卒論要旨6 次世代エコカーの開発競争と日本メーカー

 

03E2302 石川 高広

 

論要旨 

自動車は、今や私たちの生活に欠かすことの出来ない非常に身近で大切なツールの一つとなっている。日常生活に物流、様々な場面で自動車の果たす役割はとても大きなものとなっている。

 その自動車は、今転換期を迎えている。ガソリンを燃焼させ、動力を得る自動車がかねてから叫ばれていた地球温暖化などの地球環境の悪化の原因の一つとされているからだ。

 そこで自動車メーカー各社は、環境に優しい自動車の開発へと乗り出した。従来のガソリンエンジン車のだけでなく、ハイブリッド車や燃料電池車といった全く新しいシステムを採用した自動車の開発へと進んでいる。

 しかし、この流れは従来の自動車業界の構図を全く新しいものへと変えてしまった。グループを超えた技術提携や資本提携、共同開発は従来の流れでは全く考えられないものである。

 世界中を震撼させた911同時多発テロ以降、世界中で原油価格が高騰し、その影響はガソリンを燃料とする自動車業界にもガソリンの小売価格の高騰という深刻な影響を与えた。ビッグ3と呼ばれた米国の自動車メーカーの業績はみるみる悪化し、倒産も危ぶまれた。そうした中で、トヨタ・ホンダに代表される日本の自動車メーカーは急激に業績を伸ばした。トヨタは2007年にGMを抜いて世界生産台数第一位になると言われている。激しい逆境の中で、日本メーカーが急成長した理由は何か。それは、日本メーカーが持つ環境技術ではないだろうか。

 敗戦国であり、自動車でも後進国であった日本は、大きな車体に大排気量のアメリカ車に、小型で燃料効率の良い比較的小型の自動車で勝負し続け、そしてついに世界に日本車の実力が認められることとなった。そして、日本車が世界の自動車社会で不動の地位を得ようとしている。

 環境という自動車と切り離すことの出来ないリスクを乗り越えられるか否かは、今日の急激な変化が鍵を握っているだろう。これまでどのような変化が起こり、今後どのような変化が起ころうとしているのだろうか。また、監督する立場である政府や地方自治体はどのような体制でこの変化を見守っているのだろうか。そして、この変化の主役である自動車メーカーはこの変化を乗り越える為にどのような戦略を用意しているのだろうか。

 この変化は、自動車を使う立場である私たち消費者にとっても大きな影響を与える。その影響が消費者にとって、利益につながるか損益となるかもしっかりと見極めなければならない。

 この変化は、自動車業界を発展させる可能性と衰退させる可能性の両方を秘めている。変化の現状を見極めること、自動車業界がより一層発展するにはどのような課題が存在するのだろうか。

 10年後、30年後、50年後とこれらの未来に、私たちが自動車と今までと同様に、更にはこれまで以上に付き合っていく為に、自動車メーカーにとっても、私たち消費者にとっても、今が非常に重要な時期へと差し掛かっている。自動車から切っても切り離せない「環境」というリスクは、世界一と呼ばれた自動車メーカーの経営を揺らがす程大きな力を持っている。現在、環境技術で世界を牽引している日本メーカーも、一歩間違えれば、GMの二の舞になる可能性を秘めている。

近年の日本経済の好況は自動車産業が非常に好調であることも要因の一つであると言われている。今後の日本経済の行方を占う為にも、今後も日本の自動車メーカー各社から目を離せない。

 

目次

 

はじめに

1章 次世代エコカーと加熱する開発競争

第1節 次世代エコカーを巡る業界再編

第2節 次世代エコカーとはなにか

第3節 次世代エコカーが求められる背景

 

2章 日本メーカーの環境技術

第1節 日本メーカーのもつ環境技術

第2節 日本エコカーの海外進出

 

3章欧米をしのぐ戦場、日本市場

第1節 海外メーカーの対日環境戦略

第2節 日本メーカーの日本戦略

第3節 エコカーに対する政府・自治体の対応

 

4章次世代エコカーの行く末

第1節 次世代エコカーの普及の現状

第2節 ハイブリッド車はガソリン車より得なのか?

第3節 普及に向けた課題

おわりに

 

付論1 用語解説

付論2 ディーゼルハイブリッド車

参考文献