第四部 環境編
第11章 中国の環境問題と日中環境協力
『地球規模の環境問題に対して』
00E2016 山田裕俊
はじめに
近年中国は、12億人を超える膨大な人口と広大な国土の中で、高い経済成長率を維持してきた。特に98年末までの20年間の経済成長率は年率平均で9、8パーセントを維持し、目覚しいものであった。しかし、目覚しい経済発展の裏側には、その代償ともいえる環境汚染や生態系破壊の進行があった事も否定できない。また、中国の環境問題はもはや中国国内の問題だけではなく、日本を含むアジア地域全体の問題にまで発展してきている。この章では、中国の環境問題の現状と、日本の対中環境協力について調べてみた。
第一節
中国の環境問題
現在、中国には数々の環境問題がひしめき合っている。大気汚染・砂漠化・水質汚濁・ゴミ問題等、どれも深刻な問題ではあるが、ここでは特に大気汚染について挙げてみた。
1.大気汚染について
「わが国では、SO2(用語解説1)は既に環境基準をほとんどの地域で下回っており、大気汚染の大きな課題にはなっていないが、発展途上国、特に中国では現在SO2が大気汚染最大の課題である。
中国は現在、世界最大のSO2排出国であり、年間約2100万トンを排出している。エネルギー消費量がわが国の約1.5倍であるにもかかわらず、SO2排出量は20倍を超えている。Nox(用語解説2)排出量はまだそれほど多くはないが、自動車台数は年々100万台以上の伸びを示しており、しかも、1台当たりの排出ガス量は先進国の比ではない。したがって、Noxも21世紀前半には見過ごせない課題になる事が予想される。」[1]
「次に主な地域の環境中のSO2濃度を見てみる。1996年のSO2濃度の年間平均を見ると、中国大陸西南部の重慶市が0,321mg/㎥、貴陽市が0,418mg/㎥で、特に高濃度を示している。これはわが国で最もSO2濃度が高かった1967年当時を遥かに凌いでいる。貴陽市、重慶市は1988〜96年までのデータを見ても他の地域を遥かに上回っている。これは、中国西南地域の石炭中の硫黄含有量が大きく反映しているものと推定される。
中国の大気環境基準を表1に示した。」[2]
表1 中国の大気環境基準 |
||||
汚染物 |
評価方法 |
濃度上限値(mg/m3) |
||
1級基準 |
2級基準 |
3級基準 |
||
総粒子状物質 |
日平均 |
0.15
|
0.30
|
0.50
|
(100μm以下) |
任意の一回 |
0.30
|
1.00
|
1.50
|
浮遊粉塵 |
日平均 |
0.05
|
0.15
|
0.25
|
(100μm以下) |
任意の一回 |
0.15
|
1.50
|
0.70
|
二酸化硫黄 |
毎日平均 |
0.02
|
0.06
|
0.10
|
日平均 |
0.05
|
0.15
|
0.25
|
|
任意の一回 |
0.15
|
0.50
|
0.70
|
|
窒素酸化物 |
日平均 |
0.05
|
0.10
|
0.15
|
任意の一回 |
0.10
|
0.15
|
0.30
|
|
一酸化炭素 |
日平均 |
4.00
|
4.00
|
6.00
|
任意の一回 |
10.00
|
10.00
|
20.00
|
|
オキシダント |
一時間平均 |
0.12
|
0.16
|
0.20
|
出展)環境経済・政策学会[編]『アジアの環境問題』(東洋経済新報社、1998年) |
2.石炭中心のエネルギー消費による大気汚染
2‐1 中国のエネルギー消費の特徴
@ エネルギー消費大国であり、需要の伸びが高い。 1988〜1998年、世界平均伸び率の0.1%に対して、中国は3.1%となっている。
A 石炭中心の需要構造は中・長期的にも変わらない。石炭の依存度は、OECD諸国(用語解説3)の21%に対して、中国は67%である。
2‐2 改善対策
@ 中国では石炭に起因する大気汚染問題を解決するために、石炭から石油や天然ガスに転換する政策が推進されている。問題点としては、石油や天然ガスを輸入するための外資準備高の問題や、工場の生産コストが上昇する問題、内陸の貧困地域での実施可能性に関する問題などがある。
A バイオブリケット(生物材料混合成形炭)。一見、石炭の粉を固めた普通の豆炭と同じだが、表面にツヤがある。それは、着火性と火力を増す木くずやワラなどの生物材料(バイオマス)と硫黄固定剤の消石灰を混ぜ、高圧で固めてあるからである。酸性雨の原因のSO2を9割も減らす”環境に優しい豆炭”として、今注目されている。この技術は、1980年代に日本で開発されながら、石油価格の下落で利用されずに眠っていたものを、石炭大国・中国で生かそうという共同研究の下で実現したものである。
価格は石炭の1.5倍だが、将来的に、現地設備の導入を進めればもっと値は下がる。
格安に実現できる新しい形の環境協力であると言える。
3.自動車による大気汚染
@ 「1999年度全国自動車保有量1319万台、うち乗用車603万台、北京はその約1/10を保有。
A 保有台数が少ない割に大気汚染の原因となっている。
その主な理由としては、道路が少なく、特定の道路に自動車が集中し、渋滞が激しいこと、個別現場の道路建設に重点がおかれ、道路体系の考慮や交通管理が不十分なこと、旧式の気化器(キャブレターによる)車が多いこと、排気規制や型式認証試験はあっても、販売後の管理体制が不十分なこと等が挙げられる。
B 排気規制の状況
1983年 |
初めて排気規制を制定(アイドリングHC、CO規制)。 |
1993年 |
欧州モード法を採用し、規制を強化(欧州70年代相当)。 |
1997年 |
北京、上海、広州等の大都市で有鉛ガソリンの販売禁止。 |
1999年 1月 |
北京で「欧州1」相当の排気規制を導入。1999年末まで「欧州1」 |
|
規制を1995年以降販売の使用過程車にも適用。 |
2000年 1月1日 |
全国で有鉛ガソリンの生産禁止。 |
7月1日 |
有鉛ガソリン販売禁止。(技術的な理由を無視した政策) |
2001年 7月1日 |
この日から全国で気化器車の生産禁止。 |
9月1日 |
気化器車販売禁止。(「欧州1」規制が徹底していれば、気化器車 |
|
はすでに販売不可能になっているはずだが・・・) |
2004年 1月1日 |
「欧州2」規制に強化の予定。(規制の導入について中国国内 |
でもいろいろな意見がある。) |
C LPG車(用語解説4)、CNG車(用語解説5)の推進
北京、上海、広州等の大都市では、バス、タクシーのLPG化が推進されている。中国のLPG車の特徴として挙げられるのは、ほとんどがガソリンと共用の双燃料車ということである(気化器車を改造した簡単な構造)。また、第10次5カ年計画では全国での普及が計画されている。
D 排気規制に関する問題点
T 他の産業でも見られるように、設計部門と生産部門が分離しており、製品開発の試験実験はほとんど無く、設計を改良する努力がなされていない。開発機関にもメーカーにも実験装置が整備されていない。
U 実行が伴わず、浪費が多く、規制を守れず、法規の権威が低下する。具体例として、次の事例が挙げられる。
(1) 触媒の効果と技術の適切性、危険性を無視し、強制的に気化器車に触媒を取り付ける規制であること。
(2) 有鉛ガソリン使用車両の早期劣化を無視した有鉛ガソリン禁止。
(3) 北京の「欧州1」規制の導入は発布から実施までわずか3ヶ月。実際には規制未達の新車が販売されつづけた。使用過程車についても適用するための技術と方法が無い。
(4) 無鉛ガソリン化する前に「欧州1」規制を導入した。「欧州1」規制の達成は触媒が必須であり、有鉛ガソリンは触媒を駄目にする。
(5) LPG化推進への疑問:「欧州1」規制の達成はLPG化するだけでは不可能。電子制御と3元触媒が必要で、LPGの電子制御装置はガソリンより難しくこれらの装置をつけるなら、LPGの利点が無い。
(6) 事例試験設備の不足と不慣れ:モード試験の実施には非常に高価な設備と細心の維持管理、厳密な試験手順が必要。何れも不十分なために問題が多い。」[3]
E 助動車生産打ち切り
助動車とは、再開発で郊外に多くの住宅が建設された1990年代の初めから、自転車より長距離通勤に便利な乗り物として爆発的に普及した原動機付き自転車(排気量36cc以下)のことである。93年当時、上海市内の助動車は約10万台。それが96年には約50万台に達し、全国の総台数の80%を占めるまでになった。その間、助動車に特有の大気汚染が急速に問題化した。
助動車のガソリンエンジンは2サイクルエンジンで、これはガソリンと一緒に潤滑油も燃やすため、排ガスに含まれる大気汚染物質が多いと指摘されている。上海市環境保護局によると、助動車エンジンの排ガスから出される一酸化炭素、炭化水素、有害顆粒物質を総合すると、大気汚染源としては、千数百ccの乗用車とほぼ同レベルという。
4.これからの大気汚染
現在、中国では自動車が急速な勢いで普及し始めている。近い将来、先進国並みの自動車普及率を実現するであろう。そうなった場合、中国の大気汚染の、最大の原因は自動車の排気ガスによるものになることは容易に予想がつく。これまでのように、環境を顧みない、経済発展最優先の政策を行っていては、中国の空気はますます透明度を失っていくであろう。
第二節 日中環境協力
そこで、数々の環境問題を体験してきた日本の協力が必要となる。しかし、実際のところは、日本の環境協力に対して、次のような意見がある。
「1997年に日本の中国に対する国際環境協力の拠点として北京に日中友好環境保全センターが完成した。当センタービルは広大な面積を有し、多くの高価な機器が設置されている。
しかし、中国に対する日本の環境協力は世界銀行、国連機関、他国と比べ、部分的で、中国の環境政策形成に影響を与えていないといわれており、多額の資金協力にもかかわらず、評価が低いようである。中国は一定の技術や制度を持っているため、真に求められるのは資金力、技術力だけでなく、日本の公害対策・環境政策の経験や教訓に関する認識の共有化であると思われる。」[4]こういった意味で、ODAの金額を競うような環境協力はあまり意味をなさないのではないかと考えられる。こうした背景の中で、日中環境協力を見た。
1.日中関係の動向
日本は自ら公害を克服した経験とノウハウを蓄積しており、資金と技術の両面から対中環境協力ができるし、日中間の「友好協力パートナーシップ」を確固たるものにするためにもそうしなければならない。日本の対中協力はこれまで中国経済の発展に大きく貢献してきたが、今後は協力の重点をまさに環境問題に移行しなければならないであろう。
1979年に始まった政府の対中経済協力(ODA)は、有償、無償、技術協力を合わせて累積が、99年には2兆円を突破した。いま、中国が経済的な持続的発展を優先するとしたら、環境汚染をどのように抑止していくかが緊急の課題となる。環境問題への協力がこれまで軽視されてきたわけではないが、有償・無償合わせて全体の4パーセント程度しかなかったのである。今後は、環境協力こそ日本の対中協力の最重点項目にならなければならない。
2.「日中環境協力における政府間会議
@ 日中環境保護協力協定に基づく合同委員会
日中間の環境問題に関する政策討議及び日中環境水平協力による共同研究(ODA等の援助によるのではなく双方が共同研究に必要な資材を持ち寄り対等な立場で行う協力)に関する検討会議。1999年11月1日、2日には中国(北京)において日中合同委員会の第5回会議が開催され、両国の環境の現状及び政策、日中環境保護協力協定に基づき実施中のプロジェクトの進捗状況、新たな協力プロジェクトの検討等を議題として行われた。
A 日中環境協力総合フォーラム
日中環境協力に携わる官民の関係者が相互の連携を図るため、今後の環境協力のあり方について包括的な意見交換を行う会議。第1回会合(96年5月)では、@重点地域方式と汚染源対策、A酸性雨モニタリング・ネットワークの構築、B環境意識の向上を重点分野とすることで意見の一致をみた。第2回会合(97年11月)では、同年9月の日中首脳会談(橋本総理・李鵬総理)において合意した「21世紀に向けた日中環境協力」の具体化に向けた議論等が行われた。第3回会合(99年11月)では、日中環境保全センターの今後のあり方、環境意識の向上、環境汚染対策の各議題に、自然環境保全を新しい議題に加え意見交換を行った。」[5]
3.日中環境協力の成果
日中環境協力の進展を示す話題として、象徴的なものが三つ挙げられる。
@ トキの保護・増殖活動
A 民間レベルでの緑化活動への支援
B 日本からの技術協力に関する中国側の評価
4.北九州市と大連市の環境協力
1981年 |
公害対策講座(於大連) |
1993年 |
大連市環境研修員受け入れ |
|
中国政府に対して「大連環境モデル地区」を提案 |
1994年 |
ODAによる改善計画策定 |
2000年 |
大連市環境改善に円借款供与 |
第三節 環境問題に対する中国の取り組み
こうした環境問題の状況に対して、中国政府も手を拱いていただけではない。中国は1971年にスウェーデンで開かれた第一回全国環境保護会議を開催し、環境汚染の存在を認め、環境保全に取り組む決意を示した。これ以後、第二回を84年、第三回を88年、そして96年に第四回会議を開催したのである。
1.中国の環境問題への取り組みは、組織機構、立法や政策などの面からまとめられる。
(1)組織機構
「中央においてはまず国務院環境保護委員会がある。国家計画委員会、(現在は国家発展計画委員会)、衛生部、交通部、国家海洋局など国務院の環境関連の委員会や部の責任者がメンバーとして参加している。」[6]
地方レベルでも、中央組織の編成に対応して、同様の組織体制が敷かれている。
(2)環境立法
「環境立法について、法律・条令の対象領域や数の面を見れば日本など先進国とも遜色がない。環境関連で水質汚染防止法、大気汚染防止法、固体廃棄物環境汚染防止法、騒音防止法など6つ、資源利用に関して水資源保護法、森林法、草原法、土地法、漁業法、海洋環境保護法、野生動物保護法、高山資源法など9つ、さらに中央政府が策定した環境保護関連の行政規則が375、地方の政府や人民代表大会が決定・採択した環境保護関連の条例や規定が6000余りもすでに存在している。97年には刑法の中に、「環境と資源保護を破壊する罪」が追加され、国家立法の中で環境犯罪を摘発する法的根拠が確立した。」[7]
(3)環境政策
「環境政策についてみれば、基本構想の立案やそのアクション・プランの作成は活発である。国連環境開発会議の翌年、1993年には国家計画委員会と国家環境保護局が「中国環境保護行動計画:1991−2000年」を作成するとともに、国家環境保護局が「全国環境保護工作綱要:1993−1998年」を作成した。94年3月には国務院が「中国アジェンダ21:21世紀人口、環境と発展にかんする白書」を公布した。そして96年には国務院新聞弁公室が、中国発の環境白書ともいえる「中国環境保護白皮書」を公表した。
この年3月の第8期全国人民代表大会第4回会議では、「持続可能な開発」を現代化建設の重大戦略の一つに据えることが決定された。さらに同年7月には、その内容を検討するために8年ぶりに全国環境保護会議が開かれたのである。
会議では、「今後5年間の環境保護目標達成のための堅持すべき6大原則」が提起された。第一が「環境と発展についての総合的政策を決定し、環境の法制建設を強化する」、第二が「環境資本ルートを拡大し、環境保護への投入を増やす努力をする」、第三が「環境汚染の防止と生態系の保護を併行して進める」、第四が「科学技術と教育による国家振興戦略を貫徹して、環境科学技術の水準を高める」、第五が「環境についての宣伝と教育を強化する」、そして第六が「環境分野の国際協力交流を強化する」ことであった。
こうしたアクション・プランも、効果的な実行には資金が必要である。環境対策費はせいぜいのところGDPの0,3%にすぎない。十分とはとてもいえない。中国の環境政策の実効性を考えるとき、こうした資金不足とともに企業や企業の背後にいる党・政府の幹部たちの認識が大きな問題となってくる。」[8]
2.ISO14001(用語解説6)取得について
山東省の省都・済南市郊外の国有企業「中国済南化繊総公司」は、1995年の売上が約12億元。国内有数の化学繊維メーカーである同社は、環境管理が優れた工場に与えられる「花園型工場」の称号を持ち、昨年十月には国内千位業界のトップを切って「ISO14001」認証の取得企業になった。中国政府も認証取得を奨励しており、国家環境保護総局を中心に国内の認証機関は十三、国家資格をもつISO審査員は400人に上っている。しかし、その重要性に対する認識は十分広まっているとは言い難い。
第四節 対中環境協力に関する諸外国の動向
さて、これまでに日本の対中環境協力や中国自身の環境対策について触れてきた。しかし、中国に環境協力を行っている国は日本だけではなく、数々の国が協力をしている。そこで、日本以外の国の協力状況について調べてみた。
1.米国
米国は公式には対中国援助を行っていない。しかし、クリントン元大統領が1993年に発表したアメリカ政府の環境保全戦略(Environmental Technology Initiative)の一部であるUS/TIES(注)など、様々な形で環境保全分野の援助協力が行われている。1995年のUS/TIESの対中国予算は9百万米ドル(うち政府予算3.2百万ドル)等と金額的には小さいものの、輸出振興や知的援助の側面が強いのが特徴といえる。また、再生エネルギー関連のプロジェクトも多い。
1998年7月に訪中したクリントン元大統領は「米国は中国との環境協力を強化することを決意した」と述べた。米国は「大気汚染の観測・規制の分野で援助を行い、中国の再生エネルギープロジェクトに対する支援を強化し、石炭への依存を軽減することとしたい」、「アメリカは中国における石炭のガス化の展開を支援し、輸出入銀行を通じ、クリーンエネルギープロジェクトに財政支援を行う」、「経済成長を阻害しないとの前提の下で、クリーンエネルギーを使用しエネルギーの利用効率を高めることができる」等と述べた。この大統領訪中は、一連の対中環境協力攻勢のクライマックスと位置付けられている。
米中環境協力の顕著な例としては、1998年、米国の民間企業Dasiebi Environmental は大気質モニタリング機器4百万ドルの受注に成功した。また、米国環境保護庁(US/EPA)は中国国家環境保護総局との間で、大気汚染防止分野における2つの技術移転プログラムに合意している。
2000年 5月19日、中国科学部の朱麗蘭部長駐中国米国大使Joseph Prueherは、北京で「米中による環境と発展協力の連合声明」に署名した。同声明は、2000年4月に北京を訪問した米国のゴア副大統領が中国側に提案したもので、地球の気候変動と多様な生物の保護など「地球規模の環境問題」への取り組みに、米中両国政府が協力するための声明であった。こうした背景には、「米国は、地球および国際的目標を達成するために北京の協力を必要とすることは認識しているが、多くの議論の的となる問題が米中関係を緊張させている。しかし、環境問題は、米国協力のビルディング・ブロックとしてだけでなく、同様の環境問題を抱える他の開発途上国と米国がどのように関わるかのモデルとしても役立つ可能性がある」との米国の考えがある。
2.英国
中英両国は1995年6月17日に北京で環境協力備忘録に署名した。また、解振華中国国家環境保総局長1998年7月に訪中したプレスコット英国副首相兼環境運輸および自治担当大臣と会見し、気候変動や水資源管理の問題について意見交換した。双方は、自動車からの汚染の削減や自動車燃料の改善などについて討論し、気候変動の分野での科学技術協力の可能性が大きいことなどを確認した。
3.カナダ
カナダ国際開発庁「中国国別開発政策フレームワーク」(1994)では、中国を重要なパートナーと位置付けた上で、経済協力、環境の持続可能性、民主的発展の3つを主要な協力政策要素と規定し、それぞれについて達成目標が設定されている。このうち、環境の接続可能性の分野では、地球環境問題(特に温暖化政策)、環境対策に係る経済的な関係強化(水、都市環境、GIS、エネルギー、廃棄物)、環境アセスメント(政策/技術/制度・組織作り)の3点において、カナダの特徴的な支援が可能であると強調されている。
また、1998年11月19日北京で締結された「21世紀に向けた中国とカナダ環境協力枠組協定」および、1999年4月6日カナダで調印された「中国・カナダ政府間環境協力行動計画」に基き、カナダ・中国環境協力共同委員会の設立準備も進められている。こうした背景を基に、カナダ政府の無償資金協力として、主に以下の案件が実施されている。
(1) 1996年〜2000年のチャイナカウンシルの運営 500万カナダドル
(2) 中国・カナダクリーナープロダクションモデル事業 1,200万カナダドル
(3) 広西省世銀環境プロジェクトの事前準備 260万カナダドル
(4) 淮河流域環境観測および汚染事項予報警報システム 160万カナダドル
(5) 流域汚染防止研修 40万人民元
また、農業分野では旱魃地域の節水農業、旱魃に強い農作物新品種の改良等のプロジェクトも実施されており、中国側には多大な成果を挙げたと高く評価している。
4.ドイツ
1994年9月26日、中国とドイツ政府はボンで、「中華人民共和国国家環境保護局とドイツ連邦共和国連邦環境・自然保護と原子力安全環境省の環境協力協定」を締結した一方、ドイツ連邦経済協力省がまとめた「中国との開発政策協力」(1998年6月)では、中国の持続的開発の決定的な要因は資源管理と価格設定構造の改革であり、このために産業の構造的・技術的変革、環境基準の効果的な適用、経済的手法の導入拡大、経済政策と環境配慮の統合等を進めることが重要であるとして、次のような重点領域において、資金協力、技術協力、投資支援からなる協力活動を展開している。
(1) 環境とエネルギー
(2) 地球的影響のある環境問題(二酸化炭素、植林、オゾン層保護、生物多様性)
(3) 水資源管理
(4) 人材および組織的対処能力の強化
ドイツの対中国環境協力では主に以下のプロジェクトが実施されている。
(ア) 「内モンゴルにおける風力・太陽エネルギーの利用」 1990年から実施
(イ) 「江西山地地域の開発」 1996年4月から実施
(ウ) 「有害廃棄物管理計画モデル事業」 1997年8月から実施
(エ) 「中国・ドイツ(天津)環境技術移転と産業促進センター」 1997年9月設立
2000年12月12日〜13日、「中国・ドイツ環境協力会議」が北京で開かれ、両国から約900人の参加者が出席し、これは環境分野における2国間会議として最大規模であった。中国国家環境保護総局の祝光耀副局長の挨拶では、「両国の経済技術協力および文化交流、貿易面での発展の促進に役立つものと期待している。このチャンスを利用して、両国は環境分野における政策の枠組み、戦略的計画などについてハイレベルな会談を進めると同時に、環境面での経済技術、商業分野における協力を強化したい」と語った。今回の会議は資源の保護と有効利用、汚染防止と環境管理、都市の発展と環境保護などをテーマとし、会議の閉会式で、「環境保護に関する中国・ドイツ両国政府の連合声明―行動指針」が正式に発表された。
将来展望と感想
中国という物的にも質的にも巨大な国の環境問題は、すでに一国の問題だけではなく、地球規模のものになっている。そのため、世界の様々な国が環境協力をしているのだが、日本はすぐ近くの国という意識をもっと持って協力をするべきである。安い労働力を求めて対中進出をするというのは、もはや過去の構図となっており、これからは中国と手を取り合って広大な中国の環境を守るということが最重要なこととなるだろう。
また、中国の環境問題を解決するためには、外国からの資金援助も必要であるが、実際環境汚染の被害を受けている中国国民がはっきりとした自覚を持たなければならない。いや、自覚というよりも危機感を痛烈に感じるべきである。国が政策としてなにをやろうが、中国国民が環境保護を顧みなかったら意味は無い。10億を超える中国国民が真剣に環境について考えるようになることが一番の環境保全への近道だと私は考える。
用語解説
1 SO2:硫黄酸化物
2 NOx:窒素化合物
3 OECD諸国:西ヨーロッパ諸国、北欧5カ国、チェコ、ポーランド、ハンガリー、トルコ、韓国、カナダ、米国、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、香港、シンガポールなどの諸国のこと。
4 LPG車:燃料に液化石油ガス(プロパンガス)を使う車。日本では主にタクシーで使われている。窒素酸化物や粒子状物質の排出もないため、環境にやさしい車といえる。
5 CNG車:燃料に圧縮天然ガスを使う車。トラックなどに使われている。黒煙はゼロ、CO2は30%削減、NOxも10〜30%に抑えることができる。
6 ISO14001:「ISO14001」は商品やサービスの国際標準を制定している民間団体「国際標準化機構(ISO)」(本部スイス)が定めた、環境問題に関する国際規格の一つ。企業活動によって生じる汚染などを低減させるための経営方針の有無、従業員の理解度、実施の良し悪しなどを、第三者機関の審査員が査定して認証する。
参考文献
書籍 小島朋之 『中国の環境問題 研究と実践の日中関係』
慶応義塾大学出版会 2000
北川秀樹 『病める巨龍・中国』 文芸社 2000
環境経済・政策学会[編] 『アジアの環境問題』 東洋経済新報社 1998
ホームページ 「人民網日本語版」2002年10月18日
(http://j.people.ne.jp/2002/10/18/jp20021018_22359.html)
「中国貴州省西南部の苗族と布依族の食文化−生活環境−」八田 耕吉
(http://www.nagoya-wu.ac.jp/user/hatta/Dietary%20Culture.htm)
「環境省」ウェブサイト
(http://www.env.go.jp/earth/coop/)
00E2016 山田裕俊
私が李春利先生の専門ゼミを志望した理由は、大学に入ってすぐの入門ゼミにある。自分達で司会者、発表者、討論者を決めて発表するというシステムがとても興味深く、またこういうゼミをとってみたいと思ったからである。また、一年の秋セメスターの時に、生協で李春利先生に会って、当然自分のことなど覚えていないだろうと思ったら、話しかけてくださって「3年になったら私のゼミに来なさい。」と言ってもらったのがものすごく感動したからというのもある。その後、中国経済論、中国産業概論と、李先生の授業を受けて、多くの新しい発見があり、やはり専門ゼミはこの先生のゼミを受けてみたいと強く思い、志望した。また、私は軽音楽部に所属しており、末木先輩に李先生のゼミを取るといいと言われ、更に李先生のゼミに入りたいと思うようになった。
趣味は、軽音楽部に所属していることと関連して、ギターを弾くことと、歌を歌うことである。私はギターを中学校の二年から始めたのだが、高校の三年間は、大学受験のこともあり、ほとんどギターを弾くことは無かった。そして無事大学に合格し、また真剣にギターを弾いてみたいと思い、軽音楽部に入った。今は、ギターを弾きながら歌を歌っている時間が最も楽しい時間である。他には、本を読むことも私の趣味である。本といっても様々で、マンガから情報誌、小説まで幅広く好きである。今となっては一番の趣味はギターであるが、ギターを始める前までは、ほんばかり読んでいた。あとは、インターネットも趣味のひとつであると言える。デスクトップなのであまり頻繁に見ることはできないが、必ず一日に一度はメールチェックをしている。勉強に、趣味にインターネットを幅広く使用している。
旅行体験だが、私は今まであまり多くの旅行をしていない。旅行には行きたいにおだが、なぜかタイミングが合わず、行けないことが多い。その中で旅行体験を挙げるとすれば、高校生の時に友達と三人で行った粟津温泉である。高校生でお金も無いので電車で片道七時間の鈍行で行った。当然、貧乏旅行だったが非常に楽しかった。と、まあ他にも挙げれば多少の旅行体験はあるのだが、その体験はすべて国内旅行である。国外には一度も行ったことがない。将来的には色んな国に行ってみたいと思っている。国内旅行でもあれだけ文化が違うのだから、国が変わるとなると数多くの新発見があることだろうと思う。ちなみに、最初に行きたい国はイギリスである。漠然としているが、とにかくイギリスに行ってみたいという気持ちを持っている。
[1] 環境経済・政策学会[編]、『アジアの環境問題』、P193、東洋経済新報社、1998年より
[2] 環境経済・政策学会[編]、『アジアの環境問題』、P193〜194、東洋経済新報社、1998年より
[3] 社団法人海外環境協力センター『日中環境協力情報交流事業報告書』P17〜18、環境省、平成14年より
[4] 北川秀樹『病める巨龍・中国』P235〜236、株式会社文芸社、2000年より
[5] 社団法人海外環境協力センター『日中環境協力情報資料集』P150、環境省、2001年より
[6] 小島朋之 『中国の環境問題 研究と実践の日中関係』 P22、
慶応義塾大学出版会 2000年より
[7] 同上 P23より
[8] 同上 P24〜25、より