花花公子―森田正幸の大学院体験記―

神戸大学大学院経済学研究科 博士前期課程

森田 正幸

 1000万円。この数字が、なんだか分かりますか?

 答えは、私が二年間の大学院生活に費やしたお金です。もちろん機会費用(大学卒業後、働いた時の二年間の所得を600万円と仮定)を含めてですが。

 私は1000万円ものお金を二年間で使った花花公子(日本語訳:放蕩息子)です。

 その資金をペイできるだけの価値は、あったのか?それは人の価値観によって、様々でしょう。しかし、私は現在でも、自信を持って「大学院に進学して、良かったー!」と言い切れます。その理由は、以下の文章によって、理解することが少し容易になると思います。

 読みやすくするために、Ⅰ大学院生活編、Ⅱ米国旅行編、Ⅲ就職活動編の三部構成ですすめていきます。

 先生と稲垣君(六期生の編集委員長)に「ホリエモン(ライブドアの堀江社長)に似ていると言われてショックを受けました。それは、似ている要素が「偉そう!」ってことだからです。ちなみに、堀江社長は正式な社長ですし、発言のバックグラウンドも整っています。ですが、私には特にありません・・・ このように先生から、「森田君、偉そうなこと書いて!」という間接的なメッセージを受け取りました。そこで、今号(4,5,6号に引き続き)でも偉そうなことを付け加え、それは各節に「森田的発言」としております。

 

Ⅰ、大学生活編

 毎日20分の登山。これが、私の朝の始まりです。私が通っている神戸大学は、阪神タイガーズの応援歌で有名な六甲山の中腹にあります。ほとんどの人は、バスを使って登校します。しかし、毎月の生活費が三万円程(住居費は除く)の私は、徒歩で登校です。酒嫌いの私でも、夏の日には「ビール飲みたーい」ってほど、汗だくになります。

 しかし、それだけがインセンティブではありません。お金の節約というインセンティブだけでは、20分の登山を毎日続けるのは不可能です。私のインセンティブの基本は女性です。キレイな女性とすれ違うたびに、「徒歩通学で良かったー」と、自分に言い聞かせています。

 この節では、そんな私の大学院生活の一部を紹介します。

1、国際性

 進学して良かったと思う理由の一つに、友人との出会いがあります。私が所属している研究室には、一学年で約50人の学生が所属しています。国籍も豊富で、中国、タイ、ベトナム、カンボジアなどです。そして、ゼミには上記した以外にロシア、ベネズェラ、ブルガリア、スペイン等の学生が所属しています。

 そのような友人の全ては、日本では学生という身分です。しかし、そのバックグラウンドは全く異なります。一度、就職した後に学校に戻った人、母国では学校の先生をしていた人、子を持つ主婦など様々です。

 色々な人から、色々な意見を聞くのは、実に有意義なことです。特に、ゼミ発表のために毎週のように行っていた、勉強会は面白かったです。メンバーは日本人二人、中国人(李ゼミ出身の楊さん)、タイ人、ベトナム人の計五人です。タイとベトナムの友人は日本語が不自由です。そのような状況下では、当然、使用言語は英語になります。楊さんにはよく怒られました。「違うよー、森田君。カントリーじゃなくて、カンチュリーだよ」と。確かに楊さんの英語は私の数倍上手く、中・日・英の三ヶ国語を難なく使いこなせ、尊敬の対象です。

 具体的な内容は、ゼミで発表するテキストの準備を一年生の力を合わせて行うことです。タイとベトナムの学生は日本語が不自由なものの、経済学の知識は私の数倍上です。社会主義経済のベトナム人から資本主義経済に関する内容を教えてもらうことに、多少の不自然を覚えたものの、非常に勉強になりました。

 私の英語能力は低いので、他の学生を説得させるのは、非常に困難でした。しかし、そのおかげで、簡単な言葉を使って、論理的に説明する力を見につけることができました。

2、国内の友人

 学内の国際性を記しましたが、もちろん日本人との付き合いもあります。キャラクターもバラエティーに富んでおり、楽しく付き合っています。いかにも九州男児という感じのアツい漢、都会人を装う九州男児、私が「鉄の女」と評価する女性など、こちらも様々です。就職活動編にも詳しく書きますが、この友人たちには非常に助けられ、刺激をうけました。学生それぞれの専門分野、これまでの経験が異なるために、お互いに助け合い、刺激しあうことが多々ありました。

このような友人との出会いは進学以前にも多数ありました。しかし、そのような友人とは少し違った感じを受けます。出会うまでに歳を重ねているのが最も大きな違いだと思います。それぞれが自分の意見をシッカリ確立しており、それを互いに主張するという関係が主です。そのような感覚が非常に新鮮でした。

 以上のように、私に与えた影響の大部分が友人との出会いです。確かに所属している学生は様々です。しかし、大部分の学生の目標は一つです。それは、「経済学を学ぶこと」。全ての学生のベクトルが同じ方向に向いていることは、非常に快適な空間を提供してくれます。先生、先輩方からの指導はもちろん、同学年の友人からも大変良い刺激を受けます。

 

3、森田的発言。

 この文章で一番感じて欲しいのは、「ベクトル」について。つまり、共有する目標をゼミで持って欲しい、ということです。

 大学の良い所は、色々な考えを持つ人がいること。そして、その考えによって、行動が多様化していること、だと思います。しかしながら、その中で目標を共有する集団も存在します。その一つが、ゼミだと思います。

 李ゼミの目標は、概ね、次のようなことだと思います。「学生主導の活動を通し、“相互依存”しながら、社会で活用できる能力を身に付け、中国経済について学ぶ。」現役ゼミ生、そして今後のゼミ生は、この目標を持っていますか?持っていない人は、今すぐ、考え直してください。そのような人は、他のゼミ生に“依存”しており、きっと迷惑をかけています。

 今、読み進めている本の中に『7つの習慣[1]』という本があります。これは以前から話題になっていた本で、やっと読み始めることができました。その中で、人間の成長段階には“依存”⇒“自立”⇒“相互依存”というものが存在すると、書かれています。

 目標を持ち、実行することは“自立”段階にいたる条件となるでしょう。そして、“相互依存”するためには、更なる努力が必要だと考えています。これは、先号までの檄文(4,5,6号)に書き続けてきたことの繰り返しとなります。「ゼミ以外での自主学習」が必要です。“相互依存”の段階にいたる最低条件です。

 自主学習⇒発表⇒他の意見の享受⇒議論⇒共通理解。これが、ゼミの理想だと思います。自主学習の不履行は、それ以降のプロセスを空虚なものにします。何をすれば良いかは、自分自身で考えるか、先生に聞いてください。

 ゼミは、あくまでもゼミ生全てのもの。“For the team.”を常に念頭において、ゼミに参加してください。

 

Ⅱ、米国旅行編

 貴重な体験をしました。ボストン、ニューヨークの旅です。なかでも、HBSHarvard Business School)の授業を受講できたことが一番嬉しかったです。これは、李先生の交渉力と大学側の好意で実現できました。私の前後に渡米した稲垣君(第六期生)、石丸君(第五期生)はタイムとタイミングの都合で参加できなかったので、彼らの体験記と差別化するために、この経験を中心にまとめようと思います。

 先生の口癖には「思い出は、形に残せ」というものがあります。ゼミ論集、無類の写真好きは、その口癖を体現しているものです。私は先生に三年以上教えていただいているのに、不良学生です。当時の日記はつけていたものの、エッセイにするのは一年後となってしまいました。しかし、あの思い出は、今でも、鮮明に頭の中に残っています。

1、受講

 渡米する以前から、HBSの授業に参加したいと願っていました。しかし、先生が参加されていることが不確かであり、そして図々しいかな?と思い、その意向を伝えることなく、渡米しました。

 馬さんに空港まで迎えに来ていただき、ホッとし、先生宅に到着。そして、先生の帰宅後、馬さんの美味しい料理を食べている途中でした。

  先生:「森田君、明日、HBSの授業でてみる?」

  私:「え?」、(一瞬の間、思考停止)、「良いんですか?」という状況

   です。ブロードウェイで、一等席で見たミュージカル『ライオンキ

   ング』の幕が閉じた瞬間より、感動的な場面でした。

 さらに、その時の心境を描写します。

   ずっと思い続けている女性がいる。

   でも、「好き」って告白できない。

   膠着状態が続く。

   すると、突然、女性から「好き」

って言われた感じです。分かりますね?

 

先生

学生学生                 学生学生

学生学生                 学生学生

学生学生                学生学生

学生学生            学生学生

学生学生学生学生学生学生学生学生

 

 教室は上の図のような形でした。日本では、あまり体験できない形です。なぜこのような形かというと、授業の基本は学生同士の議論だからです。議論をしやすくするために、このような形になっています。先生の表現を借りると、この授業の先生は「交通誘導役」。学生の議論がより活発になるように促し、議論が逸れそうになると戻す、という役割です。

 実際、議論は活発に繰り広げられていました。先に書いたとおり、私は英語が得意ではないので、40%ほどしか聞き取れなかったのですが、非常に興味深い議論だということは感じ取ることができました。

 「ケース・スタディー」と特徴づけられる教材は、実在したビジネス事象をベースに作られています。例えば、インターネット市場で有名な“楽天”など。そして、私が参加した授業もそうだったのですが、その会社のCEOや責任者の方が授業に参加してくれるそうです。当事者が参加することにより、議論のリアリティーは増します。

 

2、受講の感想

 これは、日記を引用することによって、より臨場感が伝わると思います。そこで、以下に、当日の日記を引いてみます(ところどころ、不必要な内容がありますが、目をつぶって下さい)。

 「授業の形式は、事前に配布された資料を予習してきた生徒のディスカッションが中心。先生は、その意見を誘導するだけ。このような授業の進め方が李先生の理想なんだろうなー、と納得。皆、積極的に発言をし、授業が進行していく。今日の授業はODM企業の話。とは、言うものの、自分の英語力では理解できないことが多く、雰囲気を味わうのがメイン。でも、この雰囲気を味わえた意義は、とてつもなく大きい。李先生の話では、1コマの授業に最低2.5時間の予習が必要らしい。一日3コマあると、授業の時間を合わせて、一日12時間の勉強時間が必要になるとの計算。しかも、1万人の中から選ばれた800人は全員が当然、優秀な人材であり、GEやチェイスマンハッタン銀行などの大企業からきている。このような優秀な人たちが、一日12時間も勉強しているのにー、と思うと、自分の生活が恥ずかしくなる。このままでは、この人たちに追いつかない。更に勉強をして、このような有名なビジネススクールに通って、ビジネス界のトップクラスに入るか、国連やIMFのような国際機関で働いてやる!との決意をした。もちろん、この夢にも期限をつけなければならない。40歳になる前に、このような地位につく。これが、現在の長期的目標として設定された。とすると、俺はどうやら40代まで結婚できないようだ。」

 以上が、参加当日の日記の一部です。感想がリアルに伝わるように、敢えて、言葉を変えずに記しました。この日記を読んでいただくことによって、私のモチベーションが上がったことが容易に理解できると思います。そして、私の影響され易さも。

3、森田的発言

 以上の文章を見て、前節で示した“自主学習”の大切さを理解していただけると思います。授業は自主学習が前提。自主学習をしていない学生は、議論に参加できず、参加する意味が薄い。

 さらに、日記にもありますが、この受講生は全てが国家を代表するようなエリート。エリートというものは、簡単に作られるものではなく、多大な努力の上に作られるのだと、改めて感じました。

 エリートの定義は何?と疑問に思われる方もいるでしょう。私の定義は「努力のストックとフローが膨大な人」です。私がいうところのエリートになりたい人は、この定義を熟考してください。

 日記中にも、「ストックが足りないなら、フローを増やして、少しでも近づくしかない」というような文脈があります。当然のことであり、読者も理解されていると思いますが、もう一度書きます。

 「努力を重ねて、フローを増やすしかない」

 現役ゼミ生はまだ、20を少し過ぎただけです。今後のフロー次第では、ストック不足も簡単に補えます。反対に、フローを増やさないでいる人は、他者に、どんどん引き離されていきます。最後に質問です。

 「あなたのストックは足りていますか?」

 

 

Ⅲ、就職活動編

 まだ学部生の頃、飲み会で、李先生にこのようなことを言われました。「森田君は、調子のってるね。でも、森田君くらいなら、いつでも潰せるよ。」どうですか?怖いですよね、この発言。しかし、当時の私は、「先生は何を言っているんだろう?」という感じで話を聞いていました。

 そのくらい当時の私は調子に乗っていました。大学院進学が決定した直後でもありましたし、留学、資格試験、ゼミ、卒業論文と学生生活のほとんどが上手くいってたからです。そして、それは大学院に進学後も続いていました。

 しかし、そんな私にも転機が訪れました。そうです、就職活動です。神など信じない私ですが、もし、神様がいるのであれば、神様の愛のムチだと思います。それくらい、就職活動では、苦労をしました。その活動を以下にまとめます。

 

1、活動状況

 一社目の内定は、7月の中旬です。ちなみに友人の多くはゴールデンウィーク前に内定が出ていました。2月に本格的に開始し、半年後の7月末にやっと終えることができました。

 就職活動を始めるにあたり、まずすべきことは、自己分析。この自己分析が非常に重要だということを、活動の後半になって、やっと、認識させられました。当初の自己分析によって「社会の上澄みの仕事、そして海外で働ける仕事に就きたい」という結果が出たため、都市銀行、証券会社、商社、メーカー(海外拠点のある多国籍企業)などを中心に回りました。(私の当時の考えでは上記の業界が、社会の上澄みの仕事となっていました。)

 しかし、ここで、自己分析の不足が露呈しました。それは、海外で働きたいのに、英語の能力が低いことです。それだけが原因ではないと思いますが、不合格の原因の大きな一つであります。私の第一希望の企業(上記した業界以外の企業)では、TOEICの点数を正直に伝えると、「なんで、そんな点数でウチの会社受けるの?」って顔をされたこともあります(被害妄想かもしれません)。中国語を少し話すことができるものの、このような企業の志望者の中には、英語+第二外国語を話すことができる人が多く、私は全て落ちました。

 

2、転機

 自己分析の不足が最も露呈した企業での面接状況を紹介します。この企業では「経理・財務」部門で応募しており、三次面接合格後の、最終面接でのことです。三次面接では「経営管理」部門もあるけど、どう?という話を面接官から聞きました。

  面接官:「君は経理・財務で応募しているけど、これまでに簿記や会

   計士の勉強したことあるの?」

  私:「いえ、特にありません」

  面接官:「じゃー、何で応募するの?君は、これまで学生生活の中で、

   好きなことをやってきたんだろうけど、これからは違うでしょ。自

   分の経験、適正、能力を考えて就職活動に望むべきじゃないの?」

  私:「は、は、はいー。(なんで三次面接までは合格したんだろう?)」

  面接官:「もう一度聞くけど、どの部門で働きたいの?」

  私:「(この質問は経理・財務で本当に働きたいという気持ちを確かめ

   ているのかな?それとも、経営管理の方が私に向いているというこ

   との示唆かな?と考えた結果、前者だろうと思い)経理・財務部門

   を希望しますっ!」

  面接官:「そうかーーー」

 ここで、面接終了です。他にも色々な厳しい質問が多々あり、面接後に約束していた友人との再会は、散々なものとなりました。

 そして、結果は容易に想像がつくと思いますが、「不合格」。しかし、この「不合格」が私の転機となったのです。ちなみに、その後に受けた三社は全て合格。自己分析を再び行ったことが大きく寄与したと思っています。

 面接官に言われたように、自分の経験、適正、能力を考え、志望企業を変えました。

 その三社の内の二社は物流企業。「海外で働きたい」という軸は維持しながらも、「社会の上澄み」という軸からは遠い業界です。中国語、通関士という資格をアピールし、それまで控えていた7年続けたガソリンスタンドでのバイト体験を話すようにしました。その結果、上記したように、合格。この面接に関しては、不合格になる気がしませんでした。

 4月から入社する企業は、物流企業の海運事業部です。その企業では、私の経験、適正、能力を十分に活かすことができます。そして、私もそのような仕事に就きたいと思っています。つまり、私と企業はWINWINの関係であり、この関係が成り立たない限り、合格するのは難しいと思います。

 

3、森田的発言

     自己分析

     なんで?

     友人

 この三つが、就職活動に最も必要なものです。

     自己分析

 上述したとおり、自己分析は非常に重要です。まず、自分の立脚点、進む方向を決めなくては、前に進めません。これは、就職活動に関する書籍にも必ず書かれていますし、活動経験者であるならば、その重要性を第一に語ってくれると思います。

 その大切さについては、上記した私の経験から理解することが可能であると思うので、これ以上は続けません。

     なんで?

 この言葉は非常に重要です。ある世界的に有名な企業の担当者から何度も聞かされましたし、それ以前にも、愛知大学でお世話になった先生から、この言葉の重要性を学んでいました。

 大学院生は教科書を読むとき、ただ理解すれば良いのではなく、常に「なんで?」という言葉を繰り返し、考えながら読む必要があると、私は思います。修士論文やゼミでの発表においても、もちろんです。自分の考えに対して、理論、実証分析、明確なロジックという手段を用いて、裏づけをしなければなりません。

 就職活動においても同じことが言えます。「なんで、ウチの会社を受けたの?」「なんで、大学院に進学したの?」「なんで、中国に留学したの?」という質問は何度も受けました。面接官の仕事は、相手の考え方を知ることです。そして、受験者の仕事は、面接官に自分の考えを伝えることです。そのとき、「なんで?」という質問が出てくるのは当然のことです。

 そして、「なんで?」という質問に対して、分かりやすいように論理的に伝える必要があります。例えば、「なんで、あなたは経理・財務の仕事をしたいの?」という質問に対して、「学校で企業財務の勉強をしており、入社後もその経験を活かしたいからです。」という答えと、「経理・財務の仕事に興味があるからです。」という答えでは、答えが持つ論理性は全く異なります。

 つまり、自分の行動や考えに対して、常に「なんで?」と自問し、それに対する論理的な答えを準備しておく必要があります。友人に「なんで?」と何度も繰り返し質問してもらい、それに対して答えるという練習も薦めます。街を歩いている時に、「なんで、今日は人が少ないんだろう?」といったように普段の生活において習慣付けると良いと思います。

 李先生との対話を思い出してください。先生も「なんで?」という質問をよくされます。尊敬に値する人、能力のある人、人生の成功者だなと思う人は、この質問をよくしてきます。

     友人

 就職活動というものは、①、②のことを完全に遂行しても、上手くいくとは限りません。それは学校のテストと異なり、基準が客観的ではなく、会社や面接官の主観に大きく左右されるからです。

 そのような状況の中で活動を続けるには、精神・肉体的強さが必要です。そして、自分だけでの情報収集や対策、練習は非常に限定的になってしまいます。就職活動をより効率的に、精神・肉体への負担を少なくするために、友人と協力してください。

 私も友人には非常に助けられました。「なんで、そう思うの?なんで、その企業に入りたいん?」と何度も聞いてくれたり、私の主張を全否定し、他己分析(他人による分析)を基にした助言を与えてくれました。

 そして、「あいつも意中の企業に入ったんだから、俺も絶対に入ってやる」という気持ちを起こさせるライバルにもなります。

 このように、友人から得られるものは非常に大きく、周りの友人とスクラムを組んで、敵(就職活動)と戦うことが非常に重要だと感じました。現在、就職活動を控えている学生の皆さんも、ゼミの友人はもちろん、部活、サークル、そしてその枠を超えた友人とも情報交換や他己分析を繰り返し、就職活動に臨んで欲しいと思ってます。

 その過程で普段、付き合うことができない友人や、他大学の友人も作り、人脈を広げて欲しいです。そして、色々な企業を回り、企業の業務内容や今後の展開を知り、社会に対する見識を広めて欲しいです。

 もう二度と就職活動したくないなー、と思う反面、あの貴重な体験は二度とできないから、もう一度やっても良いかなーとも思います。悔いのない、就職活動にしてください。そして、合格(内定、入社)はあくまで、スタートラインであることは忘れないように。

 就職活動は皆さんの能力のストックとフローで決まります。第Ⅱ節の繰り返しになりますが、ストックが足りないと思う人は、短期間でフローを伸ばしてください。そして、ストックが足りず、意中の企業に入れない人もいるかと思います。そういう人は、今後の仕事でフローを増やし、ストックを増やし、転職を考えるのも一つの手段だと思います。そういった面でも、合格(入社、内定)はスタートです。

 

 長々と書いてしまいました。

 私の考えは偏りがあるかもしれません。特に書く必要はないかと思いますが、敢えて注意しておきます。私の主張を100%受け入れないでください。あくまで、一意見と捉え、この文章を理解してください。

 ただ、私の生活の側面は、この文章を通して表現できたと思います。文頭に「ペイできるだけの価値はあったのか?」という文章を書きました。人間の幸せは「自分のしたいことを、できること」だと、私は考えます。「もっと勉強をしたい、少し人と違った経験をしたい」という自分の願望に、素直に応えるために、私は進学しました。その願望に応えただけでも、価値はあったと思います。

 二年間の生活には、それ以上の価値があり、それは、やはり1人では得られなかったものです。この文章で示した先生、先輩、友人はもちろん。生活を支援してくれた両親、学費を貸してくれた祖父母、困った時には親身になって助けてくれた友人などに感謝し、残りの学生生活を有意義に送り、4月に就職したいと思います。

                       



[1] スティーブン・R・コヴィー著、ジェームス・J・スキナー、川西茂訳、『7つの習慣』、1996年、キングベアー出版