補論2 高まる反日感情

『その時日本と中国の間で』

 

近藤 修  

 

2005年某日、とあるファーストフード店でこんな事を聞かれた。

.是日本人?』(あなたたちは日本人なの?)

しかも店員に。そこでとっさに出た言葉は

『不是,我国人』(いや、私たちは韓国人ですよ。)

だった。それまでの生活の中でも、日本人なの?と聞かれたことは有る。が、時期が時期なので、思わず韓国人です。なんて言ってしまった。別に日本人である事がやましいわけでもないのに。

そう時は、反日感情が日に日に高まっていた4月。週末になると南方ではシンセン、上海。北方では首都北京などで反日デモが行われていた真っ只中である。この一連の反日運動のようすは、日本のニュースでも、日々トップ記事として取り上げられ、中国のどこかで反日運動が起これば、その映像や写真などの情報が流されていた。(実際日本にいたわけではないので、聞いた話だが)そのニュースを見た知り合いからメールが来たりもした。普段はあまり連絡も取らないような友達まで。彼らの言う事は決まって一つ、

『今、中国で日本人外とか歩いて大丈夫なの?早く帰ってきたほうがいいんじゃない?』

だ。確かに日本のニュースを見ていれば、中国全土で反日感情が高まっていて、反日デモが行われている。その中には、大使館や日本料理店が被害を受けた様子などが報道されているわけで。そんな様子が毎日のように目に入ってきたらこう思うのも頷けるが。

確かに、道を歩いていたら、『お前ら日本人だろ?もっと端っこ歩けよ!』なんて言われた友達がいたり、その他にも細かい事を挙げればいくつかはある。例えば、学校主催の留学生運動会が後日に延期されたり、教室に張ってあった地図が、いつの間にか外されていたり…。

しかし、実際中国で生活(天津)していた自分としては、そこまで肌で危険を感じるほどのものはなかった。上海やシンセンだったらまた話は変わったのかもしれないが。むしろ、日本と自分との温度差にビックリしていたぐらいである。

そう、この反日感情高まる中でも、普段となんら変わりなく中国人の友達と遊んでいた。で、ある時こんな事を聞いてみた。

『今、反日感情が高まっていて、学校では日本人はあんまり外に出ないように。なんて言われているんだけど…。』

そしたらこんな答えが返ってきた。

『今中国人が怒っているのは中国にいる日本人じゃなく、日本政府に対して怒っているんだ。確かに一部の中国人が暴動とか起こしているけど、すべての中国人がそういう感情をもっていると思われるのは悲しい。』

と。 これを聞いて私も全くその通りだと思った。今回の反日運動、原因はいろいろある(歴史問題や常任理事など)だろうが、ネットやマスコミに便乗しここまで大きく広がってしまった感が強い。中国のあるサイトでは、反日デモに参加を促すような書きこみがされていた。これらの中国人の活動のみが日々ネットやニュースで繰り返し報道されてしまった。中国人が日本を批判し、また、それを見た日本人が中国なんかと反論する。その結果、日本人の中国に対するイメージは悪くなり、日中両国の溝はますます広がってしまったように思えてならない。

 時は流れて911日。日本で衆議院議員選挙が行われた。この選挙にはとても興味があった。結果小泉率いる自民党の勝利という形で終ったのだが、その数日後中国の新聞にこんな記事が出た。

  

 

内容はどちらも選挙に勝った自民党の事に触れている。その中で小泉首相の靖国参拝問題にも触れている、今後もしも小泉首相が靖国に参拝するような事があれば、今後の日中関係に再び影響を与えるだろうと。

今回私は、日本と中国の間で、一連の反日運動の流れを見てきた感がある。そんな私に残ったのは空しい気持ちだけであった。今日本と中国は、確かに経済面では、お互いになくてはならない存在となっている。が、裏を返せば、深まっているものは経済面だけで、日中友好の面から見ると、むしろ両国の関係は離れてく一方なのではと感じざるを得なかった。