駒木ゼミ卒業論文要旨

2014年度提出分 (10名・50音順)

大河内雅人:商店街活性化の取り組みにおける地ビールの位置付け―今池ビールを事例に―

 本研究では,商店街活性化の取り組みにおいて,地ビールが持つ可能性と課題について調査を行った。商店街の衰退が深刻な問題となっている中,活気を取り戻そうと様々な手法による活性化の取り組みが行われている。その中には地ビールを用いた取り組みも存在する。本研究では,ビールの酒税一本化により,今後需要が高まると期待できる地ビールに焦点を当て,活性化の取り組みを調査した。
 I章では,日本の商店街の現状と,各地で行われている活性化の取り組みを掲示した。II章では日本のビールを世界のビールと比較し,日本のビール市場及び地ビールの特徴をまとめた。III章ではGISにより,醸造所と企画元が同一のもの,異なるものの分布図を示し,位置関係や密度に関する分析を行った。分析の際には距離計測とカーネル密度分析を用いて,醸造所と企画元の関係性を明確した。IV章では地ビールを用いた商店街の取り組みを,イベント型,オリジナル地ビール開発型,飲食店型に分類しそれぞれ考察を行った。V章では今池ビールを事例として取り上げ,今池商店街の店主に今池ビール開発までの経緯,今池ビールが商店街に与えた影響などに関してのインタビューを行った。
 以上の結果,商店街の活性化において,地ビールは非常に有効であると考えられる。ほとんどの商店街には,酒屋や飲み屋など,酒類を扱った店舗が多く,地ビールを扱いやすい。また,酒屋は酒類に関しての知識が豊富であるため,仕入れ先のメーカーや醸造所の意思疎通がとりやすい。また,商店街ではライブやイルミネーションなど夜に行われるイベントも存在する。これらは若者が対象であるため,高級感のある地ビールは,非常に効果的だと考えられる。更に政府がビールの酒税一本化を検討し,ビールの価格の低下が見込まれる。これらの点から,商店街活性化の取り組みにおいて地ビールは非常に有効であり,親和性があるといえる。課題としては,地ビールによる取り組みは一過性になりやすいということである。したがって話題性が失われない内に,新たな取り組みを行い,持続的な活性化を行うことが重要である。


小笠原侑美:地方都市における地域ブランドの形成方法と現況―「西尾の抹茶」を事例に―

≪2014年度 地域政策学部 卒業研究特別賞≫
 本稿では,地域ブランド食品に着目し,愛知県の地域ブランドである「西尾の抹茶」がどのような特徴を持ってブランドとして形成されているのか,お茶の関係団体や流通経路をもとに明らかにした。またメディアへの露出数等の推移を調査し,現況の分析を行い,「西尾の抹茶」および地方都市における地域ブランドの今後の展開を考察した。
 I章では,研究の背景とともに,本研究の目的・方法を述べた。II章では,地域ブランドの定義や全国の地域団体商標登録事例を紹介し,都道府県ごとの地域ブランドの特色を明らかにした。地方別にみると,地域ブランドは営まれる農業形態が同心円状に分布することを理論化した,チューネンの「孤立国」にある程度当てはめることができた。全国のお茶の地域ブランドを比較すると,「西尾の抹茶」が全国で最も厳格な基準を設けた地域団体商標であることが分かった。また,地域ブランドの価値を増大させる方法を,京野菜を事例に取り上げ考察した。III章では,西尾市の概要を述べ,「西尾の抹茶」が地域独自の歴史に基づくものであり,気候や地理的な特徴を活用していることを明らかにした。IV章では,流通経路や関係団体を調査し,地域団体商標に登録されるまでの取り組みを整理した。海外への流通が多いことや,農協を通さず生葉生産者が卸会社と直接取引をする点が特徴として挙げられた。卸会社の影響力は大きく,生葉生産者との強い結びつきを持っていることが分かった。V章では,近年の商品販売数,イベント出展数,メディア露出数の推移を分析し,現況を検討したうえで,今後の課題と展開を考察した。
 以上の結果から,地元での知名度はあるものの,他地域での知名度が低いことが最も大きな課題であることが考えられた。「宇治茶」や「静岡茶」といった認知度の高い地域ブランドの中で「西尾の抹茶」を広めていくには,限られた予算で効率よくアピールする優れたマーケティング戦略を考えることなどが指摘された。これらを踏まえ,「西尾の抹茶」の今後の在り方および地方都市における地域ブランドの在り方を考察した。「西尾の抹茶」は,小規模であるものの,産地や製法に厳格な基準を設け,商品の品質,味に特化した地域ブランドであると位置づけた。


小栗拓也:愛知県を事例とした「ふるさと納税」の贈答品に対する自治体の見解について

 本論文では,2008年に制度化された「ふるさと納税」が自治体に与える影響について,愛知県を調査対象地域に設定し,分析を行った。ふるさと納税とは,全国の自治体へ寄附を行うことで,税金が控除される制度である。しかし,ふるさと納税を利用し,贈答品を贈呈する事で寄附者集めを行う自治体が現れ,贈答品が自治体間の競争で高額化していき問題となっていた。そこで,本研究の目的として,ふるさと納税の贈答行為に対し,自治体はどのような見解を持っているのか,愛知県の自治体にアンケート調査を行う事で,贈答に対する見解を求めた。
 I章では,ふるさと納税に関する先行研究の多くが,制度面からアプローチを行う研究であった為,地域からの視点として,愛知県を対象地域に設定した。II章では,ふるさと納税の利用額は人口の多さに比例して,寄附額も多いが,東京で一人当たりの寄附額が450円とふるさと納税はあまり活用されていない。III章では,愛知県で取り上げられた年ごとのふるさと納税掲載数の違いから考察を行った。IV章では,愛知県の自治体のアンケートから,ふるさと納税を活用する自治体の多くが財政力指数の値が低い自治体であった。
 贈答に対して積極的な自治体は,ふるさと納税は自治体をPRするものと位置付けていた。自治体が贈答として特産物を贈答する事により,PRにもつながり,自治体内の特産品を買い付けることにより,地域の経済活性化にもつながることになる。贈答に対して消極的な自治体は,ふるさと納税は「寄附制度」であるということを重要視していた。寄附行為に見返りを与える行為,求める行為は,寄附とは言えない。ふるさと納税は,本来,出生地や養育地,応援したい地域へ寄付を行えるように制度化されたものでる。したがって,贈答を行ってしまえば本来の趣旨から逸脱してしまいそれ故に,贈答を行わないと考えられる。贈答品は,自治体のPR,産業を活性化させる面が大きいが,「寄附の見返りとして贈答品を渡すという行為は,寄附とは呼べないのではないか。」という贈呈行為を否定する意見が多く寄せられた。しかし,全自治体が贈答をとりやめるとなると,贈答品目当ての寄附者がふるさと納税を行わなくなり,寄附額の減少や,ふるさと納税の利用率の低下が懸念される。ふるさと納税をこのまま続けていくとしても,さらなる高額な贈答品が現れる可能性がある。したがって,ふるさと納税の制度整備が必要である。ふるさと納税の贈答品の価格に上限金額を設定するといった,贈答品への意見を一度,自治体を交えて議論する必要がある。


竹内駿太:地方自治体におけるマスコットキャラクターの活用とその課題―豊橋市を事例に―

 現在地域活性化について自治体は様々な取り組みをしている。例えば,B1グランプリといったグルメであったり,映画やドラマ等の撮影で使った場所をアピールするフィルムコミッションであったり,大学等との連携による地域の活性化や,ゆるキャラ・ご当地キャラを使った地域のPRなどである。そのなかでグルメとツアーはすぐに地域にお金が入るといった効果が期待できるが,ゆるキャラは売れて人気にならないと全くの無駄になる。そのようななかで,何故自治体はゆるキャラに取り組むのであろうか。本研究ではこれらの諸点を念頭に置き、地方自治体におけるマスコットキャラクターの活用と課題について、豊橋市を事例に地域という視点から考察した。
 I章では、研究の背景についてと研究の目的・方法について述べた。II章では、そもそもゆるキャラとはどんなもので、いつごろ誕生し、誰が作ったのか。また、ゆるキャラの条件やゆるキャラを用いた地域イベントの概要について述べ、代表的なイベントを例に挙げた。III章では、地域活性という視点から見たゆるキャラの可能性と課題について、可能性の面では行政・自治体の例とマスメディアの宣伝による例の2つを挙げた。課題については、先行研究や文献、上記に述べたことを考察して明らかにし述べた。IV章では、豊橋市におけるマスコットキャラクターの企画・活用について、豊橋市のマスコットキャラクター「トヨッキー」を取り上げた。まず、トヨッキーの企画理由や着ぐるみの作成にかかる費用など成り立ちについて述べ、次にトヨッキーの活動の概要として着ぐるみによる活用と、名称としての活用を挙げた。そして行政による活用の現状と展望について述べ、それを検討した活用課題を2つ述べた。
 V章の結論としては、トヨッキーは他のゆるキャラからの差別化を図り「ゆるさ」から「カッコよさ・強さ」にコンセプトを転換した。また豊橋市の取り組みは自治体のキャラクターが持っている目的が薄れないように,「トヨッキーのいる豊橋市」ではなく,「豊橋市のトヨッキー」というスタンスを一貫した。しかし,深刻な人手不足のため上記に挙げた成長戦略に取り掛かることができていなかった。それを解決するためには,マスコットキャラクターに対して人員を配置する必要があろう。ただし現実的に人員補給は難しい。したがって今いる人員でトヨッキーの活用・PRについてどう検討していくかが課題である。


西尾飛鳥:地域文化としての昆虫食と観光資源としての昆虫食との比較研究

 昆虫食は広い地域でみられる地域文化であり,現代では特産品として売られているモノもある。しかし,現代の若者は深く馴染みのあるものではなく,気持ち悪く思っている人もいるだろう。この商品を売りにして観光商品としている地域で,昆虫食はどのような役割を持ち,どのような効果を働いているのか。聞き取り調査などを主にして考察をしていくことが本論文での目的である。
 I章では論文背景に加え,郷土食としての昆虫食を地域文化の側面から考察した。更に観光資源としての昆虫食・現代の昆虫食を考察し,前述のものと比較した。II章は食虫文化について先行研究などにより成り立ち等を調べた。どこでどのような理由で食べられてきたのか,また国内外でどのような違いがあるか,その現状などを調べた。更に現代において昆虫食が注目されていることを栄養面などから検討した。III章は国外の昆虫食の分布や日本の昆虫食の分布を示し,その地域特性などを考察した。更に岐阜・長野県の昆虫食も同じく地図化して考察し,地域文化としての昆虫食について検討した。IV章は昆虫食を特産品として扱っている地域の事例から,その売られている形態(炊き込みご飯や五平餅など)を調査した。その形態ごとにどのような役割をもっているのか考察した。V章はIV章で示した内容についてフィールドワークを行った。岐阜県の道の駅を対象とし,昆虫食が特産品として扱われているか,またその仕入れ先などを聞き取り調査で明らかにした。ここから特産品としての昆虫食の現状を推察した。VI章は昆虫食の観光への可能性を道の駅でおこなわれる地域イベントを通して考察した。来場者や参加者から日頃昆虫を食べているか,昆虫食をどう思うかなど聞き取り調査を行った。人々と昆虫食との関係を探っていった。VII章では以上の地域文化的側面と観光資源的側面を合わせて考え,これから昆虫食がどのように人々の生活に関わっていくかを考察し,まとめとした。
 郷土食としての昆虫食と特産品としての昆虫食の双方とも昆虫食は怖いものではないという人々の理解が必要である。「伝統を守るために特産品として売り出して認知度を上げる」という方法では,結局昆虫食が苦手な人には広まらない。現代の若者や都市部の人に昆虫食の在り様を知ってもらえれば,昆虫食は郷土食としても特産品としても更なる飛躍をすると考えられる。


松葉大智:空間的にみた都心部の水害対策について―名古屋市を事例に―

 本論文では,名古屋市の水害状況と水害対策を空間的・地理的に研究し,水害対策を計画・実施していく上で何が優先されているのかを明らかにすることを目的とした。優先された項目が水害対策の効果に反映されているかも考察した。
 本論文はI〜VIの6つの章で構成されている。I章では,主に水害発生のメカニズムと受け手がうける影響を浸水深を基準にまとめ,本論文での水害の定義と目的を述べた。II章では,名古屋市における水害の状況を,年間降水量や1日あたりの最大降水量,水害対策事業の予算の推移から分析した。これにより近年集中豪雨が増加していることがわかった。III章では,名古屋市における水害の状況を,空間的・地理的に考察した。主に地形や河川分布,人口分布,水害分布から関連性などを検討した。これにより庄内川・天白川近辺での浸水被害やまだ対策事業が完了していない地域での浸水被害が多いことがわかった。IV章では,名古屋市の主な水害対策事業である「緊急雨水整備事業」の実施状況を空間的な視点に基づきとりあげ,事業の計画・実施において優先されている項目について考察した。主に優先されていたのは浸水被害の大きかった地域,人口が密集している地域,大きな河川の周辺などがあった。V章では,現在の名古屋市の水害対策をハード面・ソフト面の2つの点から考察し,今後の名古屋市の水害対策の課題なども述べた。主な課題は想定を超える降雨への対策を検討することなどがあった。VI章では,本論文を振り返り,今後研究として取り組みたいことと課題を述べた。
 本研究により,水害対策は被害の大きさや,その地域の人や重要な交通機関などリスクを重視して対策の実施の優先度が変化していることがわかった。また,名古屋市の「緊急雨水整備計画」は水害対策として十分な効果があったことと,それには整備が必要な地域に優先的に事業が実施された結果であるとわかった。


原 悠貴:一宮市におけるモーニングサービスの現状

 モーニングサービスは,他の地域の喫茶店でも行われている。その中で一宮市は,モーニングサービスの発祥地と呼ばれる地域の1つであり,喫茶店の店舗数が多く存在し,提供されているモーニングサービスの量と質の高さから,食文化の1つとして注目されている。近年,食文化として定着したモーニングサービスを全国に広めることを目的に,一宮商工会議所を中心として一宮市,学校・食品関係者などの団体からなる「一宮モーニング協議会」が2009年に設立された。一宮市の知名度向上と活性化,新たなる地域づくりに向け,一宮モーニングプロジェクトと題し,「一宮モーニングマップ」の発行をはじめ,公式ホームページの開設,モーニングサービスをテーマとしたイベント活動等が行われた。そこで本稿では,一宮市のモーニングサービスに焦点を当て,モーニングサービスの現状と課題について明らかにすることを目的とし,分析・考察を行った。
 I章では,どのようにモーニングサービスが広がり,現在どのような現状にあるのかについてモーニングサービスの発祥地と呼ばれた地域および愛知県全体の喫茶店の割合を比較し,考察を行った。II章では,一宮市の喫茶店のモーニングサービスの特徴について事例を通じて,分析・考察を行った。III章で一宮市の喫茶店のモーニングサービスの特徴および人口の商圏特性についてGIS分析を行い,空間的な分析・考察を行った。IV章では,一宮市で行われたモーニングサービスをテーマにしたイベントの事例などを踏まえて,分析・考察を行った。
 その結果,一宮市のモーニングサービスは,提供方法が多様化し,限定メニュー,日替わりメニューで提供する喫茶店が多く,一宮駅に近いほど,商圏人口およびモーニングサービスの提供価格が高くなることがわかった。今後の課題は,一宮市だけでなく,他の地域のモーニングサービスの現状や特徴について分析を行い,一宮市のモーニングサービスの位置づけ,モーニングサービスがどのように他の地域に広まったのかについて調査をしていく必要がある。


藤本真英:豊橋の路面電車から見る路面電車の現状と展望

 豊橋市はJR東海道本線,東海道新幹線,飯田線,名鉄名古屋本線,豊橋鉄道渥美線,東田本線と鉄道によるネットワークが幅広い。また地方都市においてJR,新幹線,大手民鉄,中小民鉄,路面電車が集合している駅はほとんどみられない。今回は豊橋鉄道が創立90年を迎えるにあたり,豊橋市内を走る豊橋鉄道東田本線を中心に,日本に現存する路面電車の現状と展望について取り上げる。日本の路面電車は高度経済成長による自動車の増加に伴う廃止が進んだ。しかし現代では路面電車が誰でも利用がしやすい乗り物の1つとして見直されつつある。車社会の著しい東海地方で唯一残っている豊橋の路面電車はなぜ現在まで走り続けることができたのだろうか。そこで本研究は,路面電車が見直されつつあるなかで,現在の路面電車についてどういう状況にあるのかを愛知県豊橋市を走る豊橋鉄道東田本線を中心に取り上げて明らかにすることにした。
 I章では路面電車の社会的背景,路面電車に適用される軌道法について,さらにこの論文の目的について取り上げた。II章では路面電車の歴史を踏まえ,現存する路面電車の状況,廃止となった岐阜市の路面電車,在来線の跡地をLRT化した富山市の路面電車の現状について取り上げた。III章では豊橋の路面電車がどのような経緯で敷設されていき,全国の路面電車が廃止されていくなか東海地方で唯一生き残ることができたのかを歴史で振り返った。IVは豊橋の路面電車が存続し続けるために行ってきた様々な取組を企業である豊橋鉄道,行政である豊橋市,市民団体で市電を愛する会に分けてまとめた。V章では第W章を踏まえながら,これからの路面電車に必要なことは何かをテーマに,2014年10月10日に行われた市電タウンミーティングをもとに企業,行政,市民の3者が考える豊橋の路面電車は一体何であるのか考察した。VI章は豊橋の路面電車がこの先存続していくなかで大事なことは何であるか全体を通してまとめた。
 その結果,豊橋の路面電車が今日まで走り続けているのは,企業の経営努力や他社に先駆けて行ってきた工夫をこらしたイベントの取組,行政の都市計画とともに行ってきた路面電車環境の整備,市民の路面電車に対する熱い情熱があったからだとわかった。特に企業と行政が一体となって行ってきた路線延伸は,利用者促進に大きく影響しており,5.4kmという短い路線ながらも人々の利用がしやすい路面電車を目指し,これからも豊橋市のシンボルとしてこの先も走り続けると考えた。


堀江 拓:名古屋市における観光客の流動から見た主要観光施設同士の関係性

 本稿の目的は,名古屋市における観光者の流動を調査することで,主要観光施設同士の関係性について考察することを目的としている。研究方法は,先行研究の調査,名古屋市の統計データの集計,名古屋市の観光政策についての調査,主要観光施設の来訪者に行ったアンケート調査の集計を行った。
 I章では,先行研究において観光行動から見た施設同士の関係性についてあまり議論されていないことを示す。II章では,名古屋市における観光の現状について考察するために,「名古屋市観光客・宿泊客動向調査」に示されている入込客数が多かった13施設についての概要を整理し,それらの施設における月別・年別の入込客数推移の5年分の結果から各観光施設の特徴を整理した。そして,観光資源および観光客の施設へ訪れる目的を踏まえた上で,各施設を分類した。このようにして,名古屋市における観光の現状について各施設の関係性から考察した。III章では,名古屋市への観光政策の取り組みについて調査し,名古屋市における観光の取り組みを行う団体は名古屋市の観光において,どのような観光施設同士を結びつけようとしているのか考察した。そしてIV章では,アンケート調査の結果について述べている。全体の流動パターンを地図化して,それを名古屋市内のみ・名古屋市外も含めた施設同士の関係性の2つに分けて考察した。更に,男性・女性などの属性によって分けることで,名古屋市の観光施設同士の関係性について考察した。
 その結果,名古屋市外との関係性において,名古屋市は関東と関西を結ぶ中間地点であり,あらゆる地方の観光施設と結びつく機会があると考察できた。また,回答者の流動パターンから名古屋市内での施設同士の関係性において「名古屋城」が中心となっていることが明らかになり,名古屋市の観光において「名古屋城」は欠かすことのできない観光施設であると考察できた。そして,名古屋市の観光形態には「歴史・文化」,「産業・技術」の観光資源を主に活用されているが,この観光資源ごとに施設同士の関係性が構築されるだけではなく,1年の中でも月によって,観光形態が異なり,属性によっても観光形態が異なることから,名古屋市における主要観光施設同士の関係性は,期間や属性によって異なると考察することができた。


村松周弥:ハママツジャズウィークの存立基盤

 本研究では,静岡県浜松市で行われ、23年間に渡り続いている音楽イベントである「ハママツジャズウィーク」の組織形態や内容の変化を調査することで,イベント成立の要因と考えられる存立基盤を明らかにすることを目的とする。
 I章では日本の音楽イベントの現状と展開,現在の浜松市の音楽に関する背景を述べることで,「ハママツジャズウィーク」を研究対象とする意義を示した。II章では,「ハママツジャズウィーク」のプログラムと運営団体の変化,また,プログラムの中で唯一,一般市民による演奏が内容の「ストリートジャズフェスティバル」を取り上げ考察することで,現在の「ハママツジャズウィーク」の内容と運営形態に至った経緯が明らかとなった。III章では,「ハママツジャズウィーク」の開催会場の変化を地図に示すことで,浜松の地理的特性に「ハママツジャズウィーク」が影響を受け対応しながら成長し範囲を拡大させていることが示された。IV章では,現在の「ハママツジャズウィーク」の主催組織構成についてヒアリング調査を行った。各主催団体の役割と種類を明らかにすることで,ヤマハ株式会社が中心となって業務が割り振りされていることが分かった。ヤマハはミュージシャンの選定など音楽に関する業務,静岡新聞・放送は宣伝業務,浜松市は公共音楽施設の確保など,各団体の連携が「ハママツジャズウィーク」の円滑な運営につながっていることが明らかとなった。第V章では,「ハママツジャズウィーク」資金面から各団体の関わりを分析した。協賛数は初期の約50件から増加し、現在は常に100件以上を保っていることから,「ハママツジャズウィーク」の知名度が上昇したとともに,地域企業の文化貢献活動に対する積極性を見出すことができた。
 以上の結果,ヤマハなどの大手企業による音楽産業と音楽の都を目指す浜松市行政による音楽文化政策,市民らの音楽文化活動の積極性は,それぞれの団体が行う音楽文化活動に対する反応という好連鎖であることが明らかとなった。さらに「ハママツジャズウィーク」のプログラムにおける,ヤマハへの依存といった問題をあげるとともに,新たな内容のプログラムへの挑戦が生み出す音楽に関する人材育成の可能性を提示した。しかし,他地域の状況と一致することでの応用が可能であると示した。