3章 日中のモータリゼーションと環境対策

 

            04E2181 岩田 悟志

 

はじめに

 近年、急激な経済成長を遂げ、それに伴ってモータリゼーションを迎えている中国。かつて日本も経験してきたが、経済の豊かさを求めるがゆえに環境に大きなダメージを与えていることになる。現在の自動車産業はただ安価で高性能な自動車を生産するだけでなく、環境や省エネを充分意識した生産にシフトされてきていると言ってもいいだろう。そこで日中のモータリゼーションに対する環境対策を見ていきたいと思う。

 

第1節           自動車急進国・中国

1-1 中国のモータリゼーション

 中国の自動車生産台数を見てみると(表1,2)、2004年の時点で米国の1,199万台、日本の1,051万台、ドイツの557万台に次ぐ世界第4位の507万台で、販売台数は米国の1,730万台、日本の585万台に次ぐ世界第3位の507万台という結果である。2002年から2004年の増加率では、他の国がほぼ横ばいなのに対し中国はものすごい勢いで伸びていることが見てとれ、中国はまさに急速なモータリゼーションを迎えていることが数字からもはっきりと分かるのである。

1 主要4カ国の自動車生産台数(台)

 

2002

2003

2004

アメリカ

1,228

1,208

1,199

日本

1,026

1,029

1,051

ドイツ

547

551

557

中国

329

444

507

     出所:社団法人 自動車工業会ホームページ

     http://www.jama.or.jp/world/world/world_t1.htmlより参照、作成

2 主要4カ国の自動車販売台数(台)

 

2002

2003

2004

アメリカ

1,714

1,697

1,730

日本

579

583

585

ドイツ

352

350

355

中国

325

439

507

     出所:表1に同じ

 

また、中国の国営通信社、新華社は中国の2006年年間自動車市場が2012年に2005年実績比約8割増え1,000万台上回るという専門家の予測を報じた。中国自動車技術研究センターの張正智氏によると、「中国の自動車市場は2012年に1,000万台を越えた後も成長を続け、2020年にも年間2,000万台を上回り世界第1位になる」[1]と言う。

 日本でも1964年の東京オリンピックの直後からモータリゼーションが進んでいったが、中国でも2008年の北京オリンピックを境にしてもなおさらにそれが加速していくという計算なのだ。

 

1-2 モータリゼーションの影響

 中国経済の著しい発展に伴ってモータリゼーションも加速していっているのだが、その背景には深刻な環境問題がある。

 晴れているのに空はすっきりせず、街はかすみがかかる。首都・北京はスモッグが珍しくない。北西、北東を山で囲まれ、空気がよどみやすい地理的条件もあるが、経済発展を優先して大気汚染防止が遅れ、排出抑制が徹底しないからである。[2]

 北京の二酸化炭素のレベルは2006年現在、世界保健機構(WHO)が定めた清浄な空気基準を78%も超えている。北京市は石炭を燃やし、空気汚染の元凶となっていた工場の多くを閉鎖したにも関わらず、市内を走る推定250万台の車の排ガスのせいで世界屈指の汚染された街となっている。米中両政府の統計によると、2004年時点で北京市の空気中浮遊微粒子量はニューヨーク市の6倍以上、二酸化硫黄のレベル2倍以上の高さだった。[3]

 中国が始めて本格的な排ガス法規制を可決し、排ガスを浄化する触媒コンバーターを義務づけたのは、2000年になってからだ。中国は自動車の排ガス基準を欧州に倣い策定した。それでも国の大半は欧州で1996年に導入された基準を満たせない。北京市は欧州連合(EU)が2000年に制定した新基準(ユーロ3)に沿って、それより厳しい基準を設けている。そして中国全土が2008年までに新基準を満たすことを求めている。[4]

 

1-3 中国政府の環境対策

 環境より経済の発展を優先してきたといってもいいだろう中国が現状を打開しようと環境保全に力を入れ始めている。中国は大気汚染だけでなく、河川の水質汚濁、土壌汚染、砂漠化、温暖化ガス排出増加などの問題を各地で抱えていて、さらに公害など経済優先がもたらす負の要素を無視できなくなったためである。

 そこで中国政府は前途のような本格的な排ガス法規制の可決や、2006年からの第11次5ヵ年計画で経済と環境保全の調和を掲げた。第115カ年計画では、一定量の国内総生産(GDP)をあげるのに必要なエネルギー消費を2010年までに2005年比で2割、汚染物質排出量を同1割削減するとの目標を掲げた。だが計画は出足からつまずいた。中国国家環境保護総局の1月~6月の統計によると、酸性雨の原因になる二酸化硫黄(SO2)の排出量は前年同期比4.2%増の12,746,000トン、水の汚染度を示す化学的酸素要求量(COD)は同3.7

%増えた。単位GDP当たりのエネルギー消費も減るどころか逆に増加した。背景には成長を急ぐ地方政府が環境規制や省エネルギー対策を無視した設備増強を容認してきたことがある。中国政府は環境対策の重要性を訴えているが、意識がなかなか浸透せず、規制逃れも横行、解決の道のりは遠くなっている。[5]

 さらには中国国民の意識として、経済成長によって収入が増加し環境問題よりも経済的な豊かさを求め、マイホーム、マイカーを購入したいという傾向が強くなっているように思われる。

 経済優先で突っ走ってきた中国に今環境問題という重いツケが回ってきた。環境対策には国民の改善意識は不可欠であり、今後中国政府が国内の意識改革をもっと進めなければ、13億人という巨大な人口を抱えている中国の環境問題はさらに加速していってしまうだろう。

 

 

2節 自動車先進国・日本

2-1 日本のモータリゼーション

 日本では1964年の東京オリンピックの直後からモータリゼーションが進んでいった。高速道路の建設が始まり、さらには一般大衆にも購入可能な価格の大衆車の出現などによって、自動車が利用しやすい環境になったことが原因であるといえる。

 また日本の高度経済成長は昭和30年代から始まり、このガイドラインとなったのが国の経済計画で、自動車の発展もこれに連動していった。(表3参照)

 

3 日本の高度成長期

1958年        

「新長期経済計画」の発表

7

「日本貿易振興会」(JETRO)発足

1960年  12

「国民所得倍増計画」の発表

1965年  7

名神高速道路の開通

10

乗用車の輸入自由化の実施に伴い、海外メーカーとの技術提携を解消

1966

「国土開発幹線自動車道路建設法」の制定

 

自動車生産台数がアメリカ、ドイツに次ぎ世界第3位となる

1967年  12

中央自動車道一部(調布~八王子)開通

1969年  3

東名高速道路の開通

出所:日本のモータリゼーションの到来 

http://www.erca.go.jp/taiki/siryou/pdf/W_A_007.pdfより参照、作成

 

 高度成長期に国民所得倍増計画が発表され、それに基づいて自動車生産計画も行われ、自動車メーカーの増産を先導していったのである。実績は計画の1.7倍に達し、10年後の目標の88.3%を5年間で達成してしまったくらいであった。またこの頃日本の乗用車に「大衆車」というカテゴリーが登場した。それをもたらしたのは、1961年6月に発表されたトヨタの「パブリカ」で、1962年にはわずか14%にすぎなかった乗用車需要に占める個人比率が、67年には39%、70年には50.6%に達した。この1970年代前後が、日本の本格的なモータリゼーションの確立期といわれている。[6]

 

2-2 モータリゼーションの影響

 モータリゼーションが起こることによって大気汚染などの公害が問題となってくるが、自動車の増加によって真っ先に影響を受けるのが交通問題、すなわち渋滞・事故などの問題である。日本の交通事故死亡者は戦後の高度成長期に自動車保有率が上昇するのと比例して増加し年間1万人以上が死亡する事態となった。1960年頃から戦争でもないのに膨大な人数が犠牲となることを比喩して「交通戦争」と呼ばれる事態となった。1970年には交通事故で年間16765人が死亡し史上最悪の年であった。この後、警察や行政などが交通安全対策に取り組んだこと、また、2度の石油ショックなどで経済の伸びが鈍化したことなど影響で事故数、被害とも減少に転じた。その後、交通事故の犠牲者は1980年代に再び増加し、1988年に1万人を超えたが、バブルの終焉と共に1993年以降減少に転じている。1970年代の減少と合わせ経済の盛衰が交通事故犠牲者の増減と相関関係を示している。車輌側の走行能力があがるにつれて1970年代後半からの交通事故犠牲者は運転中の乗員が主なものとなっていったが、車両側の安全装置の向上と、救急医療の発達によって救命率が上昇したことなどにより、自動車乗員の犠牲の減少に寄与している。事故死亡者は事故発生から24時間以内に死亡が確認された場合のみカウントされ、24時間を超えて死亡した場合には統計に入らない。医療技術が発達した現在においては24時間以上生存している負傷者が増加したことも統計に影響を与えている。2003年においても事故後、1年以内の死亡者は1万人を超える。実際、年間負傷者数は増加を続けている。交通事故自体は減るどころか、むしろ自動車保有台数に比例して増加し続けているのであって、特に21世紀に入ってからの先進国では、生まれながらの自動車世代が老齢に達するが、この高齢者の運転による事故も増加している。[7]

 

 

 

 

 

4 日本の交通事故数

 

発生件数(件)

負傷者数(人)

死者数(人)

2000

931,934

1,155,697

9,066

2001

947,169

1,180,955

8,747

2002

936,721

1,167855

8,326

2003

947,993

1,181,431

7,702

出所:社団法人日本自動車工業会ホームページ

http://www.jama.or.jp/safe/accident/accident_t1.htmlより参照、作成

 

5 中国の交通事故数

 

発生件数(件)

負傷者数(人)

死者数(人)

2000

616,971

418,721

93,853

2001

754,919

546,485

105,930

2002

773,137

562,074

109,381

2003

667,507

494,174

104,372

出所:李春利 「特集・重大化する中国の環境問題」、『中国年鑑2004』中国研究所編、創土社より参照、作成

 

日本と中国の交通事故者数を比較して見てみると(表4、表5)、発生件数、負傷者数ともに日本の方が圧倒的に多いのに対し、死者数は中国の方が圧倒的に多いということが分かる。中国は自動車保有台数が日本の約3分の1であるのに対して交通事故による死者数は日本の10倍以上である。

 交通事故の原因として考えられるものには「人」「クルマ」「道路環境」の3要素があり、「人」とは自動車を運転するドライバー自身の安全運転に対する意識であり、「道路環境」とは交通渋滞等を意味する。そして「クルマ」とはその車の性能・安全性を意味していて[8]、日中の死亡事故の数字の違いからして見てもまだまだ日本の自動車産業の方が技術面からしてみても上であると言えると思う。

 交通渋滞に関しては、中国では現在モータリゼーションを迎えているというだけあって国内では「道路と自動車」についての大論争が絶えずなされているくらいである。

日本でも今後も保有台数や総走行距離が確実に伸びていくことが予想され、それに伴って交通渋滞も激しくなっていくと思われる。

そこで交通問題の対策法としてITS(高度道路交通システム)の進展がある。ITSとは、最先端の情報通信技術を用いて人・クルマ・道路とを情報でネットワークすることにより、交通事故、渋滞などといった道路交通問題の解決を目的に構築する新しい交通システムである。1996年、政府は「ITS全体構想」を策定し、産学官の連携のもとに、ナビゲーションの高度化、自動料金収受システム、安全運転支援など9分野の開発・取り組みを国家プロジェクトとして推進していった。今後はさらに各システムが連携・融合し国民生活へより広く浸透していく、セカンドステージと言うべき段階に入ると考えられる。特にITSが期待される分野としては、「安全・安心」、「環境・効率」、「快適・利便」の3つが挙げられ、さまざまな取り組みを行なっている。[9]

 

2-3 環境対策としての排ガス規制

日本の排ガス規制の変遷を見てみるとガソリン乗用車では、1966年に一酸化炭素(CO)を対象とした最初の規制が導入され、1973年に炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の規制値を加えた「昭和48年度排出ガス規制」が施行、以降これらの3成分を低減させる規制が順次施行された(昭和505153年度排出ガス規制)。「昭和53年度排出ガス規制」は、規制のなかった1960年代の中ごろに比べ、10分の1以下という値が求められ、自動車メーカー各社は積極的な技術開発を行い、その対応を図ってきた。2000年からは、「平成12年規制(新短期規制)」が施行され、未規制時代の排出水準に比べおよそ100分の1という極めて低い水準となり現在に至っている。「平成12年規制」(2000年)では、排出ガス規制値に対し、その25%、50%、75%と低減した値を基準として新たな認定制度が設けられており、それぞれ良低排出ガス認定車、優低排出ガス認定車、超低排出ガス認定車として知られている。[10]
さらに2005年から導入されている「平成17年規制(新長期規制)」においても規制値の50%、75%減の認定基準が定められ、現行規制に比べ大幅な排出ガスの低減となる。平成17年規制は、欧米の「ユーロ4」と比較しても最も厳しい水準にあると言える(表6)。[11]

6 ガソリン乗用車排出ガス規制・日米欧比較

出所:日本自動車工業会資料

 

~厳しい排ガス規制に対応する日本メーカー~

 2006年現在中国では大都市でユーロ3、地方都市ではユーロ2の排ガス規制が制定されている。中国で新たな車種を投入する際、これらの排ガス規制も頭に入れておかなければならない。そこで、厳しい排ガス規制に対応を目指している日系メーカーのホンダを例にして見ていきたいと思う。

 ホンダは、新たな中国戦略のキーワードを中国の地名になぞらえ、「安環省」と唱える。すなわち、安全、環境、省エネ、の略である。中国で新たな車種を投入する際、排ガス規制で厳しい欧州基準の「ユーロ4」に対応すべきか―。[12]2年前、ホンダ社内では厳しい議論に揺れていた。エンジンなどをユーロ4に対応すれば当然コストは上がるが、「中国で環境問題は確実に高まる。ならば規制の先を行った方がよいと判断した」[13]と、東風ホンダの尾崎満総経理は打ち明ける。

 このように、最先端の技術を導入して日系メーカーは中国の自動車市場に進出を続けているのである。

 

第3節 日本のさまざまな対策

 モータリゼーションによって増加の一方に行く自動車に対して、排ガス規制など事後的な対策だけでなく、事前的な対策や、自動車の後の使い道についても考えていかなければならない。

3-1 自動車リサイクル法

地球環境に配慮するためには自動車を生産する段階で排ガス規制について考慮することも重要だが、自動車を使い終えた時、すなわち最近注目されているリサイクルを設計段階から考えたクルマづくりも必要である。日本では20051月より自動車リサイクル法が施行された。同法では自動車メーカー、輸入業者にフロン、エアバッグ、ASR(シュレッダーダスト)の引取りとリサイクル・適正処理を義務づけている。ASRについては2015年度までにリサイクル率を70%以上にすることが決まっており、これによりリサイクル率は法施行前の80%程度から95%以上にまで向上することになる。また、同法は使用済自動車の引取りからリサイクルに至る工程を電子マニフェストで管理する世界初の仕組みを採用している。[14]

 ここで自動車リサイクル法に基づく再資源化等の状況をトヨタの例から見てみたいと思う。

 

7 基準の遵守状況

項目

基準

2005年度

2004年度

再資源化率

ARS

30%以上(2005年度~2009年度)

57%

50

エアバック類

85%以上

93

95

出所:トヨタ自動車ホームページ 「自動車リサイクル」

http://www.toyota.co.jp/jp/environment/recycle/law/recycle_fee/recycling.htmlの資料に基づいて筆者作成

 

 トヨタの再資源化率の実績を見てみると(表7)、まずARSでは、基準が30%以上であるのに対し57%と高い数字を示している。またエアバック類でも、基準が85%以上であるのに対し93%と上回っている。ARSについては前途にもあったように2015年度までに再資源化率を70%以上にする事が決まっているため、さらなる再資源化を進めていく必要があるが、「トヨタは、開発・生産・使用・廃棄という循環の中で、廃棄物を極力減らし、再利用できるものは可能な限りリサイクルする活動を展開して、その成果を車開発にフィードバックしリサイクルを考慮した車作りに取り組んでいます」[15]という言葉通りのリサイクルに対する取り組みを行っていると言える。

中国の自動車リサイクルについて見てみると、中国政府は20062月に自動車リサイクルを推進するための指針をまとめた。自動車メーカーに設計・生産段階からリサイクルをしやすいような配慮を求め、廃車部品の回収、再利用まで責任を持たせる内容。[16]資源節約型社会を目指す政策の一環で、2010年から実施する。指針によると自動車メーカーは再生可能材料の使用率を80%前後にしなければならない。[17]自動車メーカーにはコスト面などの負担が増える可能性がある。

 

3-2 中古車市場

 中古車は使用済み自動車のリサイクルと同様に環境対策の一つの手段になるものである。そんな中古車市場について見ていきたいと思う。

排出ガス規制はわが国の自動車産業の国際競争力を高めたが、それをクリアしてもなお解決できないほどの普及台数になった。とりわけわが国では道路整備の遅れが交通渋滞を招き、排出ガス問題をより深刻なものにしている。こうした問題に対して提案されようとしているのがカーシェアリング制度である。実際これがどんなテンポで進展するか疑問がないこともないが、ある意味では合理的な解決案であり、実現の暁には市場はさらにシュリンクすることは間違いない。都市部への乗り入れ規制も今後はさらに強化されるかもしれない。これも考えすぎだとも言い切れない。[18]

 つまりこれまでと同じように「新車」を大量生産し、その市場だけで自動車産業が従来通りの成長を維持し続けられるという予測は、あまりにも楽観的すぎるということだろう。もちろん成長性はともあれ、市場規模自体は大きいのだから、直ちに悲観的になることもないが、自動車産業全体の問題として、これまでの大量消費(フロー)依存から、「保有(ストック)」を前提にした新しいビジネスモデルへの転換を模索する必要があるのではなかろうか。[19]

8 新車・中古車別四輪車販売台数

 

新車(万台)

中古車(万台)

1996

708

810

1999

586

793

2002

579

817

2005

585

811

出所:社団法人日本自動車工業会ホームページ

   http://www.jama.or.jp/industry/four_wheeled/four_wheeled_2.htmlより参照、作成

 

 そこで中古車の販売台数を新車と比較してみると(表8)、1996年には約100万台差であったがその後中古車が横ばいであるのに対し、新車は販売台数が落ちて2005年には約226万台差と中古車が大きくリードするようになった。また中古車の販売台数の推移は現在ほぼ同じだが、1985年は572万台であり、2005年と比較すると20年間で239万台増加していることになる。世界から見たら、日本は有数の中古車大国なのである。

 

3-3 クリーンエネルギー車

石油以外のエネルギー源として、電気、天然ガス(CNG)LPG、水素などを利用する自動車やハイブリッド車をクリーンエネルギー車といい、CO2抑制、排出ガスの清浄化の観点から注目されている。2004年度には約25万台まで普及が進み、今後さらに増加することが予想され、将来は燃料電池自動車の普及も期待されている。[20]

 

9 クリーンエネルギー車の普及台数(台)

 

1996

1998

2000

2002

2004

電気自動車

2,600

2,400

3,800

5,600

8,500

ハイブリッド自動車

200

22,500

50,400

91,000

196,800

天然ガス自動車

1,211

3,640

7,811

16,561

24,263

エタノール自動車

314

279

157

114

60

ディーゼル代替LPG自動車

7,883

9,950

12,602

17,054

20,670

出所:社団法人日本自動車工業会ホームページ

http://www.jama.or.jp/eco/energy/table_02.htmlより参照、作成

 

 クリーンエネルギー車の全体の普及台数を見てみると(表9)、1996年は合計で12,208台であったのに対し2004年は250,293台と8年間で約24万台も増加している。カテゴリー別に見てみると、ハイブリッド車は1996年にわずか200台しか普及してなかったが2004年には196,800台と全体の8割以上を占めていてクリーンエネルギー車の代表的な存在となっていて、今後も増え続けることが予想される。その他でも天然ガス自動車、現在は低CO2代替という存在になりつつあるディーゼル代替LPG自動車、電気自動車など年々その数が増加していてクリーンエネルギー車がどんどん市場に普及していっていることが分かる。

しかし、今後のさらなる実用化・普及に向けては、省資源の観点も含めた技術的課題の克服とともに、燃料供給スタンド整備などのインフラ構築も必要になってくるという課題も生じている。[21]

 

~日本メーカーの環境対策~

日米欧では2009年前後に、排ガスや燃費に関する規制が大幅に強化される。自動車各社は規制に対応しなければ競争から振るい落とされる可能性もあるだけに、環境技術開発は重要な経営課題となっている。[22]

10 自動車大手の環境技術

 

トヨタ自動車

ホンダ

日産自動車

ハイブリッド車

10年代初めまでに車種を倍増、年100万台販売目指す

09年に新型ハイブリッド専用車。年20万台販売目指す

10年度に日米で自社開発車の発売目指す

ディーゼル車

いすゞと提携し開発強化

09年までに新型エンジンを開発へ

10年度から新型エンジンを日米中へ投入

燃料電池車

世界で14台をリース

世界で31台をリース。新型車を09年までに発売

国内で2台をリース。新型車を10年以降に発売

エタノール車

07年春までにブラジルで100%対応車発売

年内にブラジルで100%対応車発売

3年以内にブラジルで100%対応車発売

電気自動車

投入計画なし

投入計画なし

10年代の早い時期に日本で投入

出所:日本経済新聞20061212日朝刊11面表より参照、作成

 

 トヨタやホンダはハイブリッドなど先進技術で先行しており、欧州メーカーはディーゼル技術で強みを持つ。トヨタはディーゼル強化を狙い、いすゞ自動車と資本提携したほか、米ゼネラル・モーターズと独BMWなどがハイブリッド技術を共同開発するなど、環境技術は企業間提携の引き金にもなっている。また日産自動車は、ハイブリッド車や電気自動車に搭載するリチウムイオン電池の生産・販売会社も設立する方針でトヨタやホンダに比べて遅れていた環境対応車で巻き返しを狙っている。[23]

 これからの自動車産業は、世界的な環境規制強化にいかに対応し開発を進めていくかが鍵となっているのである。

 

むすび

 日中のモータリゼーションは同じような傾向があるが、莫大な人口を抱えている中国がより巨大な自動車市場になっていくことは間違いない。だが、その分危惧されているのが環境問題である。中国が環境問題を意識せずこのままの勢いで経済成長を続ければ、地球環境に大きなダメージを与えることになると言われている。ここでは先に大きなモータリゼーションを迎えた日本の対策を述べてきたが、それがそのまま中国でも通用するものばかりではないかもしれないが他にも多くある対策を参考し、また中国独自の対策も模索し環境を意識した自動車生産を進めていってもらいたいと思う。

 

<参考文献>

・  社団法人自動車工業会ホームページ

http://www.jama.or.jp/world/world/world_t1.html

       日本経済新聞 新華社:中国自動車市場、2012年に1000万台超」2006117日朝刊

・  日本経済新聞 中国、経済優先で大気汚染や水質汚濁、環境問題、重いツケ」20061127日朝刊

・  日経ビジネス200673日号151153ページ

・  日本経済新聞 「中国特集――急成長、ほころび目立つ、環境破壊や経済格差拡大」2006102日夕刊、同1127日朝刊

・ 日本李春利 「特集・重大化する中国の環境問題」、『中国年鑑2004』中国研究所編、創土社

          日本のモータリゼーションの到来 

http://www.erca.go.jp/taiki/siryou/pdf/W_A_007.pdf

・ フリー百科事典『ウィキペディア』、「交通事故」

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%80%9A%E4%BA%8B%E6%95%85

・ 社団法人日本自動車工業会ホームページ

http://www.jama.or.jp/safe/accident/accident_t1.html

・ 国土交通省道路局ITSホームページ http://www.mlit.go.jp/road/ITS/j-html/

・ 日経ビジネス2006918日号 51ページより引用、参照

・ トヨタ自動車ホームページ 「自動車リサイクル」

  http://www.toyota.co.jp/jp/environment/recycle/law/recycle_fee/recycling.html 

・ 土屋 勉男・大鹿 『最新・日本自動車産業の実力』20021018日、ダイヤモンド社

・ トヨタ自動車ホームページ 「環境への取り組み」

  http://www.toyota.co.jp/jp/environment/index.html

・ NIKKEI NET「中国ビジネス特集」

http://www.nikkei.co.jp/china/news/20060216d2m1601516.html

・ 岩澤 孝雄 特集「自動車とバリューチェーン」

http://www.jama.or.jp/lib/jamagazine/200205/04.html

・ 社団法人日本自動車工業会ホームページ

http://www.jama.or.jp/eco/energy/table_02.html

・ 社団法人日本自動車工業会ホームページ

         http://www.jama.or.jp/eco/energy/index.html

・ 日本経済新聞 「日産、2010年度に独自ハイブリッド――中期戦略、環境対応で巻き返し」20061212日朝刊

 

<ゼミ論集の感想>

 ゼミ論集のテーマを決めた頃は、資料はたくさんありそうだしなんとかなるだろうという安易な気持ちでいた。しかし、実際に資料を集めて書き始める段階になると、自分が書きたい内容のものがなかなか見つからず、本当に完成させることができるのかと真剣に悩んだ。そこで、日経テレコムなど李先生の「利用しない手はないね!」という言葉を参考にして、また先生の助けもあり新聞や雑誌などから豊富な資料を集めることができた。だがそこでも、今度は資料が多すぎてうまくつなげることができないという問題に直面してしまった。もし嫌々やっていたり、興味のないものだったらすぐ諦めていたかもしれないが、環境問題とモータリゼーションという自分が前から調べてみたいというとても関心のあるものだったので、粘り強くできたと思う。

 この論文に注いだ力をこれからの就職活動にも活かしていけるように頑張りたいと思う。

 

            *          *          *           *

 

李ゼミへの志望動機・私の趣味・旅行体験

04E2181 岩田 悟志

 

志望動機は先生の授業である、「中国経済論」と「東アジアの自動車産業」を受講してみて、中国が今後世界の工場にどのようになるのか、どのように世界経済の中心となっていくのかが研究したかったから志望しました。また環境エネルギー分野にも興味があり、近年著しく成長を遂げている自動車産業のために自動車の需要が増え、それが原因で排気ガスにより地球温暖化などの問題が深刻になっているというものがあります。今後中国がどのように対応するのか、是非考えてみたいです。

私の趣味はスポーツをすることです。特に野球が大好きで、大学ではABCという野球サークルに所属しています。野球は小学2年の時から高校3年までずっと続けていて、高校では硬式野球部に所属していました。高校3年間の野球に全てを懸けてきて、東海大会出場という好成績を残すことができました。高校野球は見る人達にも感動を与えることができるし、やっている自分達にも味わうことができない体験をすることができました。野球を通じて、礼儀、謙虚さ学び、それはこれからの人生に役立っていくものだと思っています。

 旅行体験記ですが、今年の夏に台湾人の友人2人と松井君で行った旅行について書こうと思います。岐阜県の郡上八幡に一泊二泊の旅行に行って来ました。八幡城に行ったり、飛騨牛などのおいしい物を食べ歩いたりしたのですが、外国人と行ったので新鮮に感じました。一週間後に二人が帰国してしまうということがあったので、お別れ旅行も兼ねているという悲しい部分もあり、とても思い出に残っています。



[1] 日本経済新聞 「新華社:中国自動車市場、2012年に1000万台超2006年」117朝刊より引用

[2] 日本経済新聞 「20中国、経済優先で大気汚染や水質汚濁、環境問題、重いツケ」061127朝刊より引用

[3] 日経ビジネス200673151153ページより引用

[4] 脚注3に同じ

[5] 日本経済新聞 「中国特集――急成長、ほころび目立つ、環境破壊や経済格差拡大」2006102夕刊、同1127朝刊より引用、一部修正

[6] 「日本のモータリゼーションの到来」

 http://www.erca.go.jp/taiki/siryou/pdf/W_A_007.pdfより参照、作成

[7] フリー百科事典『ウィキペディア』、「交通事故」

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%80%9A%E4%BA%8B%E6%95%85より引用

[8] 社団法人自動車工業会ホームページ

http://www.jama.or.jp/safe/safe_eco/index.htmlより引用

[9]国土交通省道路局ITSホームページ http://www.mlit.go.jp/road/ITS/j-html/より引用

[10] 社団法人日本自動車工業会ホームページ http://www.jama.or.jp/safe/safe_eco/safe_eco_19.htmlより引用

[11] 脚注10に同じ

[12] 日経ビジネス2006918号 51ページより引用、参照

[13] 脚注12に同じ

[14] 土屋勉男・大鹿隆『最新・日本自動車産業の実力』20021018、ダイヤモンド社から引用

[15] トヨタ自動車ホームページ 環境への取り組み

http://www.toyota.co.jp/jp/environment/index.htmlより引用

[16] NIKKEI NET「中国ビジネス特集」

http://www.nikkei.co.jp/china/news/20060216d2m1601516.htmlより引用

[17] 同上

[18]岩澤 孝雄 特集「自動車とバリューチェーン」

http://www.jama.or.jp/lib/jamagazine/200205/04.htmlより引用、参照

[19] 同上

[20]社団法人日本自動車工業会ホームページhttp://www.jama.or.jp/eco/energy/index.htmlより引用

[21] 同上

[22]日本経済新聞 「日産、2010年度に独自ハイブリッド――中期戦略、環境対応で巻き返し」20061212朝刊より引用

[23] 同上