズ祭にはどのような形で貢献しているかを分析した。第IV章では,2015年12月に行われた第6回豊橋ジャズ祭での参与観察を行い,舞台となった飲食店の経営者へヒヤリング調査を行った。
 研究の結果,イベントを実現するには主催者と協力者が共通の理解をもつことが最も重要だということが明らかとなった。また,普段の経営と比較して,豊橋ジャズ祭の期間中の飲食店の集客数や売上が向上していることが明らかとなった。更に,出演するバンドは豊橋市外からも参加していること,そしてスタッフは豊橋市のジャズ愛好家の人々が無報酬で行っているということも示された。このことから,豊橋ジャズ祭は飲食店の集客数や売上の向上だけではなく,イベントを成功させようという人々の意志にまで影響しているといえる。


内田光亮:イベント参加に伴う地元店舗の経営展開と地域への影響

 地域活性化の有力な手段の一つとして,イベントが挙げられる。イベントは多くの人を集める効果が期待できるためである。これについては先行研究がなされているが,一方で,イベントに出店する店舗が受ける影響についても着目する必要があるだろう。そこで,本研究ではイベントの中でもマーケットイベントに着目し,そこへの参加に伴い地元店舗の経営展開や周辺地域への影響を明らかにすることを目的とした。
 第I章では,マーケットイベントの一例として,東海地域でも規模の大きい「森,道,市場」を取り上げた。これはイベント出店による経営展開の盛んな移動屋台(移動販売車)の出店が多い最も身近な例と言えるためである。第II章では「森,道,市場」の概要を示した上で,そこに出店する店舗の傾向,特徴を解明すべく,「森,道,市場2015」に出店する全店舗をリスト化し,業種,活動拠点などを調査,分析を行った。それによって得られた結果をもとに,主催者のイベント運営における重要な点や,イベントが出店者にもたらす変化や影響を考察していった。そして,第III章ではマーケットイベントに出店する店舗側の視点で,イベント出店による店舗の経営展開への影響やそうした店舗の成功のための必要なポイントを検討していくべく,「森,道,市場」をはじめ多くのイベントに出店する「ぞうめし屋」を例に挙げた。「ぞうめし屋」を例とする理由は,この店舗が数々のイベント出店を通して経営展開を広めていった経緯があり,本研究の対象として最も適切な店舗であったためである。店主に聞き取り調査を行い,そこから得られた情報をもとに,地元の味噌蔵から移動屋台,固定の飲食店の開業へ経営展開の拡大を段階的に示した。第IV章では,イベント出店が地元店舗の経営展開に及ぼす影響を考察した。さらにそういった店舗の経営展開による,周辺地域の活性化への可能性を,固定店を開業した「ぞうめし屋」の例をもとに考察した。
 以上の結果より,以下の3点が明らかとなった。第一は,イベント出店が,地元店舗の経営展開に影響を与えている点である。イベント出店が需要・人気の高め,出店者の意欲向上を促すことで,経営展開に変化をもたらすのである。第二は,マーケットイベントが出店者同士のコミュニティ構築の場として機能する点である。イベント企画者はその点を意識したイベント運営をすることが必要である。第三は,固定店舗の展開が周辺地域の活性化につながるという点である。イベント出店が地元店舗の経営展開および地域活性化に重要な役割を持つと結論づけた。


大久保陽平:中津川市におけるリニア開通による移住・定住の促進の可能性

 2027年開業予定であるリニア中央新幹線(品川−名古屋間)において,中津川市に中間駅が設置されることが決定している。中津川市は,人口減少・少子高齢化の問題に直面しており,リニア開通による問題解決の効果が期待されている。そこで,本研究は,「移住・定住」に焦点を当て,政策面では中津川市が計画する移住・定住促進に向けた取り組みを検討する。また比較事例として長野新幹線佐久平駅を取り上げ,時系列ごとの人口変化についてGISを用いて分析する。分析結果をリニア中津川駅周辺に照らし合わせて,リニア開通による人口変化を予測する。これらの結果を踏まえ,移住・定住の促進の可能性はあるのかを考察する。
 研究手順は次のとおりである。II章では,リニア中央新幹線の開通が予定されている東京-名古屋間における停車駅周辺の移住・定住への効果を考察した。III章では,長野新幹線佐久平駅を比較事例としてGISを用いて人口メッシュ分析をおこない,地方と都市部が高速鉄道で結ばれることで,空間上どのような人口変化が生じるのか分析した。IV章では,III章での人口メッシュ分析結果を基に具体的に中津川市にリニアが開通されることで人口変化がどのような結果が予測されるのか分析した。また,中津川市が計画している移住・定住促進に向けた取り組みを検討した。V章では,分析結果から中津川市におけるリニア開通による移住・定住の促進の可能性はあるのか考察した。
 分析結果より,政策面では「中津川らしさ」である「豊かな自然環境」の宣伝および維持管理,居住地の確保,雇用の創出,生活利便性の向上といった取り組みが必要であると考察した。各地区が取り組む内容には,移住・定住促進に必要な取り組みがほぼ含まれていると判断した。人口メッシュ分析では,リニア駅から半径5km圏内において人口減少の抑制効果がとくに期待できることが明らかとなった。以上を踏まえ,抑制率が高い地域において,移住・定住に向けた取り組みが成功できれば,リニア開通による移住・定住促進の可能性は期待できると結論づけた。


大野僚祐:一宮市に伝わる民話に関する地理学的研究

 民話とは地域の風習や文化を表した話の一つである。すなわち民話とは文化継承手段の一つである。そして現在多くの地域で都市化が進み核家族化が進行している。核家族化が進行することによって子供が自分の住む地域の昔話を聞いて育つ機会が減少している。そこで本研究では現在でも輪中という先人が作り上げてきた地域が現在でも残っている長島町から近く,木曽三川による水害の歴史もあり,真清田神社という歴史の長い神社が鎮座している愛知県一宮市を研究対象とする。そして民話に取り上げられている地名に着目し,どのような地域でどのような民話が語り継がれてきたのかに重点を置いて分析を行うことを目的とする。
 第I章では現在の社会状況を踏まえ民話の重要性と地理学と民俗学の関連について先行研究を用いて触れた。第II章では現在の一宮市の説明や頻出地名についての説明を行った。II-1では現在の一宮市の概要を述べ,II-2では一宮市の合併の歴史について述べた。II-3では一宮市の名前の由来から一宮市の歴史について触れた。II-4では一宮市の立地条件や現在の土地利用について述べた。II-5では民話に頻出する建造物や地域の説明を行った。第III章では民話の収集方法,民話の分類の基準の説明を行った。III-1では取り扱った資料の説明と民話かどうかの判別基準を記載した。III-2では民話の分類基準について述べた。人文的要素を扱う民話,自然的要素を扱う民話,自然及び人文的要素を扱う民話に分類し,分類結果をもとに考察をした。第IV章では分類した民話においてGISを用いて分析を行い,どのような結果が現れどのような事が推測されるか考察した。IV-1では分類した結果をどのようにしてGISデータにするのかを述べた。IV-2ではIV-1でデータ化した分類結果をもとにGISを用いて日本全国においての民話の分布を考察した。IV-3では一宮市における民話の分布をカーネル密度推定により分析,考察を行った。IV-4では民話に登場する地名の分析カーネル密度推定を中心に用いて分析を行った。IV-5では民話に登場する地名を明治期を境にしてカーネル密度を中心に分析を行い,IV-6では第IV章の小括を行った。第V章ではまとめをおこなうとともに,本研究の今後の課題について提示した。
 本分析結果から民話に登場する地名は一宮市で最も大きく著名な神社である真清田神社を筆頭に比較的大きな集落がある地域,集落から離れた田畑などが広がる地域に多く分布している事がわかった。また集落の中でも木曽川の分流である河川沿いに多く地名が密集していることから,河川周辺に人々は多く住み生活をしてきたということが言えよう。明治以降になると民話の数が減少し江戸時代に栄えていた萩原には登場地名がほとんど見られなくなった。つまり時代が変わるにつれ文化の変化などで今まで行われていた風習が廃止され人々の生活が変化していった事が推測できる。


加納英紀:GISを用いた国道23号名豊道路における周辺環境分析

 国道23号名豊道路は三河と名古屋を結ぶ幹線道路である。三河と名古屋を結ぶ幹線道路には国道1号線と東名自動車国道が存在するが,両道路とも非常に交通量が多く,そのバイパス区間として機能を果たすことが国道23号線名豊道路に求められていることは明確である。本研究では,名豊道路における交通渋滞をテーマに,名豊道路周辺地域を定義し,渋滞発生ポイントや道路交通センサスを利用したデータ,土地利用データを用いて名豊道路の道路情報・道路周辺のデータベースを作成した。このデータベースをもとに,GISの空間分析を行い,名豊道路の交通状況が名豊道路周辺地域へ影響を与えているものと考え,名豊道路における渋滞の現状や渋滞を引き起こすと思われる因子との相関関係の分析を行い,人口や道路交通センサスデータの変化による名豊道路への影響を明らかにすることを目的とする。
 II章では,名豊道路と周辺地域について概要を述べた。前半は名豊道路の構成や愛知県内の道路交通網との関係性,バイパス道路が造られることになった歴史や背景に触れ,後半は名豊道路周辺地域として三河地方を中心に,人口や産業などから道路交通の形成過程を明らかにした。III章では,1節で道路交通センサスのデータと中部地方整備局が計画段階で示した資料から名豊道路における2010年時点の許容交通台数を定義した。この数値をもとに道路交通センサスのデータでの渋滞状況を読み取った。2節では,道路交通センサスのデータから,名豊道路の区間ごとの平均旅行速度と時間帯別交通量から名豊道路の道路交通状況を分析した。3節で,GISを用いた道路周辺環境の空間分析を行い,抽出した名豊道路の空間データとの相関を分析した。ここではその分析結果から読み取れる結果を,渋滞を引き起こすと考えられる項目を中心に整理した。IV章では,相関分析を踏まえ,渋滞との関連について整理し,分析の前に予想していた結果との相違について,また,名豊道路の本来果たされるべき役割と現状について,見解を述べた。
 以上から,渋滞の発生には自動車類の通行台数が大きく関連を有しており,自動車類の通行台数の増減に関しては,その地域の土地利用からある程度推測できるもので,その土地の特性により大型車や小型車それぞれの通行台数にも影響があることが明らかとなった。今後,蒲郡バイパス区間の工事が完了すると名豊道路の全線開通が完了し,さらに名豊道路の利用者の増加が見込まれている。その時の通行台数や平均旅行速度によって渋滞の発生ポイントは明らかになり,周辺地域の特性からある程度渋滞発生を予測することができ,問題となる以前に対処することも可能になると考えられる。


神谷泰輝:東海地方における道の駅の分類と立地分析

 本稿では東海地方の道の駅を対象として,道の駅の内部的要因(施設内容,駐車可能台数,全体施設面積など)と外部的要因(昼間12時間交通量,24時間交通量など)の2つの要因とともに,GISにより算出した森林面積などの周辺の地理特性を用いて類型化を行い,それぞれの立地を検討することを目的としている。またこの分析を通じて,道の駅利用者の増加を図るための今後の展望について考察を行った。
 第I章では,道の駅の現状について触れ,本研究の目的・方法を述べた。第II章では,道の駅の定義や設立経緯,機能,登録条件といった概要について述べた。第III章では,東海地方での道の駅の概要に焦点を当て,岐阜県・愛知県・三重県・静岡県の各県の道の駅に対する政策方針や代表的な道の駅の紹介について考察を行った。また,代表的な道の駅から,その道の駅の地域における役割や取り組みについて検討した。第IV章では道の駅に関する統計データによる考察を行った。調査対象は各県年間来場者数上位40%の道の駅(全40駅)に限定し,来場者数と交通量,駐車可能台数といった統計データを用いて道の駅の様々なデータとの関係性を見出して考察を行った。 GISを用いた計測も行い,50km圏内における地域資源数,5km圏内における人口,土地利用面積を算出し,他のデータとの関係性を示し,来場者数の多い道の駅の条件についての考察をした。第V章では第IV章で扱ったデータを用いて,クラスター分析により道の駅40駅を「準農山村地観光提供型」,「農山村地観光提供型」,「休憩特化型」,「大規模市街地縁辺型」の4つに類型化した。それにより各クラスターの立地や特徴を考察し,その検証を行った。第VI章からは,第I章から第V章までの分析結果や考察をまとめ,各クラスターの道の駅の今後の展開について述べた。
 以上の結果から,「準農山村地観光提供型」・「農山村地観光提供型」は地元の周遊・まちあるきコースの情報提供と体験型観光プログラムの提供の強化,「休憩特化型」はシャワールームや仮眠ルームの整備,「大規模市街地縁辺型」は入浴施設と銀行ATMを整備していくことで利用者数が増加すると考察した。また,東海地方における道の駅は立地特性や施設内容などによって多様な役割を果たしていることが分かった。各県の道の駅に対する政策方針や主要産業などと県別のクラスターの割合を比較することで,各県の政策と道の駅の立地類型を検討することができた。よって,今後の展望として多くの観光客やドライバーに利用されるには,各々の道の駅周辺の道路交通量や客層,観光資源などを踏まえたうえで,適切な機能と役割を持った道の駅を作り上げることが重要であると指摘できた。


鈴木寛之:地域との関わりからみたご当地ヒーローの地域的特性

≪2015年度 地域政策学部 卒業研究最優秀賞≫
 本稿では,ご当地ヒーローを研究テーマとし,活動において地域とどのように関わっているのか,活動によって地域にどのような影響を与えるのかについて,「スーツのデザイン等に見られる外面的な地域性」と「活動範囲等に見られる内面的な地域性」の2つの視点から明らかにした。また,活動場所やテレビ番組の撮影場所などについて,GISを用いて空間分析を行い,地理的な面からもご当地ヒーローの地域的特性について考察した。
 I章では,ご当地ヒーローがサブカルチャーの1つとして形づけられつつあること,社会貢献の面などから研究がされ始めている事を述べた。II章では,先行研究を整理し,本研究にあたっての課題を提示し,本稿の意義を述べた。III章では,9例のご当地ヒーローを取り上げ,活動を始めた動機やスーツのデザインによって分類を行い,地域色の取り入れ方と,その強弱を考察した。また,一定期間における活動状況を調査し,活動頻度・範囲を分析することで,各ヒーローの地域との関わり方について考察した。IV章では,Twitterの利用状況について分析を行い,SNSの利用における地域性について考察した。V章では,事例として取り上げたご当地ヒーローから1人を選択し,1年間の活動頻度・範囲や,テレビ番組での出演者の出身地や撮影場所など,GISを用いて定量的にその空間特性を把握した。VI章では,III章,V章で行った分析や考察を基に,ご当地ヒーローが活動する中で,地域がどのような面で活性化されるのかについて考察した上で,ご当地ヒーローが持つ地域的特性について検討した。VII章では,今後の研究における課題を考察した。
 以上の結果に基づき,ご当地ヒーローの地域的特性には,「活動範囲等に見られる内面的な地域性」が重要であることが明らかになった。「スーツのデザインなどに見られる外面的な地域性」の強弱は活動方針によって大きく異なり,ヒーローによっては取り入れた地域色が非常に希薄なものも存在した。しかし,その場合でも活動内容・範囲を見ると,地域内での社会貢献など,地域性が強い活動となっていた。また,テレビ番組の制作において,地域内で活動する俳優を積極的に起用することで,俳優にとって実績づくりの場になっていた。撮影場所においても,地域内の施設や観光地を取り上げ,番組内で紹介されていた。これらの点から,ご当地ヒーローの地域的特性には,「活動範囲等に見られる内面的な地域性」が重要であり,活動を行うことで,経済的な活性化や,社会問題の解決のきっかけとなるなど,地域に様々な影響を与えることが示された。


内藤 守:農産物直売所における農家の参加状況―ふれあいドーム岡崎を事例として―

 近年,農産物直売所の地産地消による経済効果が期待されている。主な効果として農家の経済力向上,農業にかかわる姿勢の向上,農家の活性化があげられている。しかしながら,そのためには農家の参加が不可欠である。本研究の目的は,農産物直売所に参加している農家の参加状況とその変化を明らかにすることである。直売参加以前と現在の比較を行うため,設立が比較的新しいふれあいドーム岡崎に参加している農家を対象として,農産物直売所が設立されてから地域住民の農業経営や参加状況,扱う品目を検討した。
 本研究の手順として,I章では研究の背景とともに本研究の目的を述べた。II章では,先行研究から見た農産物直売所の定義や目的,評価,参加者からの評価と,農産物直売所が設立されたことによる地域への影響を考察した。III章ではふれあいドーム岡崎の概要から,ふれあいドーム岡崎が設立された目的を探った。IV章では直売参加者にアンケートを行い,その結果から年代や出荷品目,農産物直売への関わりと評価を調査した。また,参加農家の住所からふれあいドーム岡崎までの距離をGISで分析し,出荷圏内や,距離ごとの品目の違いの空間分析を行った。V章ではこれらの研究結果から農産物直売における農家の参加状況について考察した。
 以上の結果,ふれあいドーム岡崎と直売参加農家の距離と品目の違い,農家の参加圏,年代と参加状況の3つを踏まえると,ふれあいドーム岡崎は近隣の農家を中心に出品が多く,中でも2q圏内の農家の割合が多かった。出品理由として身近にふれあいドーム岡崎が設立されたから出品を決めたという回答が多く,これまでは出荷量や販売場所の問題で出荷の難しかった既存の農産物や自家消費の余りを販売できる場として受け入れられているのだと考察できた。当初は自家消費の余りのみの出品であった農家も,消費者の声を聴くことで農産物の生産に力を入れ始めた意見も得た。このことからふれあいドーム岡崎の目的である生産者と消費者の交流の促進という目的を果たしていると考えられた。今後の課題としては,直売参加農家が交流できるイベントの企画と参加農家の増加が挙げられた。ふれあいドーム岡崎の参加者の多くは60代,70代であり,近隣から出荷している割合が多いことから,出荷の時だけでなく私生活の中でも参加農家同士での関わりが多かった。出荷者同士の交流という目的から,ふれあいドーム岡崎が核となり,新たな繋がりを創出していくことが必要だと考えられた。


羽根田智文:豊田スタジアム立地による周辺地域の影響

 近年,新国立競技場が建設されるに際して物議が醸されるように,スタジアム建設には多大な建設費が必要とされる。このように大きな施設が建設されることによって,自治体の政策や周辺地域に大きく影響を与えると考えられる。そこで本研究は,豊田スタジアムを事例として,その立地が周辺地域に与えた地域的影響について,財政・運営に関わるデータだけでなく,地理的データを元にGISを用いて明らかにすることを目的とした。なお,周辺地域への影響を分析するにあたり,土地利用と人口の2指標に着目した。
 研究手順は次の通りである。I章では研究の背景,先行研究,目的,手順を示した。II章では豊田スタジアムの基礎的な情報を整理した。また,豊田市の中心市街地活性化においてどのような役割に位置づけられているか,そしてプロスポーツのホームスタジアムや今後のラグビーワールドカップ開催地としてどのような役割を果たしてきたか,または期待されているかを検討した。III章ではスタジアム周辺を年次変化で表した地形図を利用すると共に,土地利用と人口のデータを用いて,スタジアム周辺地域の地理的変化をGISによって分析した。IV章では分析結果の考察を行い,今後の豊田スタジアムの展望を述べた。
 分析の結果,人口データに関しては豊田スタジアムの周辺地域は徐々に人口が上昇しており,さらに豊田スタジアムを立地された前後の期間に大きく上昇していたことが分かった。さらに土地利用データに関しては,豊田スタジアム周辺地域のその他の用地が減少する一方で,建物用地の割合がどの区域においても上昇していることから,豊田スタジアム周辺地域の都市化が伺えた。ただし,当初の仮説とは異なり,豊田スタジアム立地が周辺地域の人口や土地利用に与える影響は結果的に少なかった。このことは一方で,スタジアム立地に伴い周辺住民及ぼす影響が抑えられた結果であるとも考えられる。なお,今後の豊田スタジアムが周辺地域に与える影響を研究するにあたっては,地価や住民の好感度など,他のデータも検討する必要があると言える。


馬場隆三:プロスポーツと地域―四国アイランドリーグplusを事例に―

 現代社会のスポーツ運営において,地域密着型スポーツが注目を集めている。現代日本で特に人気の高いスポーツである野球とサッカーも地域密着型経営の取り組みを積極的に行っている。地域密着型経営の取り組みを行うことによって,地元住民であるファンの獲得による利益増,球場付近の道路整備などのインフラ整備,宿泊施設,店舗などの不動産投資などによる地域開発効果,行政との連携による地域特産品などのアピール,地域の雇用の創出などさまざまなメリットが存在している。しかし本当意味で地域密着型経営はできているのだろうか。独立リーグはNPBやJリーグと違い,資金力が潤沢ではない。限られた資金で地域に根差した活動を積極的に行っており,チームのホームタウンだけでなく,近隣の都市へ赴き,活動を行っているが,実際にチームがどの範囲で活動を行っているかは明らかになっていない。そこで本研究では地域とのつながりや関係性の内容を明らかにするとともにGISを用いて地域貢献活動空間的特性を検討し,考察することを目的とする。
 I章では初めに,研究背景,研究対象地域の選定,研究目的,手順について論じた。II章では研究対象である四国アイランドリーグplusの概要,歴史について整理した。III章では愛媛マンダリンパイレーツの歴史と今回のメインテーマでもある地域との関わりについて検討し,愛媛県や松山市からの行政的な支援での関わり,地域貢献活動の空間的特性を把握した。IV章では前章までの結果を踏まえた考察を行った。GISによる空間分析を行った結果を考察し,現状の課題を提示した。V章の今後の展望ではIV章で考察したことを踏まえて,今後の愛媛マンダリンパイレーツの地域貢献活動のあるべき姿を提言した。
 本研究により愛媛県内の地域貢献活動の開催格差,愛媛マンダリンパイレーツにおける地域貢献活動の空間的特性が明らかとなった。特に愛媛県とホームタウンの松山市からの行政的支援が他の自治体に比べると手厚いこと,地域貢献活動場所が松山市に集中していること,しかし徐々に周辺地域に広がっていることの2点が明らかとなった。地域貢献活動の広域化により野球をやる少年が増える。野球人口が増えていけば将来的な四国アイランドリーグの選手になる可能性が増えていき,NPBへの可能性が広がるであろう。さらに子供たちが試合を見に行くことによって大人も一緒に試合を見ることによってファンとなる可能性も広がる。ファンが増えることに利益増が見込めることから,こうして四国アイランドリーグplusの可能性は今後も広がっていくのではないかと考えた。


松村翔太:東三河地域におけるパチンコ屋の立地分析

 東三河地域のパチンコ店というのは他の地域と比べかなり大いに盛況しているが,なぜそうなのか,なぜこれまで地域との共存ができたのかなどを,立地規制などの法的要因を踏まえながら立地解析を通じて検討することが本研究の目的である。また最終的には今後パチンコ産業というものはより厳しい時代に突入することが確実視されるなかで,パチンコ店が地域と共存し,生き残っていくために行っている事例などを踏まえ,筆者の視点からパチンコ店というものが地域の人間から疎まれる存在ではなく,親しみを持ってもらえる存在となるべく共存方法を図っていく可能性を検討したい。
 I章ではパチンコ業界の概要を説明し,II章では東三河地域のパチンコ店の概要をチェーンごとで説明をし,III章では東三河地域のパチンコ店の立地特性分析をし,500m,6,000m圏内の商圏分析を行い,チェーンごとの立地特性を読み解いた。IV章ではパチンコ店と地域との共存の可能性の切り口としてCSR事業内容を整理するとともに,パチンコ店の災害時の避難所との連携の可能性というものを示した。V章では,これらの結果をもとに東三河地域におけるパチンコ店の立地特性を示すとともに,今後の研究課題について提示した。
 その結果パチンコ店チェーンの企業戦略,パチンコ業界が衰退している中でパチンコ店と地域との共存の可能性を見出すことができた。しかしながらパチンコ店には本研究でも示したように課題というものも山積しており,多くの面でパチンコ店は変貌を遂げなければならないと考える。今後衰退をしないためにもパチンコ店と地域との共存は必要であると考えるので,チェーン店としての垣根を越えたパチンコ店同士の協力の上での地域への貢献というものが必要となってくると結論づけた。