豊橋 ありがとう

                

05ES1008 楊 敬

異国の土を踏んだ瞬間、何となく一種の寂しさと不安が生まれた。これから一年間、今まで生まれ育った中国とは異なった価値観を持った人と一緒に、言葉、文化、習慣の異なった国においてどんな生活になるのか非常に心配した。だが、いろいろなことを経験し、様々な人達の助けにも恵まれ、曲がりなりにもやってきた今、気持ちの心境に変化が見えてきた。そして、この気持ちはこれからも変わらないと思う。

 

日本到着した次の日

学校からアパートへ帰るところ。歩道橋に立っていた私。

「どうしよう

「学校に来た時に確かにこの歩道橋を渡ったのに、帰りは右か、それとも左か、どっちも似ているようだが、どっちも似ていないようだ」私は、道に迷って焦っていた。私は、暗くなってきた空を見ていて少し怖くなってきた。

しかし、どんなに待っていても、同じところに住んでいる留学生の姿は、どこにもなかった。仕方がなく勇気を出して、通りかかった女子学生に声をかけた。

「あのう…」

「はい」

「すみません、私は、留学生なんですけど、昨日日本に来たばかりで、ちょっと道がわからなくなってしまったんですけど

「あっ、そうですか、どこに住んでいらっしゃいますか」と丁寧に返事してくれた。彼女は、一見無愛想な表情だが、すごくやさしかった。

私は、とても安心し、また近所の人なら絶対知っている場所だと思って言った。

「私は、愛知大学のインターナショナルハウスに行きたいです」

しかし、意外にも彼女の口からは、「一度見たことがありますが、あまり自信はありませんが

私は、他の違う人に聞くしかないと思い、「そうですか、ありがとうございました」と言い、身を振り替えした。

しかし、その時、「よろしければ、一緒に探しましょう」と彼女から声をかけてきた。

その瞬間、私は本当にびっくりした。いや、というより本当に喜んでいた。女子学生の顔を見たとき、私は、心の中で一種の暖かさを感じていた。しばらくして、また「ありがとう」とお礼を言った。

女子学生は確かにこの辺りの地理に詳しくなかった。二人で、周りをいろいろ探し歩き、やっとインターナショナルハウスを見付けた。

「あそこです。もう道がわかりました。帰ってください。」真っ暗になった空に気づき、私は女子学生にそう言っていた。

「あそこですか、いいえ、やはりあそこまで行かないと心配です」彼女は冷静な口調で私に言った。私は感謝感激で「ありがとう」とお礼を言うことしかできなかった。そして、女子学生はアパートの門の前まで私を送ってくれた。

「今度は道を忘れないでください」別れた時の女子学生の笑顔は、今でも印象深く頭に残っている。これ以後、私は一人で帰る時、彼女のその笑顔を思い出すと何となく心強くなる。

「お嬢さん、本当にありがとうございます」

 

 

自転車でスーパーからの帰り道

「うそー、動けなくなった!」スーパーでいっぱい買い物をした私は、自転車に乗り帰ろうとしたが、自転車のチェーンが外れていることに気付いた。

スーパーから寮まで歩いて30分ぐらいかかる。焼け付くような日差しの下で30分歩くのがどうしても嫌だった。買った物を地上に置いたまま、木の枝を探してきて一生懸命チェーンを戻すようにがんばった。だが、どんなにがんばっていても無駄だった。あきらめようとしたちょうどその時、通りかかった三人家族のお父さんが声をかけてきた。

「どうしたんですか、自転車が壊れましたか」

「ええ」私は、頭も上げずにチェーンを戻すことに専念していた。

「そうか」とお父さんは言いながら私の隣にしゃがみ、チェーンを戻し始めた。そんなに親切に助けてくれるとは見当もつかった。

お父さんが手伝ってくれている最中、一時に話が詰まって何を言ったらよいかさっぱりわからなくなった。お母さんも子供も帰らずに待っていた。子供はまだ幼稚園の年だと思う。ずっと自転車をもてあそんでいて、どうもこの壊れた自転車に好奇心を持っていたようだった。

その時、「パパに邪魔しないでね」とお母さんは子供に言っていた。

5分、いいえ、10分。とにかく、お父さんは汗をいっぱい掻き、手もすごく汚してチェーンを直してくれた。

「よし、やっとできた。でも、この自転車は危ないぞ。気をつけてね」

その時、私は何を考えていたか全然わからなかった。そういわれて初めてお礼を言い出した。3人の遠く去った後姿を見て、胸に感動の気持ちでいっぱいだった。

「見知らぬおじさん、ありがとうございます」

小さなことにも関わらず、私は豊橋に来ていつも他人の助けに恵まれていた。ほんの小さなことでも人間の心の優しさを十分に感じていた。いつの間にか、ここでの生活に慣れるようになってきた。

以前あった不安と寂しさもいっぺんに消えた。考えてみれば、このような生活が好きになれない人はいないだろう。暖かい雰囲気に囲まれて、友達はともかく、見知らぬ人までも常に思いやりを示してくれる。このように、私は他人の心の愛情を十分受け取り、感激と愛情の気持ちを持って、周りの人と付き合って行こうと思うようになった。

「いつでも、この愛の気持ちは忘れない。」これは、豊橋に教えてもらったことだ。心を込めて「豊橋、ありがとうございます」と言いたい。