釣りに拘泥して

00E2101 石丸泰央

 

<釣りとの出会い>

 釣りが一部の男子の間で密かに流行っていた小学校3年生の時、ミーハーな僕は密かなブームに乗っかる形で釣りを始めた。なぜ釣りが流行ったかというと、小学校の近くに、ハゼ・セイゴ・ボラといったような食べれる魚(ボラは匂いがキツイので、食べない人が多い)がいる釣り場があったからである。学校の近くといっても、小学生が自転車をモリモリ漕いで20分くらいのところである。小学生のブームは終わるのが早く、その後そのまま釣りにのめり込んだ奴は少なかった。僕もその後はのめり込まなかった派で、道具は物置の隅に追いやられていた。が2次釣りブームが中学2年の時にやってきた。今までのエサ釣りとは違い、ルアーという疑似餌を使って、主にブラックバスを対象としたを釣りだった。そのルアーフィッシングが僕を釣りにのめり込ませた。

 

<釣り道具>

 小学生の時は、500円の釣り竿と適当な糸と針といった、釣りに必要最小限な道具があれば満足だったが、中学・高校と上がるにつれ、エサ釣りからルアー釣りへと、釣りの分野も広がってそれに対応するための道具が増えていった。今ではもう買った釣り竿などは、家族がいないときにコッソリ部屋に持って行かないといけない状況になってしまっている(苦笑)。本当に洒落にならない。

<移動手段>

・自転車

 車の免許を持っていなかった高校までは、釣りに行く手段といえば、自転車か公共交通機関しかなかったため、移動手段は限られていた。僕の通っていた高校は、電車で行っても、自転車で行っても、自宅から1時間程の所にあり、電車に乗り遅れた時は、自転車でそのまま高校に向かえば、遅刻寸前に着く。こういった立地条件からか、いつも家を出るのがギリギリの時間になってしまい、電車に乗り込むまで本当に11秒を争っていた。(電車の扉が開く音が聞こえた時にに改札口を抜けている状態で、まだ僕がホームに来ていない時は、扉が閉まるのを遅らせるために友達がゆっくり電車に乗り込んでくれて、助かることも多かった。)こんな感じだから乗り遅れることもあり、高校まで自転車で行くことが月に何度かあったので、自転車で遠乗りすることは苦にならなかった。が釣り竿を持って自転車で移動するのはわけが違った。6.6フィート(約2メートル)の竿を片手に持って漕いでいるので、竿の長さ・高さも配慮に入れなくてはならず、だいたい釣り場に行く時には、自分が通るのがやっとの所もあり、高さを考慮していなくて、竿が木に引っかかっていることに気がつかずに、竿を折ってしまった時もあった。というわけで釣り場に着くまで、かなり厄介だった。

・公共交通機関

 釣りに狂っていた高校2年の夏休み、岐阜県のバス釣りのメッカである大江川にどうしても行きたくて、電車とバスを乗り継いで行くことにした。そんな意欲が沸かせたのは、最近自分の通っていた野池が全然釣れなくて、どうしても一匹釣りたかったのだ。せっかく遠くに釣りに行くということもあり、竿も2本持って行くことにした。がその考えが後々とんでもないことになった。始発の名古屋方面行きに乗って電車とバスに揺られること3時間。ようやく大江川に着いたのだが、僕はすでにクタクタだった。電車は時間が過ぎるにつれて混んできたのである。竿を持っていることもあり席に座っていなかった僕は、そのまま通勤ラッシュに巻きこまれることになった。竿を持っているので、かなり周りの乗客から煙たい視線を浴びていたし。それで着いたはいいが、どこが釣れるポイントなのかもわからず、釣果もゼロ。もう散々だった。

・車

 いろいろあって一番いい移動手段が車ということは既にわかっていた。大学1年の秋に待望の免許を取れた、が肝心の車がない。車を買おうとしても、今までのバイト代のほとんどを釣具に費やしていたこともあって、すぐに買えるわけはなかった。う〜ん…考えた末に浮かんだのが、姉の車を借りることだった。借りるといっても、もちろん気安く借りたわけではない。方法としては、姉を職場まで送って仕事が終わるまでの時間を借りる魂胆だった。姉から「仕事が終わった」との連絡が入ればすぐに迎えに行かないと、今後レンタルさせてくれなくなってしまうから、その辺は十分気をつけた。この限られた時間でも車で釣り場まで行けるので十分満足だった。竿も好きなだけ積めるし、電車やバスのように金は取られないし、言うことなかった。だけど1回だけやらかしてしまった。釣りに没頭していて、連絡が入っていたのを気がつかなくて家に帰ったら姉が既に帰ってきたいたのだ。ひじょ〜にヤバかった。どうやら30分かけて職場から歩いて帰ってきたらしい。もう後は言うまでもなく姉は「プンプン」だった。こんなことで当分貸してはくれなくなったが、転機がやってきた。姉が車を買い換える決断をしたのだ。決断をしたというより、僕がかなり横から茶々を入れて決断させたのだ。もちろん僕は、姉の今まで乗っていた車を下取りしようという考えだった。下取り額は、車のディーラーに相場をきいてその額で僕が買い取ったのだ。(姉に無利子のローンで。)見事に車を手に入れた僕は、より一層釣りに狂うことになった。

 

<琵琶湖にて>

 そんなこんなで、車を手に入れて一番行きたかったのが琵琶湖だった。琵琶湖は明らかに魚の個体数が違うし、釣れる魚の色もきれいな緑色で、サイズもデカイ。時期さえ外さなければ、ボウズで帰ってくることはなかった。(魚は変温動物なので、水温が下がる冬になると、動くのがおっくうになってルアーに興味を示さなくなるため、釣果が下がる。)

 2002年8月、堤さんと田中君と一緒に琵琶湖に向かった。堤さんには、たまに豊橋の実績のある池を案内してもらっていて、一緒に釣りをしたことがあるが、バス釣りをするのはかなり久し振りと言う田中君、バス釣りは「釣れない」というイメージがあることを、行く前に話していた。そのイメージを撤回させるため、どうしてもたくさん釣らせてあげたかった。

 琵琶湖に行く時僕は、高速道路を使わない。高速を使うと、三好〜米原間の片道2500円かかる。高速を使わなければ、この金をガス代に回すことができるし、夜走れば着く時間は30分くらいしか変わらない。帰りは睡魔との闘いになるが、この時は3人いたので「楽かなっ」と思い、この日も下道で行くことにした。世間一般の人に釣りのイメージを聞けば、「糸を垂らしてボ〜っするもの」との答えが大半を占めるだろうが、僕達3人は少なからずそんな楽な釣りをしていない。僕達3人の釣り方は、フローターという浮き輪のようなものに腰を下ろし、足につけたフィンで魚がいそうなポイントに、自分でパタパタ漕いで行かなければならない。(この姿を、陸から見れば気持ちよさそうに見えるが、実際かなり疲れる。)まあ水面にただ浮かんでいる時は、心地よい揺れで非常に眠くなる。実際いつも眠くなったらそのまま寝てしまうので、風が強い日に居眠りすると、起きた時には波に揺られて右も左もわからない場所にいることもある。フローターに乗った時の一番の危険要因はヘビがやってくることである。奴らは泳ぐのがとてつもなく速く、舌をピロピロ出しながら水面上をやってくる。こっちは動きが遅いので、こっちに向かってきたら竿で撃退する構えを取るしかない。春・夏はよくお目にかかる。この日もたしか泳いでたかな。まあ3人ともそれぞれのポイントで釣りをし始め田中君を見るとルアーフィッシングにおいていい武器を持っていた。それは竿を左で振っていたことだった。ルアーフィッシングは、木の下や障害物の隙間にルアーを落として魚を誘うのだが、右利きだと、どうしても周りの障害物に邪魔されて投げ込めない場所が出てくる。バスフィッシングをしている人は、多分右利きの割合が多いと思う。こんな場所で左利きは有利になる。右利きの連中からあまり攻められていないので、魚のルアーに対する警戒心が薄れているハニースポットを狙うことができる。この日は朝早くから釣りしていることもあって、結構時間があったので、バスがたくさん泳いでいるのが見える場所に移動することにした。見えている魚を釣るのは意外と難しい。水が透き通っているので、魚の動きが見えていて鼻先にルアーを落としているのにも関わらず、「ぷいっ」と知らんぷりされるとかなりイライラする。この場所でも堤さんと田中君は絶好調。着いたとたん我先にルアーを投げていた(笑)。結局この日は田中君が一番釣ったかな。

 1人で来る時、帰りは必ず少し寝てから帰るのだが、この日は他に運転手が2人いるという安心感からダイレクトで帰ることを試みた。が後ろを見れば堤さん爆睡中。僕も出発して30分も経たないうちに限界が…。横を見れば田中君の目はギラギラしていた。コンビニに停まって、「田中君あとよろしく」っといって責任転化。僕は隣りで道案内のつもりが…。マジで助かりました。

 

<我が家の釣り騒動>

 高2の夏休み、高校の近くにある濁池(にごりいけ)で釣りをしていて、今日もボウズで帰るのかと思っていたところ、帰る間際に30センチくらいのバスが釣れた。久々に釣れたので帰宅してから家族に自慢話をしていた。ところが翌日から熱が出た。こんな弱っている時は、食欲がなくなるのが一般的だが、ガツガツ飯を食べていた僕を見て祖母は、まるで何かに取り憑かれているように見えたらしい。そこで信心深い祖母は、僕をそういう風に仕立て上げ、お払いのために僕を寺に連れてだして、「もう釣りには行くな!」と一喝。釣り禁止例が発令されてしまった。

というのも、濁り池というのがいわく憑きの池で、桶狭間の合戦場付近に位置していて、武士が血の付いた刀をここで洗ったとか、合戦で敗れた武士の霊が溜まっているだの、変な噂を僕が釣りに行く前に、姉が家族に流していたのだ。この騒ぎがあってから必ず釣りに行く前は、祖母と一悶着してから出かけるのが恒例行事になっている(笑)。

 

<リリース禁止条例>

 バスフィッシングは世界的思潮に賛同しキャッチ&リリースを信条として、日本に広がった。

ブラックバス・ブルーギルといった外来魚が琵琶湖の生態系を壊していると言われはじめて、ついに2002年10月16日、滋賀県議会において「滋賀県条例第52号滋賀県琵琶湖のレジャー適正化に関する条例」、俗に言う「リリース禁止条例」がついに現実のものになった。施行は2003年の4月からであるがこれに対しては、最近新聞でも雑誌でも、賛否両論載っている。

こういった法律を作るには、こういう現状があるから、こういう法律を作ります。この法律によって現状がこう改善されます、っていう理由と事実が必要なのに、県側はリリース禁止によって外来魚がコレだけ減って、在来種がこれだけ増えます、っていう科学的データを集めて、実態を調べて欲しいという民意を聞かずに、条例を制定した。このことがこの問題をさらに膨らませる結果になっている。まあ条例の施行が決まっているし、何か罰金とか取締りが厳しくないみたいなのでどうなるかは4月以降に注目したい。

 

<豆知識>

 中国バス事情

 中国でバスは、高級食材として扱われていて、1キロあたり500円前後で養殖場から出荷されている。物価が日本の1/1040歳の公務員の月給が約45000円ということから、かなりの高級魚といえる。結婚式の披露宴などでよく使われるそうだ。中国の釣りは、多くがコイ、フナを対象としており年齢層は高め。ゲームフィッシングという文化はない。

 

<終わりに>

とりあえず釣りについて一部を紹介してきたが、他にもイカ・シーバス・トラウト釣りといった他の釣りもかじっている。全部書くとかなりの枚数になりそうだからやめときます。釣りを通して水質環境のことや外来魚問題に対して関心を持つことができ、少しは自分の視野を広げることができてるかな。