補論1 靖国問題と今後の日中関係について

Interviewer            大野 裕平

Answerer        唐奇芳(北京大学 国際関係学院)

 

Q、2005年10月17日、小泉首相の5度目の靖国参拝について、どう考えるか。

A、まず今回の参拝は去年と違うことに注目したい。正式参拝ではなくて、普通の参拝であることだ。しかし形式は違うが、本質は同じである。自民党内部の人からも反対の声はあるのに、なぜ行くのか? 

  まず一つの理由として、前回の選挙支持率が高かったので、内部の反発を抑える自信があるということ。二つめは、55年体制が崩れてから、最も在任歴が長い首相である。このことは民主党に対しても自信があるといえる。結局、自分のやりたいことを貫く自信があり、反対も抑えることができる条件がそろっている。脅威もないはずだ。

  そして最も重要なのは、条件や原因ではなくて、

実は個人の希望とプラスして企業や裏の力がはたらいているのではないか?と考える。

Q、なぜ今回も靖国参拝をしたのか。今後はどうか。

A、在任1年目から行っているという小泉首相の習慣でもあるので、来年も行くと思う。

  中国語で「騎虎難下」という言葉がある。乗りかかった船の意だが、最初の1年目に行けば、毎年行かないといけないのだろうと考える。

  現在の日本を考えると、今後、アジアにおける立場は難しくなるのではないか。日中会談の予定があったのに、理解しにくい選択なように思う。一番疑問なことは日本の対中政策である。仲良くしたいと友好関係を求める一方で、なぜ靖国へ行くのか。まず政策に問題がある。このようなシナリオは少なからず予想できるはずで、反対されることはわかっているのに、この行動の日本側の考えが分からない。日本の対中、対韓政策には疑問である。

Q、中国メディアの反応は? 現在の日本政府と小泉首相の行動について。

A、中国の新聞には、「日本国民の大半が小泉首相の靖国に行く行為を反対している」というアンケートが目立った。今回の参拝はある意味では絶妙のタイミングであったように思う。注目は神船六号に集まっていたからである。

  前回の選挙で大勝したのは、郵政民営化の件で勝ったので、外交政策で勝ったのではない。現在の日本は民主国家とは言いにくい点も多いように感じる。

  国民と政府の意見が食い違っているのではないか?選挙の投票率も低いし、国民の民意がしっかり反映されているとはいえない。よって、国民の代表である小泉首相だが、彼または周りの人間による単独行動であるという一面もある。

Q、靖国神社の認識について

 

A、確か、1987年ごろ東条英機らA級戦犯を祀った時期から、靖国神社は中国に認識されて、問題となった。認識として、靖国はA級戦犯が祀られている場所。日本側の細かい靖国の認識は、中国側には理解しにくいのが事実。一般的な認識はみな同じである。それよりも、政府の態度は国の態度であるから、今後どうして行くのか、ちゃんとした反省の態度がほしい。

Q、今後の日中関係について

 

A、日本側の考えの一つに、共産党による情報コントロールが指摘されるが、それはないように感じる。日中は特別な関係であり、中国側が感情的なのも事実である。しかし、現実主義観点から、説明できない部分が多い。お互いの理解と交流が必要である。

  好き、嫌いの態度ではなくて、理由が大事である。理由は、まずお互いを知ることが必要だと考える。自分の知らない世界に対して意見は言えないので、今後は両国の理解と、正しい認識が必要である。

☆今回のinterview を通して

日本の対中政策に疑問があるというのは同感であった。日本側の真意がわかりにくい。一体なにを考えているのか。何を目指しているのか。疑問はつきない。個人的な感想として、先に何人だからという先入観で人を見ずに、その人個人を見て判断したいと思っている。お互いの理解、つながりは大切である。先入観というフィルターは、個人と知り合うのに壁となる気がする。

国レベルで、お互いの正しい理解ができて、先入観のフィルターの壁が崩れたら、と願う。

 

2005 10 21日  勺園にて