第1章 ポスト小泉におけるアジア外交の再構築

 

            04E2182  柳原 彰臣

 

はじめに

 2006年日中の国交が正常化してから35年がたった今年、日本とアジア諸国、とりわけ中国との関係が大きく変化しようとしている。日本と中国といえばその歴史認識の違いや靖国問題からその関係が危険視されていた。これは小泉前首相が残した問題であり課題である。小泉前首相は、強硬派で中国やアジアの国々からの反対、国内からの反対も押し切り靖国参拝を毎年行った。これによって中国や韓国との関係は一気に悪化した。

しかしこの小泉前首相は2006年の9月にその期を終え、ポスト小泉にその課題が託された。そして同年9月に発足したのが安倍晋三新内閣である。このポスト小泉である安倍新首相に小泉前首相が冷え込ませて、崩してしまったアジア外交を再構築することが期待されている。その安倍首相へ期待しながらこの論文を完成させたいと思う。

この論文は今もっともタイムリーでホットなテーマを扱っていて今後の展開次第では論文の内容と実際の出来事とズレが生じるかもしれないが、それをふまえて読んでほしい。

 

第1節 外交への課題

1-1 小泉前首相が残したもの

 20014月に小泉純一郎内閣は発足した。同年8月に小泉首相は一回目の靖国参拝を行った。小泉首相は戦死者に対して追悼の念を持って、敬意と感謝の誠をささげるとして中朝韓等が反対する靖国参拝を強行した。そして、このことが中韓首脳との会談を滞らせ、両国との関係を冷え込ませる原因となった。しかし、小泉首相は200588日に「私は一靖国の問題が日本と中国との全体の関係であるとは思っておりません。これからも日中、日韓友好関係を維持、発展させることは、極めて重要だと認識しております。」[1]と話した。結局小泉首相はその任期の間に8回の参拝を行い、アジア諸国から大きな批判を受けた。このように小泉首相は自分の公約を守るために靖国参拝を強行し、アジア諸国との関係が冷え切ったままその任期を終えた。また、次の北朝鮮との問題への対応にも問題があったという声もあり、小泉首相時代の成功の裏に様々な残された課題が浮き彫りになった。

 

1-2 いまだに残る北朝鮮の脅威

 現在日本がもっとも危険で理解ができない国なのが北朝鮮であろう。北朝鮮のミサイル試射、武装工作船の接近、過去の日本人拉致など[2]はその北朝鮮の脅威の中でも印象深いできごとであろう。また多くのニュース番組でも北朝鮮の街中の映像などが流されているが,多くの謎が残る国である。2

安倍首相は、父晋太郎の秘書をしていた時代から、拉致問題に取り組みはじめ、以後一貫して、拉致問題において強硬路線を取りつづけ、それが世の大方の賛同を得た。安倍首相も、自分が政治家として世に認められるようになった最大のきっかけが拉致問題にあるということはよく自覚しているから、安倍内閣を作るにあたっても、拉致問題に最大限に配慮した内閣を作った。例えば内閣に、「拉致問題対策本部」を設置し、専任の事務局を置いた。そして、安倍総理自らがその本部長となった。その上、塩崎官房長官を拉致問題担当相に任命した。さらに、内閣補佐官にも拉致問題担当補佐官を置き、拉致生存者帰還にあたって中心的に世話役を果たしたことでよく知られる中山恭子補佐官をそれにあてた。さらに、衆院にも参院にも、拉致問題特別委員会を作った。このように拉致問題を担当する組織を、政府にも議会にもガッチリ作った上、総理の所信表明演説でも拉致問題に相当の時間をさいて、「拉致問題の解決なくして国交正常化なし」というこの問題に関する大原則を表明した。そしてまた、北朝鮮との交渉は、「あくまで拉致被害者全員生存の原則に立つ」という大原則も表明した。そして、最近話題になっている核実験問題に対しては、さらに北朝鮮への経済制裁をふまえた厳しい態度でのぞむとその脅威に立ち向かう姿勢を示した。3

しかし実際のところは具体的な解決策はまだ出ておらず、「具体的にいったいどのような手を打とうとしているのか、可能性はいったいどこにあるのか」という野党議員からの問いに安倍首相が正面きって答えず、その前に同議員が持ちだしたもうひとつの問題をめぐって、「そんなことを言うのは失礼じゃありませんか」と安倍首相が語気もあらわに怒り狂ったので、委員長席にあわてて自民党理事と民主党理事が駆け寄り、審議が中断してしまうという大騒ぎがあったという[4]。このようにいまだに解決しない拉致問題、北朝鮮問題に対して安倍首相に対しての批判がある。

1-3 安倍新首相の狙い

1つ目は、文化、伝統、自然、歴史を大切にする国であります。
2つ目は、自由な社会を基本とし、規律を知る、凛とした国であります。
3つ目は、未来へ向かって成長するエネルギーを持ち続ける国であります。
4つ目は、世界に信頼され、尊敬され、愛される、リーダーシップのある国であります。[5]

 これは、安倍首相が自身の所信表明演説の時に語った、「美しい国」の姿のことである。そのうえで「活力に満ちたオープンな経済社会の構築」「財政再建と行政改革の断行」「健全で安心できる社会の実現」「教育再生」「主張する外交への転換」の5つの政策目標を掲げた。具体的な政策課題としては、①経済成長に貢献するイノベーションの創造に向け、2025年までを視野に入れた戦略指針「イノベーション25」を策定する、②総合的な再チャレンジ支援策としてパート労働者への社会保険の適用拡大などを進める、③国民負担の最小化を目標に歳出削減を徹底するとともに、抜本的な行政改革を推進し簡素で効率的な「筋肉質の政府」を実現する、④教育基本法改正案の早期成立を期すとともに、教員免許の更新制度や学校の外部評価制度を導入、政府に教育再生会議を発足させる、などを示した。[6](表1) 特に外交・安全保障面では「世界とアジアのための日米同盟をより明確にし、アジアの強固な連帯のために積極的に貢献する外交を進める」として「官邸における司令塔機能を再編・強化し、情報収集機能の向上を図る」「日米の信頼関係をより強固にするため、総理官邸とホワイトハウスが常に意思疎通できる枠組みを整える」と表明。対中韓関係については「未来志向で、率直に話し合えるようお互いに努めていく」と述べた。対北朝鮮問題では「拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はない」として、首相を本部長とする拉致問題対策本部の設置を明らかにした。[7]

 

 

 

 

表1  安倍内閣政策課題

 

格差・雇用

社会保障制度をセーフティネットとして持続可能なものに改革
働き方、学び方の複線化で多様な生き方とチャンスを実現
フリーターの積極採用など「誰もがチャレンジ・再チャレンジできる社会」を実現、勝ち組、負け組が固定化しない社会を目指す
テレワーク人口を倍増させるなど、従来の勤労価値観を超えた働き方の見直しを推進  道州制の導入で地方分権を推進

社会保障

年金・医療・介護・社会福祉の一体的見直しを図る
社会保障番号の導入、徴収一元化を検討する
社会保険庁の徹底的改革。厚生と共済の被用者年金を一元化する
年金受給見込み額通知の実施前倒し等、親切で分かり易い年金制度の確立するとともに確定拠出型年金の拡充等により、選択型セーフティネットの整備。障害者の真の自立と参加を可能にする社会の実現

少子高齢化

家族の価値や大切さ、地域のあたたかさの再生

仕事と家庭を両立できる社会にし、経済的な支援も検討する
女性や高齢者の積極的な雇用で労働力減少を補い、労働生産性を向上させる
小児科、産婦人科等の医師不足対策の推進。健康な高齢者を増やし、医療費や介護費を削減する

経済・財政

歳出・歳入一体改革の具体化においては、経済成長を前提に、歳出改革に優先取り組み
消費税については成長戦略を進めて自然増収を狙う

外交・靖国問題

中国・韓国など近隣諸国との信頼関係強化
日中両国は政治問題を経済関係に影響させてはならない
靖国を外交問題にしようという「よこしまな人」がいるのなら参拝の有無を宣言する必要はない

教育

すべてのものに高い学力と規範意識を身につける機会の保障
「基礎学力強化プログラム」と公教育の充実・強化。学校、教師の評価制度の導入
学校教育における社会体験活動の充実

憲法・集団的自衛権

新たな時代を切り開く日本に相応しい憲法の制定に向けて取り組む
現行の憲法解釈の中で(集団的自衛権が行使できるような)新しい解釈があるかどうかも含め検討するべき

出所:市民メディア・インターネット新聞JANJANhttp://www.janjan.jp/government/0609/0609050701/1.php#abeseikenから引用

 

また毎日新聞(2006930日)の解説記事は演説は「教育再生会議や拉致問題対策本部など首相をトップとする組織の創設を盛り込み、複数の省庁にまたがる施策も積極的に提唱するなど、官邸主導による政策推進を打ち出したのが特徴だ」と分析している。「しかし、新設組織の乱立や官邸による政策の取りまとめは各省庁の権限を奪うことになり、抵抗も予想される」として「実効性が課題となりそうだ」と述べている。所信表明では、政見構想に盛り込まれていた「戦後レジームからの脱却」「開かれた保守主義」といった安倍氏の思想信条をうかがわせる表現が見送られた。その背景について読売新聞(2006929日夕刊)の解説は「『外国の視線』を意識したためとみられる」として「一部の外国紙からナショナリスト扱いされる安倍氏は、保守的な立場を薄め、『国・地域・家族を愛する普通の政治家」であることを訴えざるを得なかったようだ」と分析している。[8]

これに対して野党側は「抽象的な言葉が踊っているが、内容は極めてあいまい」(菅直人民主党代表代行)、「カタカナが多くてイメージだけで空疎」(福島瑞穂社民党党首)、「海外で戦争する国づくりに踏み込んだ。米国と一緒に戦争するための検討を明言したのは重要だ」(志位和夫共産党委員長)と一斉に批判した。

 

第2節 安倍晋三総理大臣の歴史認識

2-1 安倍首相の立場

 安倍首相は母方の祖父に岸信介という元日本の内閣総理大臣を持つ。岸信介とは1945年(昭和20年)815日にアジア太平洋戦争が終結すると、故郷・山口市に帰っていた所をA級戦犯容疑者として逮捕され、巣鴨拘置所に収監される。しかし、冷戦の激化に伴い、アメリカが対日政策を大きく転換。戦後の日本を「共産主義に対する防波堤」と位置づけ、旧体制側の人物を復権させたため、岸信介は戦犯不起訴となり、東条ら7名の処刑の翌日に釈放された。1956年(昭和31年)12月、外務大臣として石橋湛山内閣に入閣するが、2ヶ月後に石橋が病に倒れ、首相臨時代理を務める。石橋により後継首班に指名され、石橋内閣が総辞職すると、全閣僚留任、外相兼任のまま第56代内閣総理大臣に就任したという人物である。[9]

ここで注目しておいてほしいのはいわゆるA級戦犯を祖父に持つということである。これとつながり安倍首相は基本的に東京裁判でのA級、BC級戦犯の人々を犯罪者ではないという信条を持っている。このことが日本の太平洋戦争を正当化する考え方であるという批判につながっている。

2-2-1 歴代首相の歴史認識

安倍首相が総理大臣になった頃の会見ではよく過去の総理大臣の談話を踏襲するかどうかがよく質問の的になった。ここで過去の総理大臣の談話をまとめておく。(表2)

 2 歴代首相の歴史認識

村山富市首相談話

 

19958

遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた。この歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのおわびの気持ちを表明する。この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い追悼の念をささげる

 

小渕恵三首相

199811

日本側は過去の一時期の中国への侵略によって中国国民に多大な災難と損害を与えた責任を痛感し、深い反省を表明した

小泉純一郎首相談話

 20058

かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた。歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明する。過去を直視して、歴史を正しく認識し、アジア諸国との相互理解と信頼に基づいた未来志向の協力関係を構築していきたい

安倍晋三首相

 200610

我が国がかつてアジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与え、傷跡を残したことに対する深い反省の上に戦後60年の歩みがある。その思いはこれからも変わることはない

出所:2006109日朝刊3面を参考に筆者が作成

 この表の通り、発言だけを見れば安倍首相は過去の総理大臣の発言、談話を踏襲しているようにみえる。しかし、時間が経つにつれこの踏襲しているようにみえる安倍首相の発言にズレがみえてくる。

 

2-2 安倍首相の発言の変化

 安倍首相は過去の会見で過去の日本がおこなった侵略戦争と植民地支配を謝罪した村山談話について質問されたとき踏襲するととれる答えを出した。しかし安倍晋三首相は衆院予算委員会で、歴史認識をめぐり民主党の菅直人代表代行と論争を展開した。その中で、首相は祖父の岸信介元首相が日米開戦時の商工相として開戦詔書に署名したことについて「そのときの判断は間違っていた」と明言した。安倍首相と菅氏の主なやりとりは次の通りである。                   

安倍首相、管氏談話

菅氏 従軍慰安婦(への日本軍の強制関与)を認めた河野談話を受け継ぐのか。
首相 河野談話は政府として出され、現在の政府でも受け継がれている。私を含め政 

府として受け継いでいる。
菅氏 以前は談話の前提が崩れたと言っていた。
首相 いわゆる「従軍慰安婦」といわれた方々から事情を聴いたときの状況が当初報

道されていた内容と違うと疑問を持ったが、談話で政府としての姿勢を示した。私の内閣で変更はしない。

菅氏 戦後50年の「村山談話」の内容は首相の考え方と同じか。
首相 談話は閣議決定され、内外に対し政府の考え方を述べたものだ。新たな談話を 

作って刷新する考えはない。大変な被害を与えた反省に立ち日本は自由で民主的な平和に貢献する国をつくってきた。

菅氏 祖父の岸信介元首相が日米開戦時、大臣として開戦詔書に署名したことへの評価は。

首相 開戦の結果、起こったことに大きな責任を感じていたと思う。祖父は日本の再

建に命がけで取り組んだ。
菅氏 署名は間違っていたという認識か。
首相 政治は結果責任だから、そのときの判断は間違っていた。
菅氏 満州国についてはどう考えるか。

首相 歴史の認識や分析を政治家がいちいち神のごとく判断するのは間違っている。政治家の言葉は政治的な意味を持ち、外交的な問題を生ずることもある。歴史家に任せるべきだ。[10]

 このように安倍首相はその自身の歴史認識について深く追求されると答えを曖昧に

する態度をとるという特徴があり、その歴史認識に対して疑問や批判が起こっている。

また安倍首相は総裁選の前から靖国問題を争点化しないと発言していたが自身が総理

大臣になる前官房長官時代には2006年の4月の靖国神社大祭には参拝していたこと

が明らかになった。[11]

 

第3節        中韓の安倍新内閣への反応

 前述したとおり小泉前首相による靖国参拝の強行によってアジア諸国、とりわけ中国との外交関係は冷え切ってしまった。この関係を修復することが安倍首相にとっての課題のひとつであるといえるが、安倍首相が日本のトップである総理大臣になったことに対して中韓の人々はどう評価し考えているのか気になるところである。ここで一部ではあるがその評価を載せたいと思う。

3-1 中国の反応

 中国青年報は、日本国民の83.2%が最近の安倍首相の中国、韓国訪問を「積極的」または「かなり積極的」に評価しているとする共同通信社の101011日の世論調査の結果も紹介している。2006926日に就任した安倍氏は、戦後の首相の中で初めて、最初の公式外遊先に中国を選んだ。また日本の首相としては5年ぶりの訪中だった。[12]

中国青年報によると、ほとんどの中国人は日本が戦時中の歴史を取り繕ろおうとしていることと日本の指導者による靖国神社参拝の二つが両国関係における主要な障害であると考えている。そして93.4%の人が、長期的、安定した、健全な中日関係を維持するためには靖国神社問題が適切に処理されなければならないと答えた。中国青年報は、安倍訪中の際、両国の指導者が大きな誠意を示した、中日関係が「曇りの後、晴れる」よう期待するというアナリストたちの言葉を引用している。[13]

歴史問題について、安倍首相は温家宝中国首相に、日本は第二次世界大戦でアジア各国の人々に大きな損害と苦痛を与えており、このことに深い反省を表明する、この立場は今後も変わることはないと述べた。[14]同紙はこれについて、中国人民は安倍氏の歴史に対する態度を歓迎し、また安倍氏が今後靖国神社に参拝するかどうかはっきりさせていないことから、中日関係について「慎重な楽観的」見方をしていると指摘している。今回の調査によると、45.4%の人が中国と日本の関係が改善されるかどうか「なんとも言えない」と答えた。[15]

また、安倍首相が訪中した際、胡錦濤国家主席は日中関係の発展過程を回顧し、国交正常化以来の両国関係の発展を積極的に評価した。また、新世紀に入り、日中関係が新たに深く、広くなる方向に進もうというときに、日本の一部の指導者がA級戦犯を祭る靖国神社への参拝にこだわって日中関係を困難な局面にしたことは、われわれが目にしたくないものだとした。胡主席は、安倍氏が首相就任後、日中両国は関係に影響を与えている政治的障害を克服し、両国の友好協力関係が正常に発展するよう促すことで合意し日中関係の改善と発展に条件が整ったと述べ、その訪中を評価した。[16]                                                         

そして、中国側は、中国は平和的発展を進め、日本を含む各国とともに発展、繁栄していくことを強調した。日本側は、中国の平和的発展および、改革開放以来の発展が日本を含む国際社会に大きなチャンスを与えたことに積極的な評価を示した。また日本側は、戦後60年以上平和国家としての道を歩んできたこと、今後も平和国家としての道を歩んでいくことを強調した。中国側はこれに対し、積極的な評価を示した。[17] 

3-2 韓国の反応

 韓国は、安倍首相について「期待半分、警戒半分」の雰囲気だ。「期待」は、靖国神社問題や竹島問題などで小泉政権の対韓外交とは異なる「何らかの変化があるはずだ」というものであり、「警戒」とは「ネオコン(新保守派)の代表者で日本政治の右傾化がさらに深まるのでは」というものだ。潘基文(バンキムン)外交通商相は、韓国マスコミ団体の討論会で対日外交の展望について「先ごろ会った安倍氏は(韓国に)友好的で、歴史認識でもわれわれの説明に謙虚だった。(両国関係の)変化のきっかけになるのではないかと期待している」と語っている。[18]

 一方、韓国マスコミは父・安倍晋太郎、祖父・岸信介という家系に注目し、その対韓国、対朝鮮半島政策を論じているが、ここでも「期待半分、警戒半分」だ。父、祖父とも朝鮮半島の安保上の重要性など韓国重視の姿勢を取ってきたいわゆる“親韓派政治家”だったことや、安倍氏の夫人が“韓流ファン”で韓国語に親しんでいるといった話などもあって、韓国への配慮が期待できるのではないかというわけだ。

これに対し、旧・親韓派は基本的には過去に反省のない右派であり、その血統を継ぐ安倍氏は韓国配慮より日本の立場を強く出そうとする民族主義的傾向が強いとして、警戒する声も強い。韓国政府内では、外交通商省サイドは「期待」を強調することで日本の“変化”を誘導し、日本側と呼吸を合わせながら関係打開を図ろうとしている。しかし対日強硬論の大統領サイドは警戒論が強く、先に側近スタッフがいち早く「A級戦犯分祀(ぶんし)でも首相の靖国参拝には反対」と言い出すなど日本非難、日本牽制(けんせい)に余念がない。[19]

また、109日に盧大統領と安倍晋三日本首相は、青瓦台(チョンワデ、大統領府)で日韓首脳会談を行ったが、靖国神社参拝と歴史教科書歪曲など過去の歴史問題などを論議した。盧大統領は「未来の日韓関係をどう解決していくかなどをめぐり対話の扉を開く首脳会談だった」とし、「しかしもし靖国神社参拝がまた強行されれば日韓関係は再びこう着状態に陥るだろう」と述べた。[20]

 

むすび

 安部政権が誕生し日中韓の関係の修復が期待されているが、やはりそこで問題になってくるのが小泉前首相が残した靖国問題が中心になっている。安倍首相自身、祖父にA級戦犯を持つ。しかしながら、安倍首相が総裁選の前に話した「靖国問題は争点化しない」という発言について筆者は疑問に思う。安倍首相は靖国問題を外交問題にしたくないのであろうが、小泉前首相があれほどまでにこだわって行った靖国参拝によって発生してしまったこの問題をいまさら争点化せずアジア外交を真に再構築することができるのであろうか。過去に犯してしまった罪は日本のトップとしてはっきりと謝罪して、その態度をそれぞれの国に見せることがまずは初めにやるべきことではないかと思う。

 一方、いまだに残っている北朝鮮という国の脅威。拉致問題や核実験問題が残っているが、いまやこの問題は日本と北朝鮮だけの問題ではなく中国や韓国、アメリカや国連とも協力して解決していかなければならない問題になった。この点においては安倍首相は今まで小泉首相がしてこなかった「経済制裁」という厳しい措置をとるとはっきりと名言したことは評価したい。これによってより中国や韓国との協力体制をひくことができるからだ。

 古来から中国や韓国というのは日本の隣国である。その隣国との関係が冷めたまま、ましてや、中国の国内で「反日デモ」が起こるような状態では我々日本人にとっても気持ちの良いことではない。今日本と中国は「政冷経熱」の状態だと言われている。この状態を安倍政権の手によって少しでも「政熱経熱」の状態に近づけるようにしてほしいと願う。

 

 

<参考文献>

・安倍晋三著「美しい国へ」 文藝春秋2006

・日本経済新聞2006109日朝刊

・首相官邸ホームページ 小泉内閣総理大臣記者会見

http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2005/08/08kaiken.html

ポリシーフォーラムhttp://www3.ocn.ne.jp/~yy-dprk/dprk/kitachousennokyoui.htm

・日系BPNET 立花隆の「メディアソシオポリティクス」 http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/061013_gaikou/index5.html

     首相官邸ホームページ 安倍首相の所信表明演説全文http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2006/09/29syosin.html

     FPCJメディア・リソース

http://www.fpcj.jp/j/mres/japanbrief/jb_674.html

     市民メディア・インターネット新聞JANJANhttp://www.janjan.jp/government/0609/0609050701/1.php#abeseiken

     フリー百科事典「ウィキぺディア」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%B8%E4%BF%A1%E4%BB%8B

     yahooニュース産経新聞http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061006-00000003-san-pol

     中華人民共和国駐日本大使館ホームページ

http://www.china-embassy.or.jp/jpn/zrgx/t277069.htm

・チャイナネット

http://test.china.org.cn/japanese/264768.htm

・産経新聞ホームページ「IZA」

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/korea/17392/

 

 

 

<ゼミ論集の感想>

 この文章の作成に入って何日経っただろうか。はっきり言ってこの論集の作成に入るまではこの論集作りをなめていた。どうせ、パソコンを使って調べて、書けばあっという間に終わるだろうと思っていた。だから作成の準備を怠り、資料集めなどをずっとしていなかった。

しかし、実際にとりかかってみるとその莫大な量の資料から自分が必要とする真の資料を見つけ出すのだけでもものすごい時間がかかった。正直焦った。まわりのみんなの発表をゼミ合宿で聞いたときいかに自分が遅れをとっているかを実感した。そこからさらに編集長にまで指名されものすごく戸惑った。だが、先輩たちが作り上げてきたこの論集という李ゼミ独特の伝統をなくしてはいけないと思ったし、実際この「ポスト小泉」の話題を調べていくと本当に興味どころかもっと調べたいと思うようになった。そしてそこからは日々朝の新聞やニュースは欠かさず見て、その日その日で動いていく安倍首相の動きをできる限り観察した。そして自分の中で努力して作りあげたのがこの論文である。

しかし、まだまだ調べ足りないのが正直なところである。何かない限りは卒論もこのテーマで書こうと思っている。だから、これからも安倍首相の動きに注目していきたい。また、自分には編集長という大役がまだ待っている。この大役を見事成し遂げ、今後の自分の将来への糧とできるように最大限の努力を尽くしたい。

 

*         *        *         *

 

李ゼミへの志望動機・私の趣味・旅行体験


04E2182  柳原 彰臣

 

 自分が李ゼミを志望した理由は、現代の中国事情に興味を持ったからである。現代の中国は戦後日本のような急速な発展を遂げている。「世界の工場」と呼ばれ、中国製の製品は日本にも広く出回っている。李ゼミではこのことに注目して調査し、発表していきたい。また、学生自らの力によってゼミを形成していけるということにも魅力を感じた。これから社会に出て行く上で自分の意見をはっきりと主張するということは重要なことである。その能力を磨けるゼミだと思い志望した。

 自分の趣味はとにかく体を動かすことだ。高校時代までずっと野球を続けてきたためもちろん野球をすることは好きだが、サッカーでもテニスでも体を動かすことは何でも好きである。それとともにスポーツを観戦することも好きだ。自分が様々なスポーツに挑戦して、そのスポーツの魅力に取り付かれるし、そのスポーツのことをより知りたくなる。その気持ちでレベルの高いものを見ると、とても感動するし、目標もできる。何よりスポーツは純粋に興奮する。

 自分は小学六年生の時にイタリアへ行ったことがある。ミラノで飛行機から降りたあと、ミラノに宿泊し、ベローナ、フィレンチェ、ベネチア、ローマと北から南へ横断する形で旅行をした。食事はどの町でも日本人の口に合うようなイタリアンばかりで、ピザが一人前一枚という豪華なものばかりだった。その頃はまだ「ユーロ」は導入されておらず、「リラ」という通貨がお金だった。「リラ」は80リラで1円というとても安いもので親が1万円を両替したときに80万リラという多くの札束を持っていたことに驚いた。しかしイタリアは大変治安が悪く実際同行した人がお金をすられた。これはイタリアの貧富の差が激しいからである。このような悲しい現実を見て日本に近く人口が多い中国に対して大変興味を持ったである。

 

 




[1] 首相官邸ホームページ 小泉内閣総理大臣記者会見

http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2005/08/08kaiken.htmlより引用

[2] ポリシーフォーラムhttp://www3.ocn.ne.jp/~yy-dprk/dprk/kitachousennokyoui.htmより引用

[3]日系BPNET 立花隆の「メディアソシオポリティクス」 http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/061013_gaikou/index5.htmlより引用

 

 

[4]脚注3と同じ

[5] 首相官邸ホームページ 安倍首相の所信表明演説全文http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2006/09/29syosin.htmlより引用

[6] FPCJメディア・リソース

http://www.fpcj.jp/j/mres/japanbrief/jb_674.htmlを参照

[7] 同上

[8] FPCJメディア・リソース 前掲

[9] フリー百科事典「ウィキぺディア」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%B8%E4%BF%A1%E4%BB%8Bより引用

[10] yahooニュース産経新聞http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061006-00000003-san-polより引用

[11] 日本経済新聞2006109朝刊3面を参照

[12]中華人民共和国駐日本大使館ホームページ

http://www.china-embassy.or.jp/jpn/zrgx/t277069.htmより引用

 

[13] 同上

[14] 脚注10と同じ

[15] 脚注10と同じ

[16] チャイナネット

http://test.china.org.cn/japanese/264768.htmより引用

[17] 同上

[18] 産経新聞ホームページ「IZA」

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/korea/17392/より引用

[19]脚注19と同じ

[20]同上