第13章 アジア戦略資源争奪とシーレーン確保問題

『南シナ海の資源』

 

002101 石丸泰央

はじめに

世界需要の増加、深刻な資源不足の表面化は、死活的に重要な資源をめぐる国家間の争いを激化させる。減りゆく不可欠な資源をめぐる争いは、多くの重要な資源が複数の国に共有されていたり、国境紛争地帯や係争下の経済水域に位置している。日本、中国、他アジア諸国においては南シナ海が資源紛争の舞台となっているのである。そこで南シナ海の資源戦略を中心に取り上げていきたいと思う。

 

第1節 南シナ海の石油戦略

「広大なアジアの太平洋西端に、「戦略的トライアングル(ペルシャ湾・カスピ海沿岸・南シナ海)」の一角がある。北に台湾と中国、東にフィリピン諸島、南にインドネシアとマレーシア、西にベトナム。南シナ海は、アジアで最もダイナミックかつパワフルな国々に接している。古くから海上交通の交差路であるこの海域に、大規模な石油・天然ガス資源が眠っていると見られている。ペルシャ湾とカスピ海よりもずっと大きな海洋だが、二つの大きな共通点がある。海底資源をめぐる争いの下にあることと、当事各国がそれら資源を死活的に重要な国益とみなし、武力行使も辞さない構えを見せていることだ。南シナ海における海底資源の支配争いを駆り立てているのは、アジア太平洋地域の並外れた経済発展である。1997〜99年の経済危機に見舞われるまで、環太平洋諸国は年間10%を上回るほどの目覚しいペースで経済成長を続けていた。経済危機によって多くの国々の経済が減速または後退に転じたものの、その影響は比較的短期間だった。例えば中国と台湾は、急成長のペースがいくらか鈍った程度だった。それまでの中国は実に年率11%超の成長を続けていた。21世紀初頭には東アジア全域で高成長の回復が見込まれ、再び世界経済の牽引役となることを期待されるようになっている。ここ数十年間のアジアの経済成長と共に、エネルギー需要も拡大の一途をたどってきた。1990年代の大半を通じ、東アジアの主要経済10カ国・地域(インドネシア、韓国、シンガポール、タイ、台湾、中国、日本、フィリピン、香港、マレーシア)は、他の世界の役10倍に及ぶ年間5.5%のペースで成長を遂げた。アジアエネルギー需要の増加率は21世紀初頭から半ばにかけてやや鈍る見通しだが、それでも年間3.7%と他の世界を上回るものと見られている。世界のエネルギー消費に占める割合では、アジアは2020年までに約34%を占めるようになると見込まれている。残りは北米が24%、西ヨーロッパが13%、旧ソ連諸国および東ヨーロッパが12%である。」(アジアのエネルギー消費予測1990〜2020年表参照)

   アジアのエネルギー消費予測(1990〜2020年)  (単位:千BUT)

 

地域/国

1990年実績

1997年実績

2005年予測

2015年予測

2020年予測

1997〜2020年平均増加率

アジア開発途上国合計

51.4

75.3

105.0

126.4

172.6

3.7

中国

27.0

36.7

55.0

68.1

97.3

4.3

インド

7.8

11.8

17.0

20.4

27.3

3.7

韓国

3.7

7.5

9.3

10.7

13.4

2.6

その他

13.0

19.3

23.7

27.2

34.7

2.6

アジア先進国合計

23.0

27.1

29.2

31.1

33.1

0.9

日本

18.1

21.3

22.6

24.1

25.4

0.8

世界合計

346.7

379.9

449.0

500.2

607.7

2.1

(世界資源戦争p164-165より引用・表作成)

「アジアのエネルギー需要の増加は、とりわけ石油と天然ガスの大幅な需要増をもたらす。現時点での予測では、2020年にアジア諸国はエネルギー消費のほぼ半分を石油と天然ガスに依存するようになる。石油消費は日量3300万バレルに達する計算だ(1997年時点では日量1900万バレル)。この増加分1400万バレルは、現在の中南米、中東、旧ソ連諸国の合計消費量に匹敵する。天然ガスについても、2020年までに消費量が石油にもまして大幅に増加する見通しである。アジア各国にとって、これだけの量の石油と天然ガスの確保はとりわけ大きな問題となる。なぜなら、アジアには十分な資源がないからである。中国やインドネシアなど中規模の石油天然ガス資源を持つ国はあっても、ペルシャ湾やカスピ海のような大規模な資源を持つ国はない。1990年代末時点でアジア諸国の石油需給は、消費が日量1900万バレルであるのに対し、域内の生産量は700万バレルほどにすぎない。このギャップは2020年までに倍増し、石油輸入は日量2500万バレルに達する見通しだ。天然ガスについても同様で、今のところは消費量と生産量がほぼ均衡しているが、今後は輸入依存度が高まっていく。」p166

 

第2節 アジアシーレーンとシーレーンを脅かす海賊

1.アジアシーレーン

 「国内資源がきわめて乏しい日本にとって、エネルギーの確保は難題だ。日本は、エネルギー消費の56%を占める石油を輸入に頼っている。国内の原油埋蔵量は、わずか10日分の消費量を満たすだけの約6000バレルにすぎない。石炭と天然ガスの埋蔵量はそれを上回るが、石炭は消費量の99%、天然ガスは97%を輸入に依存している。日本は電力の一部を原子力・水力発電で供給しているものの、一次エネルギー需要の約80%が輸入石油・石炭・天然ガスでまかなわれている。こうした輸入依存の継続は、必然的に地政学的影響を伴う。日本は輸入原油の約75%を中東に依存しており、今後は他地域の石油資源減少とともに、中東への依存度がさらに高まる見込みである。そして中東からの輸入原油のほぼ全てが、インド洋とマラッカ海峡を抜けて南シナ海を斜めに横切るルートで運ばれている。南シナ海はまた、オーストラリアからの石炭、インドネシアの液化天然ガスの輸入ルートでもある。これらの海域を通行するタンカーの安全確保は、日本の戦略的優先事項である。中国と日本はアジアのエネルギー消費の大部分を占めているが、その他の国・地域(インドネシア、韓国、タイ、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシア)でも石油と天然ガスの消費が拡大している。今のところは国内資源で需要を満たしている国(インドネシアは石油・石炭・天然ガス、ベトナムとマレーシアは石油資源を持っている)もあるが、いずれも今後は輸入で補うことが必要となる。さらに各国とも、エネルギーの輸入及び輸出を海運に頼っている。そして最も重要な点は、韓国を除く全ての国・地域が南シナ海での資源開発権を主張していることであり、中国のライバル、あるいは互いにライバルとなる可能性がある。韓国と台湾は日本同様、エネルギー資源に乏しく、需要増への対応がとりわけ大きな難題となる。1999年時点で、韓国と台湾の石油消費は合計日量290万バレルであり戦略的観点からして、韓国と台湾の状況は日本に似ている。つまり中東原油への依存度が高く、その大半を南シナ海経由で運んでいるのである。これに対し、インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシアの戦略的ポジションはやや異なっている。いずれも国内に一定規模のエネルギー資源を持ち、その一部を周辺諸国に輸出している。しかし、インドネシア以外は少なくともエネルギーの一部を輸入に頼り、またインドネシアも今後は石油輸入国に転じる見通しにある。したがって、韓国と台湾同様、各国とも海運ルートの安全保障が重要な国益となり、各国の石油・天然ガス資源の多くは海底資源、主に南シナ海とその周辺であるため、海域の安全保障への懸念が増幅されている。また海底油田の開発とともに領海保全もさらに重視されるようになっている。」172-175

 

2.海賊問題の現状と日本の取り組み

2-1 海賊増加の背景

 海賊行為は、国連海洋法条約の「海賊」に含まれない領海内での事案がほとんどである。

東南アジアで海賊行為が多発している原因としては、マラッカ海峡等において低速航行を強いられる等の地勢的要件、多数国の領海が入り組む海域における取締りの困難性、被害届出の忌避等の要因が挙げられる。また、アジア通貨危機以降の経済不況による貧困増加、インドネシアの政情不安、米ロの海軍プレゼンスの縮小等もその背景にあると考えられる。

 

 

 

 

 

 

2-2 発生地域

 東南アジア(インドネシア、マレーシア、マラッカ海峡、バングラデッシュ、インド)で全体の65%を占めている。(下表参照)

 

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

東南アジア

88

63

16

38

71

124

92

89

161

242

極東

14

7

69

32

47

17

19

10

6

20

印度亜大陸

 

5

3

3

24

26

40

22

45

93

南北アメリカ

 

 

5

11

21

31

36

35

28

39

アフリカ

 

 

7

6

21

25

46

41

55

68

その他

5

31

3

 

4

5

14

5

5

7

年間計

107

106

103

90

188

228

247

202

300

469

 

2-3 日本の施策(海賊対策における基本的な考え方)

1 グローバルな場における協力として、国連海洋法条約関連会議等(国連総会、国連非公式協議プロセス等)における問題提起・「海上航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約」(ローマ条約)等の関連条約への各国の加入促進。・国際海事機関(IMO)における協力の促進。

2 アジア地域における協力として日本は、アジア海域における海賊対策はアジア諸国のイニシアティヴに基づき促進されるべきであるとの考えに基づき、アジア諸国間の協力を促進するために以下のような具体的諸政策を実施していく。@海賊対策に関する地域協力協定作成についての検討 A海賊問題に対するモメンタムの維持(「ASEAN+3(日中韓)首脳会議」等、国際会議等における海賊問題への言及、ローマ条約締結の呼びかけ等) B海賊多発地域に対する貧困対策支援 C各国海上警備機関の能力向上に対する支援(人材育成・技術支援) D船主、荷主側の自衛策強化への支援(ASEAN各国船主協会との連携)

 

2-4 日本の具体的な取り組み

 「近年アジア地域で頻発する海賊問題は、貿易立国たる日本の輸送ルートへの脅威となっているばかりでなく、地域全体の社会の安定と経済の繁栄に大きな影響を与え得る問題となっている。このような問題意識から、日本は199911月のマニラでのASEAN+1(日本)首脳会議の場において、小渕総理大臣が沿岸警備機関等の関係者による会議の開催を提唱し、20004月、東京において「海賊対策国際会議」を開催した。20009月には、河野外務大臣(当時)の提唱により、日本政府は、「海賊対策調査ミッション」をフィリピン、マレイシア、シンガポール及びインドネシアに派遣し、各国との具体的な協力・支援策について調査及び意見交換を実施した。200011月には海上保安庁の巡視船がインドとマレイシアを訪問し、海賊対策を目的とした連携訓練を実施するなど、二国間の協力は着実に進展している。一方、地域的な取り組みに関しては、各国の主権に直接関わる問題であることから、その枠組みづくりは決して容易ではないが、日本として積極的なイニシアティブを発揮するべく、200011月のシンガポールでのASEAN3(日中韓)首脳会議において森総理大臣(当時)が「海賊対策アジア協力会議」の開催を各国に呼びかけ、20011045日に東京において同会議を開催した。200111月のブルネイでのASEAN3(日中韓)首脳会議において小泉総理が海賊対策に関する地域協力協定の作成を政府レベルで検討するための「政府専門家作業部会」の開催を各国に対して提案した。ASEAN諸国側は日本のイニシアティヴを高く評価しており、引き続き具体的協力につき協議していくこととなっている。」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/pirate/

・引用)

 

第3節 排他的経済水域(EEZ)の重なりから生じている各国間の複雑な領有争い

 「タイ湾の油田とガスは、カンボジア、タイ、ベトナム、マレーシアが領有権を主張する海域にある。またナトゥナ諸島周辺の大規模なガス田は、インドネシア、中国、ベトナム、マレーシアが領有権を主張している。エネルギー需要の増加とともに、これら海域の価値はさらに高まっていくことになる。こうした状況の中、EEZをめぐる争いはますます激しいものになっていくはずだ。そしてそのうち最も危険度が高いのが、南シナ海のエネルギー資源なのである。」p175

1.南シナ海の領有争い

 「古くから国際運輸の大動脈である南シナ海は、近年になってエネルギー資源の存在が有望視され、さらなる重要性を帯びることになったとはいえ、資源の規模は今のところ推測の域を出ていない。試掘がほとんど行われておらず、十分なデータがないからである。中国の地質鉱物省は、南シナ海の原油埋蔵量を最大1300億バレルと報告している。これは、ヨーロッパと中南米の合計を上回る埋蔵量である。こうした推計の確認には大掛りな調査を必要だが、多くの周辺諸国が可能性を見込んで大胆な領有権を主張し、また他国から領域を守る態勢を整えている。海底エネルギー資源の所有権に関する法的枠組みはまだ浅く、適用例も少ないため、その適用をめぐる見解の相違が広がる結果となっている。国連海洋法条約(UNCLOS)の下では、海洋に接する国は沖合い200海里までをEEZとすることができる。その水域が重なる場合には、両国から等距離の境界線をEEZとする。しかし多数の島が存在したり、島をめぐる領有争いがあると、対立と紛争の危険をはらむことになる。沿岸諸国の国境線が入り組、海上に無数の島が存在する南シナ海は、EEZの設定には悪夢のような場所である。中国とベトナムはトンキン湾の領海域をめぐって衝突し、フィリピンとマレーシアは共に東ボルネオ沖の領有権を主張している。さらにベトナムとマレーシアがタイ湾の領有権を争っている。これだけでも複雑なのにその上にスプラトリー諸島全体の領有権を主張する中国の存在がある。中国は南シナ海の大半をEEZとすることを狙っており、スプラトリー諸島の一部あるいは周辺海域の領有権を主張するインドネシア、台湾、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシアと正面から対立している。」p176

 

 

 

2.スプラトリー史

 かつては中国貿易船の寄港地であった。明の時代に中国人が居留。

1918

第一次世界大戦し勝利した日本が鉄鋼石採掘を開始、フランスとの領土争い

1939

日本が領有宣言

1951

第二次世界大戦後、ベトナムと中国が領有宣言

1958

フィリピンが領有権を主張

1979

マレーシアが領有権を主張

2000

その他、台湾、ブルネイも領有権を主張

(ワールド コンフリクト世界の紛争 2000.10.26より表作成)

 「南シナ海におけるエネルギー資源の争いはスプラトリー諸島をめぐる争いといっても過言ではない。スプラトリー諸島は、約8万平方マイルの海域に点在する合計約400もの小島や岩礁(その多くは潮が満ちると海面下に沈む)からなる。人が住める島はないが、全体あるいは一部の領有権を台湾、中国、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシアが主張している。台湾(中華民国として)と中国(唐朝時代からスプラトリー諸島を領有してきた)は、歴史的な関わりの深さを理由に全体の領有を主張。フィリピンとベトナムは一部分、その他の国はEEZ内の島々の領有を主張している。中国は、スプラトリー諸島全体の領有を示す軍事施設の建設、海上での軍事行動、周辺海域における油田探査・開発権の国際石油企業への付与、武力の誇示など一連の示威行動を行っていて、スプラトリー諸島の将来について周辺諸国と協議することに応じ、共同開発計画の検討にも前向きな姿勢を見せているが、スプラトリー諸島が中国の主権下にあるとの主張は全く変えていない。」p176-178

 

3.ミスチーフ環礁事件が引き金になった、スプラトリー紛争における中国の戦略的対応

 「ミスチーフ環礁事件は1995年28日、フィリピンが中国に艦艇の撤収を要求したことに始まった。中国側は軍事施設の建設を否定し、構築物は漁船の避難施設であるとして撤収を拒否した。その直後、フィリピン政府が調査に派遣した船団が中国軍艦艇によって追い返された。中国軍部隊を締め出す軍事力を欠くフィリピン政府は、1951年の米比相互防衛条約に基づき、中国軍締め出しへの軍事支援を求めたが米政府は、スプラトリー諸島は同条約の適用範囲外であるとして要請を受け入れなかったが、軍事援助及び訓練の拡大に応じさらに中国政府に対し、ミスチーフ環礁への軍派遣に強く抗議する文書を送った。フィリピン政府は次に、東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心にミスチーフ環礁返還への外交支援を求めた(ASEAN諸国の多くも、スプラトリー諸島の領有権問題などで中国の進出に危機感を募らせていた)。同年7月にブルネイで開かれたASEAN会議で各国は、南シナ海における武力行使を非難し、当事各国の外交努力による問題解決を求めた。結果中国は、フィリピンとの話し合いで解決を図ることと、さらなる武力行使はしないことを約束した。しかしその一方で中国は、スプラトリー諸島に対する主権を改めて主張し、ミスチーフ環礁を他国に譲り渡す意志のないことを示した。以後中国は武力行使に比較的慎重な姿勢を取っているが、スプラトリー諸島での軍事施設の構築と、ASEAN諸国が主権を主張する区域への海軍派遣を続けている。スプラトリー諸島における中国の最終目標には多くの疑問が残されているものの、死活的に重要な国益の追求に関して武力行使を一つの選択肢と見なしている点に、疑問の余地はない。南シナ海でに武力行使を辞さない姿勢に加えて、中国は海軍力、上陸攻撃力、航空攻撃力の増強も進めている。1985〜97年の間に、中国は軍事支出を282億ドルから365億ドルへと30%も拡大している。その多くは人民解放軍の主力である陸軍に充てられているが、海軍と空軍、それに中国本土で外での「影響力伸張」を担う部隊にもかなりの額が割かれている。特に重視されているのが、公海上での継続的作戦能力の増強である。航空・海上戦力の増強が、直ちにスプラトリー問題に軍事的決着を図る方針を意味するわけではない。「中国も最終的には領土問題の平和的解決に応じるのではないか」、との見方もあるが現時点では、中国がスプラトリー全域への主権を断念する方針に至ったことを示す証拠はない。したがって一連の衝突が南シナ海上の海運を脅かし、日本とアメリカの軍事介入に至る可能性も存在する。1995年まで南シナ海での衝突はいずれも中国とベトナムによるもので、大半の西側アナリストはこの事実から中国政府は南シナ海での軍事行動を、当事国際社会で孤立状態にあったベトナムへの攻撃に限定し、他国との武力衝突は避ける方針であると見ていた。しかし1995年初頭、フィリピンは中国がミスチーフ環礁に軍事監視施設を建設している事を知る。ミスチーフ環礁はパラワン島の西150海里以内に位置し、フィリピンが主張するEEZ内にある。このミスチーフ環礁が、数度にわたる海軍部隊の衝突と外交危機を引き起こし、南シナ海における戦略方程式全体を変えることになった。」p183-186-187

 

南シナ海での軍事衝突(1988〜1999)

当事国

軍事行動

1988

中国

ベトナム

両軍の海軍部隊がスプラトリー諸島のジョンソン(赤瓜)環礁で衝突。

ベトナム船数隻が沈没、72人が死亡。

1992

中国

ベトナム

ベトナムが中国に対し、トンキン湾ベトナム領海での石油掘削とダラク環礁への部隊の上陸に抗議。中国は香港から貨物を輸送する約20隻のベトナム船を拿捕。

1994

中国

ベトナム

両国の海軍部隊が、国際的にベトナム領海内と認められている石油鉱区133〜135をめぐって衝突。中国はこの区域を自国のワナンベイ21区の一部と主張。

1995

中国

フィリピン

フィリピンが領有権を主張するミスチーフ環礁を中国側が占拠して軍事施設を構築。フィリピン船が島への接岸を試み、中国軍艦艇に撃退される。

1995

台湾

ベトナム

台湾がイツ・アバ島からベトナムの補給船を砲撃。

1995

中国

マレーシア

マレーシアの哨戒艇がサラワク沖で中国トロール船に発砲、4人の中国人乗組員が負傷。

1996

中国

フィリピン

カンポン島付近で3隻の中国船がフィリピン海軍艦と90分の銃撃戦。

1997

中国

フィリピン

4月、フィリピン海軍は中国の高速艇1隻と漁船2隻にスカルボロ環礁から立ち去るよう命令。フィリピンの漁民が中国の標識を撤去、自国の旗を立てる。中国は、フィリピンが選挙しているパナタ島へ、調査の目的で3隻の軍艦を派遣。

1998

中国

フィリピン

フィリピン海軍がスカルボロ環礁沖で中国の漁民を逮捕。

1998

フィリピン

ベトナム

ピジョン礁近くでベトナム兵がフィリピンの漁船に発砲。

1999

中国

フィリピン

3隻の中国漁船が、スカルボロ環礁近くでフィリピン軍艦艇に攻撃される。うち1隻は激突され沈没。乗組員は全員救出されたが、中国政府はフィリピン政府に猛抗議。

1999

フィリピン

ベトナム

ピジョン礁に駐留するベトナム軍が上空を飛行したフィリピン空軍の偵察機を砲撃。

1999

マレーシア

フィリピン

スプラトリー諸島内のマレーシア領上空で、両国の空軍機があやうく衝突。

(p185より表作成)

スプラトリー諸島(中国名:南沙諸島)は、中国及び東南アジア諸国が領有を主張して対立の火種となっている。この地域にはサウジアラビアに匹敵する豊富な原油が埋蔵されていると言われ、日本や中国・台湾とアジア・中東・欧州をつなぐ重要な航路にもなっている。そのことが、各国の主張の裏に見え隠れしている。

4.中国にとって…

 「1992年中国はスプラトリー諸島を含む南シナ海の殆どの島を中国のものであると一方的に宣言した。このように中国にとってスプラトリー諸島が大きな意味を持っているのは次のような背景がある。中国は。原油輸入の多くを中東に依存している。その輸送航路はインド、ベトナム近海、東南アジア、台湾などを通過する、インド、ベトナムは中国の存在を警戒しているし。東南アジアは海賊が横行している。こうした事情から、中国は安全な輸送航路のためにもスプラトリー諸島を確保し、強大なシーレーンを築きたいのである。」

 

5.日本にとって… 

 「これは単なる領土問題である以上に、資源や交易ルート確保という意味で複雑な問題である。日米安保の傘下にある日本は、独自の海軍力を持っていない。そのため、今後、この地域の安定は日本のエネルギー問題を考える上で重要である。南シナ海に位置するスプラトリー諸島は、中国だけでなく台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイの6カ国が、その全体、または一部の領有を主張している問題の地域であり、この周辺各国は軍事力増強を競争し、アジアにも軍拡時代が訪れようとしている。まず最初に中国は1992年に「領海法」を制定し、スプラトリー諸島と西沙諸島のすべてが中国の領土であると世界に宣言した。それに対して、その他の5カ国はそれぞれの国の立場から領有を主張、緊張が高まりつつある。特に、台湾、マレーシア、インドネシア、シンガポールの軍拡のスピードは凄まじく、相対的に軍事力の旧式化、弱小化しつつあるフィリピン、ベトナム等との逆転現象が生じている。このスプラトリー諸島問題はその付近をシーレーンとして利用している日本にとっても重要な問題である。今後スプラトリー諸島において紛争が生じたり、この付近の領海の自由な航行が阻害される事態が生じれば、日本の生命線であるシーレーンが断たれる恐れがある。このスプラトリー諸島問題は、日本にとって他人事ではないのである。」

6.日本の対策として

1)資源輸入先の国々を確保すること。(輸入先の国々の安定と、これらの国々との友好・連携が必要。)

2)シーレーン(特に「アジアシーレーン」6000km)の安全を確保すること。(このシーレーン上ではトラブルが多発しており、特に注意を払う必要がある!)

3)輸入物資に高い付加価値を付けること。(日本のみでしか作れない「超ハイテク産業」の育成、等。徹底した高度な科学技術教育と勤勉な労働力の二つが必要不可欠。これは「日本の教育」の問題になる。)

4)輸出先の国々を確保していくこと。(輸出先の国々の安定と、彼らとの友好・連携、等が必要。)

最低でもこの4つの条件を頭に入れて今後の日本の将来を考えていかねばならない。」

http://www.nishimurajuku.com/juku2/top/shikata.htmlより参照・引用)

 

第4節 中国の第十次五ヵ年計画西気東輸プロジェクトの最新動向

 「新疆タリム盆地の天然ガスを、河南、安徽、江蘇、浙江、上海地区へ供給する天然ガス輸送工事。タリム盆地の天然ガス資源の調査開発、タリムから上海への天然ガス供給管建設、下流域の天然ガス利用関連施設建設などを含む。「西気東送」プロジェクトのパイプラインの敷設は中国で距離が最も長く、投資額とガス輸送量が最も多く、施工条件が最も複雑な工事である。工費総額は1400余億元。天然ガスパイプラインは太行山、太岳山、呂梁山、黄土源などの山間地帯および黄河、長江、かい河など複雑な地質構造地帯を通り抜けなければならない。また、南京の長江鉄橋から下流38.5キロのところで1992メートルのトンネルを掘削することにもなっている。

 施工部門はガスパイプラインを敷設すると同時に、パイプライン沿いの自然環境の保護に気を配っている。例えば、新疆野生ラクダ自然保護区には、600余頭の野生ラクダ(世界における現存頭数はわずか1000頭)が生息している。施工部門はこの自然保護区を保護するため、パイプラインの通過地帯を200キロ北の方へ移した。そのため、2億元の工費が追加支出されることになった。西部の天然ガスを東部に送るパイプラインは新疆タリム天然ガス田の輪南を起点として、東へ向かい、甘粛省、寧夏回族自治区、陝西省、山西省、河南省、安徽省、江蘇省、浙江省を経由し、上海市の白鶴鎮に至る、全長4000余キロで、パイプの直径は1016ミリ。

 国の西部地区は天然ガス資源が豊富で、全国の天然ガス総埋蔵量の60%を占めている。近年、新疆のタリム盆地ですすめられている探査は大きな成果をあげ、盆地の北部地区のクシャ地帯で大、中型の天然ガス田が相次いで発見され、開発の将来性もある。中国の東部地区、とりわけ、長江デルタ地区は経済がかなり発達しているが、エネルギーが不足し、大気汚染もひどいので、西部地区のクリーンなエネルギーを必要としている。東部地区のエネルギー不足の問題を解決するため、20002月、国務院は「西気東送」(西部の天然ガスを東部に送る)プロジェクトを実施することになった。西部の天然ガスを東部に送るパイプラインは新疆のタリム盆地の輪南を起点として、東へ向かい、クルロ、武威、甘塘、中衛、靖辺、呉堡、長治、鄭州、かい南、南京、無錫、蘇州を通り抜け、上海に至る、全長4100キロ。パイプラインの敷設と付属施設の建設は同時に行われる。工費総額は1460億元、そのうち、パイプラインの工費は456億元に達すると見られている。完成後、年間天然ガス設計輸送量は120億立方メートルに達する。」

 このプロジェクトの実施は、中国のエネルギー構造と産業構造の調整にプラスとなり、東部・西部経済の発展を促し、長江デルタ地区およびパイプライン沿いの地帯における人々の生活の質を改善し、大気汚染の対策にも役立つのではないか。

 http://www.china.org.cn/japanese/44092.htmより引用)

 

調べ終えて

 基本物資の需要が拡大の一途にあること、重要物資の不足の顕在化、不可欠な資源の主要供給地域における社会的・政治的不安定化、重要な資源の所有をめぐる対立の拡大など資源という言葉は、色々な背景に取り巻かれる存在である。必要不可欠な資源の供給を長期的に確保するには、紛争を繰り返すよりも国際協調に基づく資源獲得戦略が必要なのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

311-1.gif

http://classes.web.waseda.ac.jp/z-taga44/top-nansa.doc

 

<参考文献>

「世界資源戦争」マイケル・T・クレア著

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/pirate/より参照

(ワールド コンフリクト世界の紛争 2000.10.26

http://www.nishimurajuku.com/juku2/top/shikata.html

チャイナネットhttp://www.china.org.cn/japanese/44092.htmより参照

http://classes.web.waseda.ac.jp/z-taga44/top-nansa.doc

外務省HP

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

00E2101 石丸 泰央

 

 僕の趣味については釣り(主にブラックバス釣り)である。先日の学際休みを利用して滋賀県の琵琶湖まで行ってきた。僕の釣りスタイルは2つあって、1つは陸からの誰もが体験したことのある釣り方だが2つ目は、フローターというUの字型の浮き輪に乗って水面からの釣り方である。魚は変温動物ということもあって先日の112日は、40センチが1匹しか釣れず厳しい状況だったが、今年の夏は魚の歯型で手の皮がボロボロになるぐらい釣れた。「魚も寒くなってきたから、じっとしていたいんだろう。」話は少し変わるが最近流行の釣りは、アオリイカ釣りである。僕は釣り具店でアルバイトをしていることもあって従業員やお客さんから、かなりの数色々な釣りに誘ってもらえるのだが、最近はイカ釣りばっかり誘われる。イカは「エビ」の擬似餌である「エギ」と呼ばれる物で釣れる。<主に夜釣り>僕はブラックバス釣りをしている時は家族から「食べれる魚を釣りなさい!」とよく言われた(ブラックバスは食べれないこともないのだが泥臭い。)がイカを釣って家に持って帰ると、普通食べているイカよりもアオリイカは大きく釣ったばかりなので新鮮で身が厚く味も濃く、おまけに凄く甘いので家族には大好評である。釣りの話はまだまだしたいのだが、つりをしている上で環境問題は釣りと切っても切り離せない関係にある。ここではほんの1例を紹介しようと思う。環境問題に関してアメリカでおそらく一番厳しいカリフォルニア州、ここで数年前にプロポジション65という条例が可決された。この条例の目的は、鉛その他の人間に害のある「特に発癌性」物質が使われている製品に注意を向けることなので、注意書きを製品に貼れば問題はなっかたのだが、誰もそれをしなかったため、昨年訴訟問題になり、メーカーや問屋、小売店問わず、注意書きなしで鉛その他の物質を含有する製品を販売していたところは、訴訟の対象になった。大体主なところは、自主的に罰金を払い訴訟を逃れたが、問題は許容量の値が余りに低く設定されているために意図的に鉛を使うメーカーと、使う必要がないけれど製造工程の関係でどうしても微量入ってしまう場合とが無差別になったことだろう。この訴訟問題の結果、鉛の変わりに「タングステン」に切り替えるメーカーがずいぶん出た。しかし今のところ鉛全面禁止の動きはなく、水鳥を保護する観点から1部の鉛使用が禁止となっているだけのようだが、ただ神経質なほど低い許容値で全面禁止になった時は、メーカーは製造工程の見直しを余儀なくされるので深刻な問題に発展する可能性もあるので今後の動向に注目したい。